犬女ちゃん -見た目は美少女、知能は犬並みー(旧題:犬女ちゃんとピュアハート)

ウロノロムロ

犬女ちゃんと純心の闇(1)

数日後、通学の途中。


学校に近づくにつれ、
同じ学校の生徒達から
見られているのを、視線を、
純心は感じていた。


おおよそ好意的とは
思えない冷たい視線だ。
純心を見て
ひそひそ話をする集団。


純心はそうした人々の
悪意のようなものを
敏感に感じ取り、
自分の中に暗い気持ちが
湧いて来るのを感じた。
頭が痛くなるのも
おそらくはそのせいだろう。


校門を通過すると、
三馬鹿トリオが慌てふためいて、
純心の元に駆けつけた。


三馬鹿トリオは、
朝の挨拶も早々に
純心を問い詰めた。


「純心殿、一体これはどういうことですか、な?」


「学校中大騒ぎになっておりますぞ」


「きっと何かの間違い、だよね?」


三人が持っていた紙のビラを
見せられた純心は、
心臓が止まりそうになった。


『やられた!』


三人が純心に見せたビラには、
純心が犬女ちゃんと
一緒に寝ている姿が、写っていた。


純心は血の気が引くよりも、
自分の中のどす黒い感情が、
どんどん大きく
なっていくのを感じた。
頭がさらに痛くなる。




その紙は学校中にばら撒かれ、
校内の至る所に貼られていた。
学校中の生徒が純心を白い目で見る。
他者に関心を持たない純心には、
それはそれほど気にならなかったが、
いかんせん頭が痛くなる一方だった。




純心は早々に生徒会室に呼ばれた。
生徒会長は、腕を組んでコワイ顔をしている。
その横には、副会長のルイが、
そして十人近い生徒会役員が座っていた。
まるで尋問のようだ。


生徒会長がいつもの調子で、
何かを言おうとしたところを、
制して先に口火を切ったのは、純心だった。


「生徒会も随分と汚いことをするじゃないか。
これはどう考えたって盗撮したとしか思えない。」


写真を撮られたのは、
確かに久しぶりに犬女ちゃんが
家に帰って来たあの日かもしれない。
しかしそれ以前に
これは完全に盗撮であり、犯罪だ。
しかも写真の角度などから考えても、
どこかにカメラが隠されているか、
窓越しにドローンかなにかで
撮影したとしか考えられない。


いつもと様子が違う純心に、
生徒会長も調子を狂わされた様子だ。


「は?何を言っておっしゃているのでして?
盗撮?
私達がそんな下品なことをするわけがなくってよ」


生徒会長はムキになって反論する。


「じゃぁこれは一体誰がやったと言うんだ?」


「あんた達が、ここ最近ずっと、
俺の家を見張っていたのはわかってるんだ。
夏希があんた達に俺のことを聞かれたと言ってたからな。
状況から考えたらあんた達しかいないじゃないか。」


いつもは大人しい純心の豹変ぶりに、
生徒会長はムキになって反論する。


「は?言いがかりはやめてくださるかしら。
私達はあの後、あなたの家を見張ったりなんて、
そんなことしていなくてよ。
あのとだって、あくまでお話を
聞きに行っただけですってよ。」


その前に、一週間自ら見張っていたことは、
この際なかったことにする生徒会長。


「じゃぁ、誰がやったって言うんだ?」


「そんなこと、私達にもまだわかりませんわ。
ただ、盗撮は私達ではないと断言いたしましてよ。
生徒会自ら盗撮なんて犯罪行為をしていたら、
それこそ学校の名誉に傷がつきましてよ。」


確かにそうなのだ。
生徒会自ら危険を犯して、
犯罪行為までするとは思えない。
もし仮にやったとしても、
あえて学校中にばら撒く理由が見つからない。
どちらかと言えばスキャンダルは隠しだがるだろう。




「まぁまぁ、今はそれはいいじゃないすか。」
「私達は、ただこの写真の真偽を確かめようと思って、
あなたに来てもらったんですよ」


それまで黙っていた副会長のルイが、
話を逸らそうとして割って入った。
むしろ誰がやったかのほうが、
盗撮やプライバシー侵害という
法を犯している時点で重大なのだが、
ルイは上手いこと話しをすり替えていった。




純心の頭はずっと痛いままだった。
しかし、覚悟を決めた純心は、
犬女ちゃんのことを、生徒会長達に話した。
おばあちゃんの形見として、
犬女ちゃんを引き取ることになったことを。
両親が海外赴任していたため、
二人きりで暮らしていたことを。


「それでは、やましいことは一切ないと、
あなたは言い張るわけなのですね。」


それは絶対ないことを強調する純心。


生徒会長は思った以上には冷静だった。
純心の話がまともだったので、
ホッとしていたのかもしれない。


「しかし、夏希さん家の犬女だと
うかがいましてよ、私達は。」


「夏希の家で預かってもらってたんですが、
結局俺の家に帰って来てしまったんです。」
純心は夏希に迷惑がかからないよう、
少しだけ時系列を誤魔化した。


「離れられなくなるようなことしたなんじゃないか」
生徒会の一人が、誰が言ったか
わからないように、小さい声で発言した。
生徒会のメンバーはクスクス笑った。


純心はまた頭が痛くなるのを感じた。
こうした小さな悪意が積み重なる度に、
純心の頭は痛みを増して行く。

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