犬女ちゃん -見た目は美少女、知能は犬並みー(旧題:犬女ちゃんとピュアハート)

ウロノロムロ

犬女ちゃんとお洗濯

犬女ちゃんの洋服を洗濯するのも、
純心の家事の一つであった。


お風呂同様に夏希に頼もうかとも思ったが、
そこまで甘えるのもどうかと思い直し、
純心が洗濯を続けていた。


当初は、お風呂に入れて
体を洗うほどではないが、
やはり多少抵抗があった。


見た目がほとんど女子の服を
触ったりすることに照れというか、
ちょっといけないことをしているような
後ろめたさを感じていたのだ。


学校の体育の着替えで、
男女に分かれた教室で
着替えが終わった後、
教室に女子のブラジャーが
忘れ去られていて、
これは触って拾っていいのものなのか、
触ってはいけないものなのか、
どうしたらいいのだろうと、
どきどきしながら迷っていたときの
気分に似ていた。


はじめの頃、
犬女の汚れた服は
どんな匂いがするのだろうか、
物凄く気になってしまい、
他に誰もいないのに、
顔を赤くして、
心臓をどきどきさせながら、
匂いを嗅いだことがあった。


その匂いは、
汗臭くもなく、犬臭くもなく、
甘いミルクのような匂いがした。


美少女の女子とすごく
接近したときと同じ匂い。
これは純心の勝手な思い込みだが、
そいうときに感じる匂いと
同じ匂いだった。


体の大半が人間と
同じ犬女ちゃんなので、
人間の女子と同じ匂いがしても
不思議ではないが、
人間、犬女に関わらず、
なぜ甘いミルクのような
匂いなのかは不思議だった。


よく乳くさいガキという
言い方を聞くが、
未だに母親のおっぱいを
飲んでいるわけでもなく、
今はまだ自分がお乳を
出せるわけでもないのに、
なぜ十台の女子の中には、
甘いミルクのような匂いが
する子がいるのか。
純心には不思議であった。




犬女ちゃんの洋服の匂いを嗅いで、
そんなことを考えていたら、
後ろで犬女ちゃんの鳴き声がし、
心臓が止まりそうなぐらいどきっとして、
「いや、これは匂いを
嗅いでいたわけではなくて、
汚れ、汚れがどれぐらいなのかを
確認していたわけで」
とまた言葉が通じない犬女ちゃんに
必死で言い訳をする羽目になった。




匂いといえば、洗濯に
柔軟剤を使うかも迷った。


美少女にはいい匂いを
させていて欲しいという、
十代男子の儚い夢を
まだ見ている純心は、
犬女ちゃんの服に
柔軟剤を使うか迷った。


結局、
犬並みの嗅覚を持つ
犬女ちゃんの服に、
柔軟剤の匂いがしていたら
着ている本人はさぞきついだろう、
と思い至り諦めた。


犬女ちゃんは、しょちゅう
抱き着いて来るので、
やはり変な匂いよりは、
いい匂いのほうがよかった。


犬女ちゃんには、いつまでも
このままいい匂いで居て欲しい、
と純心は願っていた。




純心が、洗濯機や乾燥機で
洗濯ものを放り込んだり、
取り出しているときに限って、
犬女ちゃんが、
足元にすりすりして来たりするので、
そういうときはちょっと邪魔だった。


最近犬女ちゃんはますます甘えん坊の
かまってちゃんになって来ている。
家族として、より一層認められて来ている
ということなのかもしれないが。




もちろん、洗濯物を運ぶのを
手伝ってくれたりもする。
洗濯物を入れたかごを、口で咥えるか、
手に引っかけて運ぶかしてくれる。




天気がいいときに洗濯物を庭に干すと、
犬女ちゃんは喜んで、
洗濯物の下を走り回っている。


そんな犬女ちゃんがいる日常にも
慣れて来た今日この頃であった。

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