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犬女ちゃん -見た目は美少女、知能は犬並みー(旧題:犬女ちゃんとピュアハート)

ウロノロムロ

純心と恋バナ

純心の匂いと足音を察知すると、
犬女ちゃんは大喜びで、
玄関まで出迎えに行った。


暑い中、びしょびしょに汗をかいて
帰って来た純心は、シャワーを浴びた後、
クーラーの効いたリビングでくつろぎはじめる。


犬女ちゃんは純心の
膝の上で甘えている。
純心がいなかった間の
鬱憤を晴らしているのだろう。


再びリビングのソファに寝転がっていた母が、
純心と学校の話などをしているとき、
先ほどの三人組女子の話に触れた。




「あんたあの三人の中で、
誰か好きな子でもいるのかい?」


犬女ちゃんは、びくっとして
お母さんのほうを向き、
すぐにキリッとした顔で純心を見る。
大きな瞳を爛々と輝かせて純心を見つめる。


人間の言葉はわからなくても、
時々何かが犬女ちゃんには
伝わっているのかもしれない。
ただ、お母さんが『三人』と言ったのは
伝わっていないようだ。


-


母の言葉に、
純心は改めて考えてみる。




お嬢様には最初一目惚れだった。
しかし今やお嬢様は尊敬の域に
達してしまっている。
恋愛感情というよりは、
むしろ人として尊敬している感じだ。
かなり天然なところはあるが、
あれほどの聖人を自分などが、
そんな目で見てはいけないのでは
ないかとすら思っている。




夏希はやはり付合いが長いだけあって、
自分のことをよくわかってくれている。
阿吽の呼吸というか、
痒いところに手が届くというか、
至れり尽くせりな感じがする。
ちゃんとみんなのことを考えて、
気をつかったりするところもすごいと思う。




生徒会長は初め嫌な奴だと思っていたが、
あれがいわゆるツンデレという
ものだとわかってからは、
実は涙もろくて情に厚い、
いい人だと好感を持つようになった。
多少面倒臭いところもあるが、
本当はものすごく乙女だったりするのも、
ギャップ萌えでいいと思う。




「今はみんなで楽しければいいかな…」


今の純心としては、
一人の女性と交際したいというよりは、
みんなでわいわい楽しくしていたい
と言うのが正直なところであった。


犬女ちゃんは、ワンワンと嬉しそうに吠えた。
きっと、みんな好きという風に伝わったのだろう。


母としてもその気持ちがわからなくはなかった。
人と関わりを持つことを避けていた純心が、
人とまともに集団行動をしているだけで、かなりの進歩だ。
一人の女子と男女交際というのは、
今の純心にとってはまだ早いのかもしれない。


-


「あんた夏季講習に行ってたみたいだけど、
将来の夢とかあんのかい?
どんな仕事をしたいとか。
さしあたりどこの大学に
行きたいとかでもいいけどさ。」


今の純心にそういうものはまったくなかった。
だからお嬢様のように、きちんと目標を
持っている人は尊敬に値した。




「そういうのもないなぁ…
自分の過去もちゃんと思い出せないのに、
将来のことなんてさ」


純心の発言に母が反論する。




「あんた馬鹿じゃないのかい?」


「生きて行くのに支障がなければ、
過去なんか忘れちまってたって
いいんだよ、そんなもん。
嫌な過去ならなおさらだよ。」


「あんたまだここから先何十年もあるのに、
たかだか十年かそこらの過去に、
ずっといつまでも縛られてる気なのかい?」


「そんな無駄な、もったいない
生き方するんじゃないよ」


いつになく母は真剣な口調だった。




自分よりはるかにツライ思いをしてきた
母の言葉だから重みがある。
犬女ちゃんと同じ様に、
自分をとても大切に想ってくれている。
それは純心もわかっている。


しかし一方で説教臭いとか、
うざいと感じるような、
思春期特有の複雑な感情もあり、
そのときは、母の前で
素直にはなれなかった。


-


手持ちぶたさな純心は、
犬女ちゃんの犬の手を握って、
一緒になって遊んでいた。


「こいつ電車とかに
乗れなくて不便だよなあ…」


「こいつにもっといろんなものを見せてやりたい、
いろんなところに連れて行ってやりたい、
もっとみんなに受け入れて欲しいとは思うかな。」


純心はなんとなく
思っていることを口にしてみた。


それは母の研究分野に近い内容だった。


何事にも関心を持つことがなかった純心が、
そういうことを考えるようになっただけでも進歩と言える。
女子の話と同様で、将来の目標というのは、
今の純心にとってはまだ早いのかもしれない。


焦らずゆっくり進んでいけばいいのかもしれない、
と純心母は思う。











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