犬女ちゃん -見た目は美少女、知能は犬並みー(旧題:犬女ちゃんとピュアハート)

ウロノロムロ

犬女ちゃんと妹ちゃん(2)

ジャガイモは、
純心の家に妹達を連れて来た。


妹達の名前はそれぞれ、
アイ(十四歳)、
マイ(八歳)、
ミイ(六歳)、
ユウ(四歳)、
ユア(四歳)。


親御さんはこれ以上子供が増えたら
次の名前をどうする気なのだろうか。
やはり次はシイとかヒイとかになるのか。




小さくて可愛い子供達を見て、
子供大好き犬女ちゃんは、
尻尾を振って大喜びした。


確かに犬女ちゃんは子守が得意だった。


「いぬおんなたーん」


『ちゃん』の発音が『たん』になってしまう、
四歳の双子、ユウちゃんとユアちゃんは、
犬女ちゃんに抱き着いて離れようとしなかった。


やばい!
なんだこの可愛らしさの塊のような生き物は。
愛くるしい、という言葉は可愛らしさで
胸がきゅんきゅん苦しくなるから
愛くるしいという言うのか?
まさしく天使ではないか、これは。


小さい子慣れしていない純心は、
女児がこれほどまでに可愛いものとは、
まったく知らずに、
はじめて見たその愛くるしさに身悶えしていた。


『いぬおんなたーん』を連呼する様は、
可愛過ぎて萌え死にしそうになる。


ジャガイモの妹達は、
五人全員整った顔立ちの美形で、
父親と母親のどちらに
似ているのかはわからないが、
お兄ちゃんにだけは似ないでよかったね、
と純心は内心思っていた。


女の子だけだし、
暴れるような乱暴な子もいないし、
少し預かるだけなら大丈夫かもしれない、
と純心は思うようになっていた。




純心母も小さい子供達にもうすっかりメロメロであった。


「あたしもまた子供欲しくなっちまうねえ。」


『もうわかったから、
あんたは帰ったらスクール水着でも着てろ!』


「あんたもこれぐらいの頃は、本当に可愛かったもんさ」


母は、穏やかな笑顔で昔を懐かしんでいる。


いくら記憶が戻ったとしても、
さすがに四歳ぐらいの頃は
覚えていないだろうと純心は思う。


純心の場合は特殊なので、
いくつのときに物心が付いたと
思っていいのか、判断が難しい。


それでも母の穏やかな笑顔を見れば、
小さい頃は、こんな感じで、
自分も可愛がってもらっていたのだろう、
というのはわかる。


母は、小さい子達を、
抱っこしたり、頬ずりしたりしながら、
また子供欲しい、を連呼していた。


-


そんなほのぼのムードの中、
長女のアイちゃん、
正式には愛ちゃん、だけは
この場に馴染めないのか、部屋の端で、
じぃっと純心のほうを見つめていた。


多感な年頃だから仕方ない、
自分もこういうのは
得意ではないからよくわかる。
あまりじろじろ見ないように、
純心は気をつかった。




しかしあまり長いこと、
放っておいても可哀想かと思い、
純心は愛ちゃんに声をかける。


「あ、愛ちゃんだっけ?」


様子を見ながら、
おそるおそる声をかける。


「お兄ちゃん」


愛ちゃんは純心を見てそう呼んだ。


「?」


最初純心は、愛ちゃんが
ジャガイモのことを
呼んでいるのかと思ったが、
ジャガイモはちょうど
その場にいなかった。


「あ、用があるのなら
探して来ようか?」


愛ちゃんは純心の
服の裾を引っ張って、
引き止めた。


「何を言ってるんですか?」


愛ちゃんは少し緊張しているのか、
恥ずかしいのか、頬を少し赤く染めている。


「お兄ちゃんのお友達のあなたは、
お兄ちゃんに決まってるじゃないですか。」


純心には何を言っているのか、
意味がまったくわからなかった。


やばい、またなんか変なのが出て来た、
と過去の経験を踏まえて、純心は思う。

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