おっさんが転生したら、寝取られた元嫁と寝取った間男の息子だった件

ウロノロムロ

おかあやん、再婚とかせえへんの?

手配していたおとうやんの位牌が届き、
前世の自分の位牌と一緒に仏壇に並べる。




  ホンマ不謹慎なんやけろうけどなぁ
  これどうかと思うわぁ
  おかあやんの歴代の旦那集合みたいになってるやんけ




生まれた頃から前世の自分の仏壇と位牌を見ながら
育ったたっくんでもさすがにいかがなものかと思う。




その日は日曜日であったが、
位牌に魂を込めるとかなんとかで
お坊さんが家に来るので、
滝野さんがまた家に来てくれることになっていた。


その時、おっさん自分の位牌を見つめ冷静に思う。




  位牌に魂入れるとかいう話やけど
  ワイの位牌に、ワイの魂入っとらんよな?
  ワイここにおるしな
  どういうことやろか
  頭おかしなるで、ホンマに




お坊さんが帰った後、たっくんは
おかあやんと滝野さんを二人きりにしようと
席を外して自分の部屋に行く。


「仕事の話とかもあるやろうし。
滝野さん、ゆっくりしてってな」


自分の部屋にこもって
聞き耳を立てて様子をうかがっていると
笑い声なども聞こえて来て、和やかな
いいムードであることが察せられる。


さらにしばらく様子をうかがっていると
妙にうわずった滝野さんの声が聞こえて来る。




  ん? なんかあったんやろか?




そう思ってたっくん音を立てないように
部屋を抜け出してリビングに近づく。


「自分は、奥さんのことが好きなんです」




  滝野はん!さすがにまだ早過ぎやろ!




その声が聞こえたたっくんはいろいろと察し、
おかあやんと滝野さんがいるリビングへ。


たっくんが行くと、
興奮した滝野さんがおかあやんに告白している真っ最中。
おかあやんはドン引き、というよりは
あまりの迫力に少し怯えてしまっている。
もちろん襲われているという訳ではない。


「たっくん、違うんよ」


たっくんの姿に気づいたおかあやん、
思春期のたっくんに変な誤解はされたくない。


「わかっとるで」


「滝野さんがいい人なんはわかっとるけど、
これはちょっとどうなんかなと思うで
おかあやん怯えてしまっとるやん」


たっくんの言葉に我に返る滝野さん。


「すまん、ついつい気持ちを抑えきれなくて」


本当に申し訳なさそうに
土下座でもしそうな勢いでおかあやんに詫びる。


「奥さん、本当に申し訳ありませんでした」


何度も深々と頭を下げる滝野さん、
とりあえず本日のところはお引き取りをいただくことに。


-


「おかあやん、お茶でも飲もうか?
一旦落ち着こうや」


まだ少し怯えているようなおかあやんの腕を取って、
椅子に座るようにうながすたっくん。
キッチンで二人分の紅茶を淹れる。




  滝野はんみたいないい人でも
  色が絡むと、わけのわかんことになって
  あんな風になってしまうんやな


  やっぱり、人間のごうちゅうんは深いもんやな




温かい飲み物で、おかあやんが
落ち着きを取り戻した頃合いで、
例の話を持ち出してみる。


なぜかティーカップを両手で持って
小動物のように可愛いらしくしているおかあやん。


「おかあやん、再婚とかって考えとらんの?」


たっくんの言葉にキョトンとする。


「あんた、新しいおとうさん欲しいん?」


「そういうわけちゃうわ」


たっくん的には
新しいおとうやんとかまったくどうでもよくて、
おかあやんが新しいおとうやんについて
どう思っているのかが問題だ。


「おかあやんもまだ若いほうやし、この先を考えたら、
そういうのもありなんちゃうかなと」


この辺は言い回しに気をつけなくてはならない。
おかあやんに幸せになって欲しいから
とっとと結婚してくれなどとは絶対言えない。


「ワイはおかあやんに幸せになって欲しいんや。
おかあやんが幸せになれるなら、
再婚してワイは全然かまへんのやで」


直前のやらかしがあるので
滝野さんの話はどうかとも思ったが、
むしろ滝野さんの気持ちはすでに伝わっているので、
あえて今話してみることに。


「まぁ今日はなんか空回りしとったけど、
滝野さんいい人やし、
おかあやんのこと好きみたいやし……
おかあやんの気持ちが大事やけど、
おかあやんがいいならそういうのもありなんかなと」


言葉を選び過ぎて周りくどいことになっている。


-


しばらくティーカップを指先でいじくりまわしていた
おかあやんがためらいがちに話はじめる。


「あんたにはずっと黙ってたんやんけどな……」




  ゴクリ……
  ワイに秘密にしとることなんてあったんか……




「うち、おとうやんの前に結婚してた人がおってな……
ずっと前からうちにある仏壇な、その人の仏壇なんや」




  知っとるがな……


  そんなん、ワイ、
  生まれる前からずっと知っとるがな……




  でも、なんでや……
  なんで今そんな話するんや


  今はそんなワイの前世の話とか
  どうでもいいやろ!




