おっさんが転生したら、寝取られた元嫁と寝取った間男の息子だった件

ウロノロムロ

おかあやんの子に産んでくれてありがとうやで

おっさんが前世で死んだ年齢を
今のたっくんの年齢が上回った頃。


たっくんはおとうやんが創業した会社を
滝野さんから引き継ぎ、
それなりに事業を拡大させることに成功していた。


中のおっさん、前世でも商売の才覚はあり
それ故に忙しくしていたのが
そもそも事の発端ではあったのだ。


おかあやんと奥さんも一緒に会社の仕事を手伝い、
すべてが順風満帆のように思われた。


おかあやんが倒れるまでは。




ある日突然おかあやんは会社で倒れ、
そのまま救急車で病院に運ばれた。


依然より腸の一部に腫瘍が出来ていて
それが大きくなり過ぎて腸内の通路を塞ぎ、
詰まった腸が破裂したらしい。


緊急手術が行われ、
腸の一部と腫瘍は摘出されたが、
おかあやんは介護が必要な体となってしまう。




「ワイおかあやんのそばに
ずっと一緒にいてあげたいんや」


奥さんに頭を下げて頼むたっくん。


「会社のこともあるのに、
我儘わがままを言って本当にすまん」


「わかったわ。
会社の方は滝野さんと私でなんとかするから」


奥さんは思っていた以上にすぐに理解を示した。


「私もお父さんが死ぬ時、
そばにいてあげられなかったことを
今でも後悔しているの」


奥さんは目に涙を浮かべていた。




それからというもの
たっくんは常におかあやんのそばに寄り添い、
おかあやんを支え続けた。


-


おかあやんがお風呂に入るのを
補助をしてあげるたっくん。


そこで幼少期に別れて以来、
もう二度と会うことは
決してないだろうと思っていた
おっぱいちゃんとも再会を果たす。


「随分とれてしまったやろ?」


恥ずかしそうにタオルで胸を隠すおかあやん。


「せやな」


たっくんから笑みが漏れる。


「ま、ひどい」


おかあやんも笑う。


「あんたに吸われて、しぼんでしまったんやからね」


優しい顔で頷くたっくん。


「わかっとるで、
だからホンマにおっぱいちゃんには感謝しとるんやで」


「あぁ、懐かしいなあ、、、
あんたずっとおっぱいちゃんて呼んでたわ」


「でも最初におっぱいちゃんて
名付けたのおかあやんやで」


「そうやったかな?」


「そうやで、
ワイ小さい頃のことちゃんと全部覚えてるんやで」


そんなことを話ながら
おかあやんの背中を流してあげ、
手の動く範囲が狭くなって
難儀しているおかあやんが
体を洗うのを手伝ってあげる。


おかあやんの老いも、
自分と一緒に同じ時間を過ごして
ここまで来たのだと思えば、
たっくんにとっては愛おしい。


-


座薬をお尻の穴に入れるのに
体の可動域が狭くなっているために、
悪戦苦闘しているおかあやん。


一人ではどうにもならないので
たっくんに頼むことにするが、
いくら息子と言えど、下半身丸出しの姿を
たっくんに見せるのは恥ずかしい。


そこで下半身に毛布をかけて、
たっくに手探りで
入れてもらうことにするのだが。


たっくんもさすがに
おかあやんに気をつかって
出来るだけ体に触れないようにと配慮するが、
かえってひどいことになってしまう。


「ちょっと、たっくん!
そっちの穴は違うわ!」


顔を真っ赤にして恥ずかしがっているおかあやん。


「は?」


「え? あっ!
おかあやん、ごめん、ごめんやで
ワザとちゃうから、ワザやないから」


「たっくんのバカ!」


-


腸を手術した関係で、
排泄物を上手く排泄出来ないおかあやん。


布団を汚してしまい、
それをたっくんに気づかれないように
一人で処理しようとするのだが、
やはり体が思うように動かず、
悪戦苦闘するもまったくどうにもならない。


なんだか自分が情けなくなって来て
泣きべそをかきはじめてしまう。


物音に気づいたたっくんが部屋に入って来る。


「どうしたんや?」


布団の汚れに気づくたっくん。
おかあやんは手の甲で涙を拭う。


「うちが今片づけるから」


動こうとして倒れそうになる
おかあやんをたっくんが支える。


「なんでワイに言ってくれんのや
ワイがやるから気にしなくてええんやで」


「あんたにそんなことさせられんわ」


「なんでや、ワイも赤ちゃんの頃、
いつもおかあやんに後始末してもろうてたやんか、
その時の恩返しや」


「ワイ小さい頃のことちゃんと全部覚えてるんやで」




今まで当たり前に出来ていたことが
出来なくなり自信をなくし、
そんな自分が情けない、不甲斐ないと
おかあやんは思いはじめる。


「うちもうこれ以上、
たっくんに迷惑かけてまで生きていたくない……
たっくんにこんなことまでさせて……」


おかあやんは涙を流し、
たっくんに訴えかける。


「そんなこと言わんといてくれ、おかあやん」


たっくんもまた涙ながらに
おかあやんに伝えようとする、
わかって欲しい願い。


「ワイにとっては、
おかあやんが生きていてくれるだけで尊いことなんや」


「これからもワイとずっと一緒にいて欲しいんや」


年を取ると身体機能が低下して、
それまで出来たことが出来なくなったりする。
まるで子供の頃に戻ったかのように。


それでも、どんなことになっても
たっくんはおかあやんに生きていて欲しかった。


そのたっくんの願いは
おかあやんに届いているのか。


-


それから半年後の定期検査の結果、
腫瘍が転移していることがわかり、
おかやあんは再度手術を受けることになる。


しかし時すでに遅く、
手術で開いてみた時にはもう手の施しようがなく、
切除などは行われないまま、
そのままおかあやんの体は縫合された。


おかあやんも高齢であるから
いずれこういう日が来るであろうことは
わかっていたたっくんだったが、
それでも一日でも長く生きていて欲しい、
一日でも長く一緒にいて欲しいと願い続けていた。


