犬女ちゃん -見た目は美少女、知能は犬並みー(旧題:犬女ちゃんとピュアハート)

ウロノロムロ

犬女ちゃんとお風呂(4)

テーブルに向かい
春なのに鍋を囲む
純心と夏希と犬女ちゃん。


「犬女は、床で食べるより、
人と同じテーブルで
ご飯食べると喜ぶらしいよ。」


夏希が犬女ちゃんに、
鶏肉や野菜を取り分けてあげる。


「へぇ、そうなんだ。
じゃあ、今度から同じテーブルで
食べるようにするわ。」


犬女ちゃんは、二人と一緒に
テーブルで食事が出来るのが嬉しいのか、
尻尾を振って犬食いをする。


純心はみんなで食べるご飯は
やはり美味しいと思う。




三人でたらふく食べて、
みんなでごろ寝して食休みをする。


「じゃあ、これからずっと
あたしが犬女ちゃんを
お風呂に入れてあげるね」
夏希の提案は純心には
大変ありがたいものだった。


「それ、すげー助かるわ。
とりあえずは三日に一回ぐらいで、
いいと思うんだけどな。
ありがとな。」


新学期初日から、
夏希には犬女ちゃんのことが
バレてしまったが、
むしろこれでよかったとしみじみ思う。
いや最初から夏希にだけは、
秘密を明かしておけばよかったと。




実は夏希にはもう一つ
気になっていることがあった。
昼間学校で話題になっていた、
美少女転校生と純心の関係についてだ。


お客さんというのが、
美少女転校生と関係があるのではないかと、
気になって、気になって、仕方なく、
お母さんのお裾分けを口実に、
純心の家に様子を見に来たのだ。
そこに居たのは犬女ちゃんだったのだが。


しかしその話を純心から聞くと、
その転校生に相当好意を持っているのがわかり、
夏希はやはり複雑な心境だった。


「あー、
あたしも朝のお散歩
一緒に行きたいなあ」


「別にいいけど、
お前、陸部の朝練あんだろ?」


「そうなんだよねー
なんで陸部なのに朝練あんのかなぁ」


「でもまた県大狙ってるんだろ?頑張れよ」


「うん」
純心に励まされて、
夏希はちょっと嬉しそうだった。






「そういえばさ、
お前らなんか似てね?」
犬女ちゃんと夏希が、
じゃれているのを見て、
純心は言い出した。


「え、そうかな?
あたしこんなに可愛くないし。」
夏希は犬女ちゃんの顔を
まじまじと見つめる。


「いや夏希は可愛いだろ。
どう見ても絶対可愛いと思うぞ。」


「え、そ、そうかなあ
なんか照れちゃうな」
「て、いやこの展開、
昼間もやったよね。」


改めて夏希は考える。
「ショートカットだからじゃない?」


「うーん、まぁそれ以外にも、
ボーイッシュなとことか、
健康的な感じとか。
まぁ二人ともよく走るからかな、
足の筋肉の付き方とかも似てると思うぞ。」


純心がそう言うと、
夏希はおふさけをはじめる。
「ふーん、じゃあ
あたしも犬女ちゃんの真似してみようかな」


じゃれていた犬女ちゃんの真似をして、
四つん這いで歩きはじめる夏希。


「夏希さん?」
さっきのお嬢様の話に
刺激を受けてしまったのか、
なんだか大胆になっていく夏希。
犬女ちゃんのように、
純心に甘えるようにすり寄って行く。


「ちょっ、ちょっ、
な、夏希さん?」
突然の夏希のいたずらに、
驚きながら、後ずさる純心は、
そのまま後ろに倒れてしまう。
四つん這いのまま、
その上に乗りかかる夏希。


見つめ合う純心と夏希。
夏希の目は潤んでおり、
その唇は何かを言おうとする。


そのとき、犬女ちゃんが、
二人がじゃれてるのを見て、
突っ込んで来て一緒にじゃれる。


『やるわね、犬女ちゃん』
犬女ちゃんに邪魔されて残念がる夏希であった。






犬女ちゃんは、玄関で
夏希をお見送りしていた。


夜も遅くなったので、
そこまで送るという純心が来るのを、
夏希は玄関で待っていた。


「強力なライバルが二人も
増えちゃったかなぁー」
夏希は犬女ちゃんを見て、
笑みを浮かべながら言った。


夏希は犬女ちゃんをじっと見つめている。


「わたしはあなたで、
あなたはわたしね、きっと」


犬女ちゃんもその大きなくりくりした瞳で、
夏希の顔をじっと見つめていた。

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