犬女ちゃん -見た目は美少女、知能は犬並みー(旧題:犬女ちゃんとピュアハート)

ウロノロムロ

犬女ちゃんとお嬢様のお屋敷(3)

勉強もはかどり、
純心とお嬢様は一息入れていた。


使用人がテーブルに
運んでくれた紅茶を飲む。


「いつもうちの子が、
犬女さんにご迷惑をおかけして
申し訳ありません。」
お嬢様はちょうどそんな話をはじめた。


「いえ、いいんですよ」
純心は犬女ちゃんが
迷惑している気持ちなど
知るはずもないのに
勝手に答えた。


「あの子は、私が小さい頃に、
誕生日プレゼントとして、
お父様からいただいたもので。」


「小さい頃からずっと一緒に
育ってまいりましたの。」
俺と夏希のような、
幼馴染みたいなものかと、
人と犬を一緒に考える純心。


「最近ではすっかり成犬になってしまい、
去勢手術をしろという人も多いのですが、
子づくりをさせてあげたいと思っておりまして、
去勢手術はずっとしないで来ておりましたの。」


お嬢様も、犬の子づくりと、
去勢については知っているのに、
なぜ人間の子づくりに関しては
まったく知らないのであろうか。


もしかして、犬と人間で、
子づくりの仕方が違うとでも
思っているのではないだろうか。


純心はそう思いながら、
お嬢様の口から出た意外な話を、
顔を赤らめて、
胸をどきどきさせながら聞いていた。


「や、野生の本能ですからね
む、むしろ自然なことのような…」
緊張とどきどきで、
耳を赤く熱くしながら、そう返した。


純心の恥ずかしそうな態度で、
何かを察したのか、
少しは人間のそういうことも
理解するようになって来たのかは
わからないが、
お嬢様も顔を赤くして、
恥ずかしそうに照れながら、
場を取り繕おうとした。


「お紅茶のおかわりを
頼んでまいりますね」
そう言い、立って、歩こうとしたお嬢様は、
やはり動揺していたのか、
長いスカートの裾を踏んづけ、
転びそうになる。


「あぶない!」


純心は倒れそうなお嬢様に
腕を指し伸ばす。


バランスを取って
立て直そうとするお嬢様は
フラフラと半回転しながら、
座っている純心の膝の上に、
お尻からペタンと
倒れ落ちてしまった。


座っている純心に
まるでお姫様抱っこされて
いるようなお嬢様。


突然の出来事に
純心は頭の中が真っ白になり、
何も考えることが出来なかった。
ただ女子のぬくもりを体全身で感じていた。


お嬢様もまたあまりに突然のことに、
声を出すことすら出来ず、
頭の中が真っ白になっていた。
ただ、男の人のぬくもりに
包まれているのを感じていた。


「あ、…」


二人は唐突の出来事に、
声を出すことも出来ないまま、お互いを見る。


見つめ合う純心とお嬢様。


しばらく二人はお互いを
じぃっと見つめ合った。
お互いに頬を染め、
瞳を潤ませている。


美しいピンク色の、
つやつやと光輝くお嬢様の唇に
まるで吸い寄せられるように、
純心の体は動いた。


ただ何も考えることなく、
体が自然に反応してしまったのだ。
お嬢様の唇に触れたいという
本能的な行動だろうか。


お嬢様もまた
何も考えることなく、
体が勝手に反応した。


お嬢様は目をつぶる。


お嬢様の体は本能的に
純心の唇を受け入れることを
選択したのだ。


二人の唇は、
お互いの息を感じることが出来る距離、
わずか数センチのところまで縮まった。


ガッシャァーン!!


けたたましい音がしたかと思うと、


ドンッ!


犬女ちゃんと大型犬が
純心とお嬢様が居る部屋の、
ドアを蹴破り突っ込んで来た


二人はびっくりして飛び上がり、狼狽した。
まるでやましいことをしようとしていたのを、
見られてしまったかのように。


「い、いや、これは変なことではなく、
倒れてあぶなかったから助けようとしただけで…」


「そ、そ、そうですわ、
助けていただいただけですの…
別にキスをしようとしていたとか、
そういうことではないですわ…」


聞いてもいない、というか
人間の言葉がわからない、
犬女ちゃんと大型犬に
必死に言い訳しようとする
純心とお嬢様。




犬女ちゃんと大型犬は、
屋敷中で追い掛けっこを繰り広げたため、
屋敷の中は物が倒れ、壊され、割られ、
しっちゃかめっちゃかな状態になっていた。


お嬢様は冷静に我に返って、
二匹を叱った。


「一体何をやっているのですか!
お行儀が悪い!」


純心はその惨状を見て一気に青ざめた。
『これ弁償とかになったら、払えないぞ』
お嬢様から弁償額を請求されることはなかったが。




それから、大型犬は
犬女ちゃんに未練を残しながらも、
使用人達に無理矢理連れて行かれた。


犬女ちゃんは見事に
自身の純潔を守り切った。


『せめてもう少し後に
してくれたらなあ』
と純心は思わなくもなかった。




その後、
純心がお嬢様のお屋敷に
行ったことを話すと
夏希はめちゃくちゃ
むくれて怒っていた。


お嬢様とのキス未遂の件は、
お嬢様が天然であることもあって、
お嬢様が見ていた夢
ということで処理された。


それでも、夏希とおばさん、お嬢様に
協力してもらい純心は
試験勉強を進めることが出来た。


その甲斐あって、
なんとか前回から成績を落とさずに
済んだ純心だった。

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