「とってもいい人で優しくて、
面白くて大好きだったんやけどな……」




  どうでもいいことやあらへんやんけ!




「うち同時におとうやんのことも好きになってしまってな……」


おかあやんも少し後ろめたいのか、
たっくんの反応をうかがうように見つめている。


「ひどい女やろ?」


「そんなことないわ」


恨みも嫉妬も欲もすべて捨て去った
今の聖人モードのおっさんには素直にそう言えた。


「結局、最初の旦那さんは死んでしもうて、
おとうやんと再婚したんやけどな……」




  知っとるがな……
  それも全部知っとるがな……




中のおっさんは必死に堪えているが、
たっくんの顔はすでにくしゃくしゃであやしい。


「その二人のことが、
ホンマに、ホンマに大好きでな」




  あかん、ワイもう……




「心から愛してたんや」




  あかん、あかんやん
  こんなん絶対泣くやつやん
  ワイのこと泣かしにかかって来とるやん
  泣かす気マンマンやん




おかあやんはたっくんの中身が
元旦那であるおっさんだとは知らないので、
もちろんそんな気はまったくないのだが。




  ワイもや、ワイも
  心の底から愛しとったで


  いや、今もや
  姿形は変わっても
  ずっとずっと心から愛してるんやで




「なんであんた泣いてるん?」


号泣しているたっくんを
不思議に思うおかあやん。


「いや、なんかいい話風に聞こえたんや」


転生のことを今さら話す気がないおっさんとしては
ここはさすがに誤魔化すしかない。


「そんなでもないやん? 変な子やな?」


まぁ事情を知らない人からすれば、
確かにそこまでいい話でもない。




「もうなぁ、
その二人以上に誰か男の人を
好きになれるようことないような気がするんや」


おかあやんは微笑ほほえみを浮かべる。


「だからな、うちの旦那さんは生涯この二人だけや」


微笑ほほえみはそのまま満面の笑みへと変わる。


「本気で愛した人が二人もいるやなんて
うちむしろ得してるやん、
うちむしろ他の人より幸せやん」


それは『二人も旦那を亡くした不幸な女』
という言葉に縛られた今のおっさんを
呪いから解き放ち救う言葉。


それと同時に、前世のおっさん自身にも向けられた、
前世のおっさんの魂を救う言葉でもあった。


煩悩を捨て、
ただただおかあやんの幸せを願ったおっさんに
おかあやんである元お嫁ちゃんがくれた
ご褒美なのかもしれない。


-


「でもな、あんたは違うで、
あんたはおかあやんの中でも特別中の特別や」


「あんたのためならうちは死んだってかまへん……」




  クソっ!なんでや
  なんで二回も泣かしにくんねん
  こんなワイの涙腺決壊するに決まっとるやんけ
  一生分の涙今ここで流してまうやろ




「おとうやんが死んでしまって……
幸せの一部はなくなってしまったけど……
それはもちろん悲しいし、寂しいんやけど……」


一度おかあやんは顔をうつむけるが、
再び顔を上げ大きな目を見開いてたっくんに問う。


「だからってうちが不幸ということではないやん?」


「まだあんたがおるんやから、なくなってしまった分も
また一緒に増やしていけばいいんや」


言葉を噛みしめるように頷く。


「うちが本当に不幸になるんは
あんたがうちより先に死んでしまった時だけや」


「うちはあんたがいる限り幸せや」


呪いから解かれた矢先に
おっさんはもう一つの呪いを
おかあやんにかけられてしまった。
だがそれは決して悪いものではない。


今まで二度目の人生拾ったようなものだからと
自暴自棄とまではいかないが、
おかあやんのためなら
二度目の人生を犠牲にすることもいとわない
姿勢であったたっくんの中のおっさん。


しかし、今ここでおかあやんに
自分より先に死ぬことは許さないと宣告されてしまった。


それはもっと二度目の人生を大切に生きろと
おかあやんに言われているようにも思えた。


人生をニ周しているたっくんの中のおっさん、
元お嫁ちゃんであるおかあやんに
ニ周分をきっちり泣かされてしまう。











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