犬女ちゃん -見た目は美少女、知能は犬並みー(旧題:犬女ちゃんとピュアハート)

ウロノロムロ

犬女ちゃんと商店街

純心の母は、
毎日犬女ちゃんと
散歩に出かけていた。


純心が朝の散歩に連れて行っている日でも、
日中、純心がいないときや、勉強をしている間、
犬女ちゃんを連れて散歩に行くようにしていた。


母は、ご近所だけではなく、
地元付近ではかなり有名人であり、
すれ違う人みんなが挨拶を交わして行く。


「姐さん、日本に戻って来てたんだね」


たいがいの人が
こんな風に声を掛けて来る。


「へえ、この子が姐さん家の犬女ちゃんかい」


当然みなは純心母が連れている
犬女ちゃんについても言及する。


そんなことが
毎日繰り返されるうちに、
いつの間にか犬女ちゃんも、
地元では有名人になっていた。


-


もうじき日本を離れることになっている母は、
犬女ちゃんとの散歩に純心も誘った。


母とこうして一緒に散歩するなんて、
いつ以来のことだろうか。


そしてもうじき再び日本を離れる母、
寂しくもあり、不安でもあり、
複雑な心境の純心。




近所の人はみな
母とすれ違うと声をかけて来る。


「よぉ、姐さん」


「今日も犬女ちゃんも一緒だね」


元気な笑顔で応える母。
母の顔が広いのは知っていたが、
まさかここまでとは思っていなかった。




商店街まで行くと、お店の人が
次々と二人に声を掛けて来る。


いつの間にこんなことに
なっていたのだろう。
犬女ちゃんも、もうすっかり
商店街の人達とは顔見知りではないか。


犬女ちゃんの世界が
急速に広がっていることを感じる純心。


-


「お、犬女ちゃん、
よかったら食べるかい?」


肉屋の前で揚げたてコロッケを
売っている店主が、
コロッケを犬女ちゃんの前に差し出した。


犬女ちゃんは、ワンとひと鳴きして、
頭を下げて、コロッケを手で受け取った。


一連の動作は、
人から物をもらうときの動きとして、
どうやら母が犬女ちゃんに仕込んだらしい。
これであれば、確かに返事をして、
お礼を言っているように受け取れる。




それよりも何よりも
純心が驚いたのは、
犬女ちゃんが手で物を
受け取ったことである。


もちろん、
指で物を握ることが出来ないので、
両の手で物を挟んで持っているのだが。


両の手に力を入れ過ぎて
潰してしまうことなく、
力を入れ無さ過ぎて
下に落としてしまうことなく、
器用に両手の肉球で挟んで持っている。


目から鱗が落ちる純心。


これもおそらく母が仕込んだのであろう。
しかし自分にはまったく
思いも寄らなかった発想だ。


これであれば、
おにぎり、サンドイッチ、ハンバーガーなど、
手で持って食べる物は、
人前でもお行儀良く食べることが出来る。




コロッケをもらった犬女ちゃんは、
両手で持ったコロッケを
美味しそうに食べている。
何とも可愛らしい姿で。


その姿が珍しくて、
道往く人々は立ち止まり、
中にはコロッケを買って行く人もいる。
コロッケをもらった分の
集客効果の役割は果たしているらしい。




犬女ちゃんと一緒に
いろんな体験をしたいと、
いつも思っていた純心は、
犬女ちゃんの可能性を感じる。


一緒に工夫していけば、
もっともっと、いろいろなことが
出来るようになるのではないか。




母についても、
やたら全裸になりたがったり、
スクール水着を欲しがったりする、
単なるアブノーマルな熟女
ではなかったことを、
改めて再認識する。











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