犬女ちゃん -見た目は美少女、知能は犬並みー(旧題:犬女ちゃんとピュアハート)

ウロノロムロ

犬女ちゃんとルージュ(2)

「いやぁ、家にあったの
全部持って来たよ。
お母さんのとかも。」
おばさんは自分の口紅を、
勝手に犬女に塗られて
平気なのだろうかと、
純心は気にした。


男子からしてみれば、
口紅などには全く縁がない。
リップぐらいは塗ることはあっても。
だから見てはいけない
女子の秘密を垣間見ているようで、
それだけでどきどきしてしまう。


男子でも、幼い頃、
お母さんの口紅を面白がって塗ってしまう
ちょっとした悪戯なら
したことがあるかもしれないが、
小さい頃の記憶が、
おばあちゃんと夏希のことしかない純心には、
そんな幼少期の思い出すらもない。




まず夏希は真っ赤なルージュを
犬女ちゃんの口紅に塗る。


「これはちょっとキツ過ぎるかな」


「いや、これはだめだろ。
犬が人食った後、みたいになってるぞ。」
確かに口が血で真っ赤に
染まっているように見える。
犬は狼の血を引いているだけに、
ちょっと洒落に


「こういう派手なのは
犬女さんには似合いませんわ」


不評につき、そのルージュは
早速落とされた。




「じゃ、こういうグロスはどうかな?」


夏希はグロスを犬女ちゃんの
唇に塗ってあげる。


「うん、いい感じ」
「これだろ、これ」
「まぁ、可愛いですわ」
三人揃って好評価。


自然な感じに艶が出ていて、
質感もあり、
つやつや、ぷるぷる。
程よい感じで光輝いている。


つやつや、ぷるぷる唇の
犬女ちゃんは可愛いさ倍増だった。


犬女ちゃんも鏡で、
自分の姿を見て、
尻尾を振った。


みんなに可愛い可愛いと
たくさん言われて、
犬女ちゃんは今日もご満悦だった。






その日の晩、
ソファに座っている純心の上に、
犬女ちゃんが甘えて抱き着いて来た。


犬女ちゃんの顔を真近に見ると、
犬女ちゃんの唇には、
まだグロスが塗られたままで、
その可愛らしい唇は、
つやつや、ぷるぷるだった。


純心は、そのぷるぷるが、
どれぐらいぷるぷるなのか
指で触ってみたくなる。


人差し指でその唇に触れてみる。
犬女ちゃんは、きょとんとした顔で、
その大きな瞳で純心を見つめている。


ちょんちょんと何度か指先で
軽く突いてみたり、
唇に沿って指で撫でてもみる。


見て触っているうちにだんだんと、
その可愛らしい唇に
吸い込まれて行きそうになる。


お嬢様の件でもあったが、
純心はもしかしたら
唇フェチなのかもしれない。
唇に吸い込まれ過ぎである。


純心と犬おんなちゃんは、
おでこをぴったりくっつけ、
唇と唇が触れるまで、後わずか。


純心が目をつぶると、
犬女ちゃんもつられて目をつぶる。


しかし純心はそこで思いとどまった。


「ファーストキスの相手が、
お前というのも、なんだしな…」
純心はそう言いながら苦笑した。


目を開けた犬女ちゃんは、
大きな瞳で、まん前にある純心の顔を、
ずっと見つめ続けていた。
尻尾を振りながら、




このときのことを犬女ちゃんは、
いつまでも忘れなかった…。

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