犬女ちゃん -見た目は美少女、知能は犬並みー(旧題:犬女ちゃんとピュアハート)

ウロノロムロ

犬女ちゃんと探し物(1)

放課後。
いつまでたっても
純心が保健室に
迎えに来ないので、
犬女ちゃんは、
純心のクラスの教室まで
行ってみることにする。


クラスの教室には、
数人の女子がいるだけで、
純心の姿はなかった。




教室には大人しそうな
女生徒・伊藤ちゃんと
白ギャル、黒ギャル、
スケ番のお京が残っていた。


伊藤ちゃんは泣いていた。
別にあばずれトリオに
いじめられているわけではない。


「どうしよう…
あたしのスマホ見つからなかったら…」


泣いている伊藤ちゃんを
白ギャルが慰める。


「心配すんなしー
あーしらが一緒に探してやんしー」


「あーしらも、
彼氏からの連絡待つ、
その気持ちよくわかるしー」


黒ギャルも女生徒を慰める。


「ったく、しゃーねえな、
いつまで泣いてんじゃねぇよ。
もっとちゃんと話してみろ」


あばずれトリオ、
その見た目に反して
物凄くいい奴である。




大人しめの女生徒伊藤ちゃんが、
夏休みに海でナンパされて、
彼氏が出来たらしいのだが、
最近ケンカばかりで
うまくいっていないらしい。


それで彼氏からの連絡を
ずっと待っていて、
スマホを肌身離さず常に
持ち歩いてチェックしていた。


が、そのスマホを
どこかで落としたらしく
悲嘆にくれて
泣いているというわけだ。


なんとも、
もてあそばれた感が強い話だが、
そこはまぁいいとして、
この四人の中で、
一番大人しそうな伊藤ちゃんが
実は一番進んでいるのだから、
人は見た目によらない。


伊藤ちゃんは、
もうこの世の終わりだと
言わんばかりに泣いている。
本人としては本気の恋愛
なのかもしれない。




クラスで女子が
そんなお取り込みの最中、
何を話しているのか
さっぱりわからない
犬女ちゃんは、
クンクン匂いを嗅いで、
純心を探しはじめる。


白ギャルは
そんな犬女ちゃんの姿を
横目でチラ見していた。


-


匂いを嗅いで
純心を探しに行った犬女ちゃんは、
五分後に純心を連れて
クラスに戻って来た。


「ねぇ、犬女ちゃんてさ、
もしかして匂いで
あんたのこと探せるの?」


白ギャルはクラスに
戻って来た純心に尋ねた。


人間の何十倍も
嗅覚が優れている犬女ちゃん。
匂いで人を探し出すことなら
過去に何度も実績がある。
ましてや純心の匂いであれば、
どれだけ離れていようとも
探し出すだろう。
犬女ちゃんはそんな健気な
女の子なのだ。




「犬女ちゃん、
伊藤ちゃんのスマホ
探せないかな?匂いで」


白ギャルは冴えていた。
一見馬鹿ぽく見えるが、
本当はそれなりに良家の
娘だったりするので、
やはりただ者ではない。




「出来るかもしれない、けど…」


犬女ちゃんにとって、
匂いで物を探し出すことは
それほど難しいことではない。


だが問題なのは
それを犬女ちゃんに
どう伝えるかだ。
そちらのほうがはるかに
大変なことだった。


純心は、それに関して、
保健医の日向先生に
相談してみる。


犬女ちゃんが、
介助犬、盲導犬と
同等の訓練をして、
資格試験に合格した
という認定を貰うために、
現在指導をしてくれている
保健医の日向先生。


犬女ちゃんにものを頼みたいときの
方法を知っているかもしれない。




「落とし物を犬女ちゃんに
探してもらうのか、それはいいね」


日向先生はその話を聞いて、
大いに賛同した。


「いい訓練にもなるよ」


-


伊藤ちゃんの
匂いを嗅ぐ犬女ちゃん。


白ギャルは、伊藤ちゃんが
持っていたスマホと
同機種の画像を、
自分のスマホで検索し、
犬女ちゃんに見せる。


嗅覚情報と視覚情報の両方を与え、
探してもらう物のイメージを
持ってもらうということらしい。


日向先生は犬女ちゃんに
これを探してくることを
根気よく伝える。




犬女ちゃんが
頼まれごとを理解すると
そこからはあっという間だった。


校内で伊藤ちゃんの匂いがする
ところをひたすら
回って行くだけの簡単なお仕事だ。
犬女ちゃん的には。


純心、日向先生、
伊藤ちゃん、あばずれトリオは
犬女ちゃんの後について行く。


「すごい、
全部あたしが今日行ったところだ」


犬女ちゃんのトレース、
伊藤ちゃんはその正確さに驚いた。




校舎裏にある花壇の
草むらに落ちているスマホに
犬女ちゃんは辿り着く。


「すごい!犬女ちゃん、ありがとう!」


伊藤ちゃんは感激しながら、
犬女ちゃんにお礼を言った。


「犬女ちゃん、すげーし」


「あーし、ちょっと感動しちゃったよー」


「あたいより、
人様の役に立ってるじゃねえか」


犬女ちゃんの能力を
目の当たりにした
あばずれトリオも興奮気味だ。


結局、伊藤ちゃんは
彼氏から連絡が来ていなくて、
再び大泣きしはじめ、
あばずれトリオに
慰められることになるのだが。


それでも犬女ちゃんは、
泣いていた伊藤ちゃんが
笑顔になって、喜んでお礼を
言ってくれたのが嬉しかった。











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