だがその願い虚しく、
おかあやんと一緒にいられる時間は
もうわずかしか残されていない。




おかあやんの余命が
もう後数週間であろうとなった時、
看護も大変だろうからと、
二十四時間完全看護の病院に入院することを
医師は勧めたが、たっくんはこれをかたくなに拒否する。


そこは二十四時間完全看護であるため、
肉親などが病院に寝泊まりすることが出来なかった。
面会時間は午前十時から午後六時まで。
つまりそれ以外の時間は
医師や看護師や相部屋の人間がいたとしても、
おかあやんはひとりぼっちになってしまう。
おかあやんの最期にそんな寂しい思いはさせられない。


それに残された限りある時間、
片時も離れることなく
ずっとおかあやんと一緒にいたい。
それがたっくんの望みであり、
おかあやんもまた死ぬ時は自分の家で
たっくんに看取られて死にたいと望んでいた。


奥さんもそのことに理解を示してくれており、
それからもたっくんは昼夜なく
おかあやんのそばにいて看病を続ける。


昼はおかあやんのかたわらでずっと手を握り、
体を動かすことがある時はおかあやんを支える。
夜はおかあやんのベッドの横に布団を敷いて寝、
一時間ぐらい置きにおかあやんの状態を確認する。


そんな献身虚しく、次第に昏睡状態が長くなり、
おかあやんが目を覚ましている時は少なくなっていく。


-


ある時、おかあやんが目を覚ますと、
たっくんの奥さんが自分の手を握ってくれていた。


「あ、おかあさん…… 
すいません私で……
彼今ちょっとお風呂に入っているので、
代わりに私がそばにいたんですよ……」


おかあやんが目覚めたことに気づくと、
奥さんはおかあやんが心配しないように、
開口一番そう説明した。


「うん、ええんよ、ありがとう……」


おかあやんは弱々しい声で応える。


「いつも焼きもち妬いてばかりで、
あんたには本当にすまんことしたなぁ、ごめんな」


突然おかあやんがそんなことを言い出したこと、
それが自分への別れの言葉であると奥さんは察する。


「いえ……」


奥さんにもおかあやんに
言っておかなくてはならないことがある。


「……私小さい頃、お母さんを亡くしていて、
私にお母さんが出来て嬉しかったです……」


涙声になりながらそれを伝える。


「失礼かもしれないんですけど、
焼きもちを妬くお母さんとっても可愛くて、
死んだお母さんもこんな感じだったのかな
とか思ったりして」


奥さんが握ってくれている手を
か弱い力で握り返すおかあやん。


「あんたみたいないい人が
たっくんの奥さんでホンマによかったわ……」


おかあやんはかすかに微笑む。


「これからもずっと、たっくんと仲良うしてあげてね」


「……はい」


「たっくんももういい大人だから、
うちがいなくても大丈夫なんやろうけど……
それでも、もっともっと、ずっとずっと
一緒にそばにいて、見守ってあげたかった……」


おかあやんの切なる願い。
死期が迫っているおかあやんは
残していくたっくんのことを
奥さんや周りの人に頼むことしか出来ない。
それは最後の可愛い焼きもちだったのかもしれない。


-


その日は、最近昏睡状態が続いていたおかあやんが
久しぶりに目を覚まし、体調もよかったようで、
たっくんと話をすることが出来た。


「あのなぁ、おかあやん
ワイおかやあんのお腹の中にいた時のこと覚えてるんやで」


たっくんは突然そんな話をしはじめる。


「その後のこと、おかあやんのお腹から出て来る時のことも、
小さい時のことも全部全部覚えてるんやで」


すっかりか細く弱くなっているおかあやんの声。


「ホンマぁ?」


今までのことをおかあやんに
語って聞かせはじめるたっくん。


前世や転生のことは隠したまま、
都合が悪い部分、差し障りがある部分はカットして、
多少話を盛ったり脚色したりはあったものの。


おかやあんのお腹の中にいた時のことからはじまり、
自分が生まれる時のこと、
名前を付けられる時や、
夜泣きが酷かったことなど、
ずっとおかあやんに語って聞かせた。


これまでの母子おやこ二人の道のりを
一緒に回想するかのように。


今となっては何もかもが遠い昔のような、
たっくん自身にもそう感じられることばかり。


おかあやんはびっくりしながらも、
懐かしそうに楽しそうにたっくんの話を聞いていた。


「そんなことってあるんかな……」


優しい眼差しでたっくんを見つめるおかあやん。


「でもあんたは小さい頃から賢い子やったから、
そんなこともあるんかもしれへんね……」


たっくんはおかあやんの手をずっと握っている。
小さい頃、おかあやんが
どこかに行ってしまうのではないかと不安で、
手を握ってずっと離さなかったように。


おかあやんはたっくんに優しく微笑ほほえむ。


「たっくん、うちの子に生まれて来てくれて、ありがとう ……」


微笑ほほえみを返すたっくん。


「こっちこそ、
ワイをおかあやんの子に産んでくれて、ありがとうやで」




その数日後、おかあやんは眠るようにして息を引き取った。
おかあやんが望んでいた通り、たっくんに看取られて。
安らかな笑みを浮かべ、たっくんの手をずっと握ったまま。











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