犬女ちゃん -見た目は美少女、知能は犬並みー(旧題:犬女ちゃんとピュアハート)

ウロノロムロ

生徒会長といじわるな女(1)

三年生で生徒会長の西園寺薫は純心のことが、
気になって、気になって仕方がなかった。


それは勘がいい第三者が見れば、
恋愛感情だとわかるぐらいのものであったが、
本人に全くその自覚はなかった。


すごく気になるので、
わざと冷たくしてみたり、
ちょっかいを出してみたり、
やっていることは、
気になる女子にいじわるをする
小学生男子レベルぐらいのものだった。


学生の男女交際や不純異性交遊に
反対している張本人が、
男女交際をしたことがあろうはずもなく、
恋愛に対して著しく幼稚であっても
仕方ないのかもしれなかった。


もし本人が純心を好きだいうことに
気づいたとしても、立場もあるし、
無駄にプライドが高いということもあり、
決して自分で自分の気持ちを
認めることは出来ないだろう。




気にするようになったきっかけは、
純心が実行委員として参加した学校行事で、
当時まだ二年生なのに、すでに生徒会長だった
薫に言った一言だった。


「あんたも大変だな。
みんなにいろんなことを完璧に求められて。
そんな頑張らないで、
もっと気楽にいけばいいのに。」


そう純心に言われた言葉が、
生徒会長の心に刺さったのだ。


薫は学園理事長の孫であり、
二年生ですでに生徒会長に選ばれ、
周りからは常に完璧超人であることを
求められていた。


本人のプライドが高いこと、
非情に気が強いこともあって、
当然そうでなくてはならないと
本人も思っていたし、
そうであろうと精進していた。


それでも決して表には出せないが、
本人もツライと思うときがなくはなかった。


だが周りは生徒会長は完璧で当然と思い込んで、
常にそれを求め続けていた。
だから純心に言われたような、
気楽にやれよ、などという言葉は、
はじめてのことであった。


生徒会長の中で、
自分の深層心理にある本当の気持ちを
唯一わかってくれる王子様であるかのように、
勝手に美化されていたのだ。


要は、生徒会長がちょろかった
だけなのかもしれないが。




純心はそんなことを言ったことを
全く覚えてはいないだろう。
見た感想をそのまま述べただけであり、
人の心に残る名言を言おうとして、
言ったわけでもない。
むしろうるさい会長への当てつけに
言った一言だった可能性すらある。


いずれにしても、生徒会長にとって、
純心は常に気になる存在であった。

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