おっさんが転生したら、寝取られた元嫁と寝取った間男の息子だった件

ウロノロムロ

ワイは熟女好きとは違うんじゃ!(中学生

桜咲く四月。
天候にも恵まれ、空は青く澄み渡り、
満開の桜が色を添える。


中学校の校門、
その前にある『入学式』の立て看板のところで
順番に写真を取るというよくある光景。


たっくんもいよいよ中学生。


おかあやんとヨシくん母子おやこ
中学入学記念の写真を撮ろうとしていた。


ヨシくん母子の写真を撮ろうした時、
ヨシママがヨシくんの腕に抱きつくと
ヨシくんは怪訝そうな顔をして手を振り払う。


「キモッ! キモイ、キモイ」


ヨシくんのその言葉に愕然とするたっくん、
の中のおっさん。




  なんやてっ!


  中学生になったら、
  おかあやんにキモイとか言わなあかんのか!?


  ワイそんなんよう言わんわ
  考えただけで震えるわ……




中学生になったことだし、
外でマザコンを全開で披露するような真似は
さすがにちょっと慎んだほうがよいのではないかと、
ちょうど思いはじめていたたっくん。


人前での体裁ていさいを気にする
思春期によくありがちなやつだろう。
中身はおっさんだが。




  いつもはおかあやんに抱きつかれたりしたら
  そらもう絶頂もんやけど


  ワイも中学入ったらさすがに
  マザコンと思われるのはどうかと思うし


  ……


  でも、おかあやんにキモイとか
  絶対言われへんわ


  あかんわ、今日だけはあかんわ
  今だけ、今だけは
  どうか抱きつかんといてくれ




入学式の朝から、
そんなしょうもないことで悩んでいる中学生、
むしろこちらのほうが震えると言ってやりたい。




たっくんとおかあやんが写真を撮る番となり、
たっくんがおそれていたことそのままに、
おかあやんがたっくんの腕に抱きつく。




  マジやんけー!
  おかあやん、ホンマに抱きついて来たやんけ!
  久しぶりのスキンシップや!


  こんな嬉しいのに
  ワイ、キモイとか言われへんやん!
  どうしたらいいんやー!




「キモッ、キモッ…… キモチイインジャッ!」


一瞬その場に微妙な空気が流れ、
その後、ヨシママは大爆笑。


「やっぱり、たっくんはお母さんが大好きなんだね」


普通に考えればヨシママが、
たっくんがマザコンだということを知らないはずがない。


おかあやんは顔を真っ赤にして照れる。
耳などはもう真っ赤かなぐらいに。
さすがのおかあやんも恥ずかし過ぎて
心にもないツッコみを入れる。


「もう!なんなんこの子、キモイわ……」




  あかん! あかんがな!


  おかあやんにキモイ言うはずやったのに、
  おかあやんにキモイ言われとるやんけ!


  あかん、あかんわ
  おかあやんにそんなこと言われたら
  ワイもう生きて行けん……




「あんた、なに呆けてんの、写真撮らな」


おかあやんの一言で我に返るたっくん。
結局、おかあやんに抱きつかれて
デレデレしている写真が記念の一枚となった。




「ヨシくん、頼むから、
さっきのことは誰にも言わんといてな」


「うん、わかっとるで」


たっくんはヨシくんに口止めをする。


しかし、得てしてこういうのは
お笑いでいうところの前フリになるのだが、さて。


-


たっくんにとって中学校生活は、
小学校の時と大差ないぐらいのものだった。
小学生のほうが無邪気だった分マシかもしれない。


なぜだか知らないが中学生は、
中学生になった途端に色恋に目覚めはじめる。


ついこの間までただのクソガキだった男の子に、
突然女子と付き合っているなんていう
浮いた話の一つも流れ出すのが中学生だ。


こくったとか、告られたとか、
付き合ってるとか、別れたとか、
そんな話に興味津々なのが中学生。


おそらく、女子のほうがませていて恋愛願望が強く、
告るという行為自体に憧れているのではないか
という気がしなくもない。
今の時代、女子のほうが積極的なのであろうか。


まぁおかあやんがそんなことを知ったら、
嫉妬のあまり、中学校には行かなくていいからと
たっくんを家に軟禁しそうな話ではあるが、
むしろたっくんの中のおっさんも
喜んで軟禁プレイされたそうなので、
どうにもよくわからない話である。




  まぁワイにロリコン属性がないことだけは
  今回ようわかったわ


  なんや周りは盛り上がっとるようやけど
  まったくそんな目で見られへん


  そもそもやで、
  シモの毛も生え揃ってないような子らに
  色恋語られても、どうにもならんわ




それは一理ある。
少年野球の子がプロ野球選手に野球理論を語るようなもので、
もちろんおっさんも恋愛のプロではなく、
どちらかと言えば酷い失敗をしまくっているのだが、
それでも幼い恋愛経験しかない子供に
恋愛を語られてもリアクションに困る。


