犬女ちゃん -見た目は美少女、知能は犬並みー(旧題:犬女ちゃんとピュアハート)

ウロノロムロ

犬女ちゃんと自転車(1)

そもそも自転車と並走して、
犬女ちゃんはどれぐらいの距離を
走れるのだろうか?


置き去りにしてきたときも、
途中まで相当な距離を
移動して来たことを考えても
長距離を走るのは苦手ではないはずだ。


だが途中休みながらであっただろうし、
自転車と同じスピードで
走れる距離もまた違うだろう。


もし自転車と並走して、
まったく問題ないようであれば、
純心が自転車で移動出来る範囲は、
そのまま犬女ちゃんの行動範囲となる。


朝の散歩はせいぜい長くても
五キロ前後ぐらいのものであったし、
今までは極力人目に付かないよう、
外に出さなかったから、
今ひとつ純心には犬女ちゃんの
身体能力がよくわかっていなかった。




試しに自転車で
犬女ちゃんと一緒に
出かけてみることにする。


犬女ちゃんも最近は
甘い物の食べ過ぎで体重が
増えているみたいだから、
ちょうどいい運動になるだろう、
などと考える純心。




「今日は遠くまでお散歩するぞ」


純心がそう話しかけると
犬女ちゃんは尻尾を振って喜んでいた。


自転車が趣味というわけでもない純心は、
普通に中学のときにチャリ通で使っていた
通学用自転車を未だに使っている。


自転車のスピードをあげずに普通に走れば、
犬女ちゃんはどこまでも平然とついて来る。
途中信号で立ち止まることもあるので、
それがよい休憩になっているようだ。




普段は電車でなければ
移動しないような距離を
自転車で走るのは爽快でもあり、
純心はちょっとした高揚感を覚える。


普段とは違った景色が見られて、
犬女ちゃんも楽しそうに走っている。


だが朝早く出たにも関わらず、
夏の陽射しが肌をじりじりさせ、
額からは汗が流れ落ちて来る。
着ているシャツもすでにびしょびしょだ。
この暑ささえなければ最高なのだが。


犬女ちゃんも、
見た目が人間に近いことから考えても、
熱射病や脱水症状には
気をつけたほうがいいだろう、
純心はそう考えて
途中二人で水分補給しながら走った。




もうかれこれ一時間以上、
距離にすると十五キロ以上、
走ったが犬女ちゃんはまだ平気そうだ。




さらにもう少し、自転車で
犬女ちゃんと一緒に走ってから、
帰り道も同じ距離を走ることに、
今さらながら気がつく。


片道で行けるところまで行ってしまうと、
帰り道、走れなくなると大変なことになる。


犬女ちゃんが走れなくなってしまうと、
小型犬のように自転車の前に付いている
籠に乗せて帰るというわけにもいかない。




とりあえず純心達はそこで帰ることにするが、
帰り道、犬女ちゃんが走れなくならないように、
純心は内心必死でお祈りしていた。













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