逆に言えば、
甘酸っぱい淡い恋心などはすっかり忘れて、
色と欲にドロドロにまみれまくった
よごれ切った大人ということになるのだが。


まぁたっくんからすれば
せいぜいヨシくんが同じクラスでよかったなと、
後は中学の野球部ぐらいにしか興味はなかった。


-


入学して間もない体育の授業でのこと。
体育館の半分を男子が使い、
もう半分を女子が使ってバスケを行うことになる。


他のチームが試合している間、
ヨシくんと座って眺めていたたっくんだが、
女子に一人だけバスケのユニフォームで
参加している目立つ少女がいる。


体操着とジャージを忘れたのか
一人でイキっているのかは知らないが、
バスケ部だけあって一人だけ飛び抜けて上手いので
ついつい目を引く。


体育館の小窓から差し込む光に
少女の汗がキラキラと輝いて見え、
まさにいかにも輝いている感じがする。




  はぇ、上手いもんやなぁ
  それになんかしらんが
  さすが青い春やぁ
  なんやワイには眩し過ぎてよう見てられんわ




中のおっさん、中高生特有の
ハツラツとした若さに思わず感動する。
たっくんも同じ学年で、野球部で輝く汗をかいており、
外部から見ればこの少女と何ら変わらないのだが、
中のおっさんにはまったくそんな自覚はない。




体育教師二人が呼び出されて、
ちょっと席を外した瞬間。


そのバスケ女子が、
おもむろにたっくんのほうを睨みつけ、
ツカツカと歩いて来て
座っているたっくんの前に立った。


「お前、さっきから
なにエロい目でこっち見てんだよっ!」




  は?
  ワイか? ワイなんか?


  確かに見てはいたけど
  エロいか?エロかったんか?




まったく思ってもみなかった
予想の斜め上を行くイチャモンをつけられた。
まぁ思春期女子は
そういうのに過敏になったりするものだが。


体育館にいる男女全員がこちらに注視する中、
バスケ女子はずっとたっくんを責め続ける。




  あぁ、あれか、いつものあれか
  いつものようにキ○ガイか
  どうしてワイはいっつも
  キ○ガイに巻きこまれるんやろな




ここまでそんな正統派の狂人は登場していないはずなのだが。


頭に血が上ったたっくん、イライラがピークに達し、
ついにブチギレて立ち上がる。


しかも、普段は心の中で吐いていた暴言を、
ついうっかり大声で口から吐いてしまう。


「うっさいんじゃぁ!! ボケェッ!
誰がお前みたいなクソガキ、エロい目で見るんじゃ!」


「お前みたいなクソガキはションベン臭くてかなわんのじゃ!
ションベン臭くてかなわんから、はよどっか行けや!」


喧嘩を売って来たバスケ女子、
そのまるで恫喝のような大声のエセ関西弁(?)に
体をビックと反応させて押し黙る。


体育館は静まり返り、ピンと張り詰める緊張の糸。
バスケ少女の顔は青醒め、小刻みに震え怯え出す。




  しまった!
  ついつい口から暴言吐いてしまったやんけ!




尻からでも暴言が吐けるような言いようだが。


それでもバスケ少女、余程気が強いのであろう、
必死になにか言い返そうとする。


「ちげぇーし、臭くなんかねぇーし……
女の子だから臭くなんかねぇーし……
ちゃんとお風呂入って洗ってるし……
臭いとか言うなし……」


恫喝された女の子、ついに泣き出す。


「ひっどい……」
「……最低」
「信じらんないっ……」


当然周りの反応はそうなる。


おっさんが前世で小中学校だった頃であれば、
女子と口喧嘩した際に、親愛の情を込めて、
ブス呼ばわりすることはよくあることだった。


しかし、今このご時世でそれをやったら
大問題になること間違いなしの炎上案件。




たっくん(おっさん)、視線が痛い。
体育館の全員の視線が突き刺さり、
肌がヒリヒリするような空気感。


「みんな、ちょっと待ってくれ」


普段は大人しくて無口なヨシくんが、
窮地を見るに見かねて、
たっくんを擁護しようとする。


「そもそも、こいつが女子中学生を
そんなエロい目で見るわけないんだ」




  ヨシくん!
  さすがや!さすがワイの親友や!
  ありがとうやで!
  頼りになるわぁ!




「なぜなら、こいつは熟女好きなんだからっ!!」


ヨシくん渾身の叫びが体育館にこだまする。




  は? ヨシくん?
  え? ちょ、ちょっと?


  なんでや! なんでなんや!
  なんでワイが熟女好きになるんやっ!




ヨシくん、少年野球チーム時代からずっと
たっくんはおかあやんが好きなのではなく
熟女好きだと勘違いしていた模様。


静まり返っていた体育館がざわざわする。


「えぇ……」
「あぁ、はいはい(察し」
「熟女好きとかウケるんですけど」
「熟女好きなら仕方ない……」


同級生のヒソヒソ話がかすかに聞こえる。




  このまま誤解されるわけにはいかん
  ワイは熟女が好きなんじゃないんや




「ワイが、ワイが好きなんはおかあやんだけやぁーーー!!」


おっさん渾身の、心の叫び。
しかし、これもついうっかり口から吐いてしまう。


ざわざわを通り越して、
一同ドン引き、全員しばらく石化。


「えぇ……」
「ガチな人なんじゃね?」
「キモイ、キモイ……」
「無理無理無理無理」


ようやく石化解除されてもこのリアクション。
熟女好きよりも扱いが酷い。


熟女好きには賛同出来ても、
マザコンには賛同出来ないということなのか、
気持ち悪い指数がマザコンのほうが
高いからなのかはわからない。




  あぁ、あかん、あかんわ
  ワイの中学校生活終わったわ




この頃からおっさんの心の声が、
口に出てしまうことが多くなっていく。
たっくの肉体が成人男性に近づくに連れ
中のおっさんとの同一化が進んで行っているのもしれない。


いずれにしてもたっくん、中学入学早々
『マザコンマスター』の称号を手に入れ、
中学三年間『マミー』というあだ名で呼ばれるのだった。











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