おっさんが転生したら、寝取られた元嫁と寝取った間男の息子だった件

ウロノロムロ

幼稚園なんて行きとうないんじゃぁ!(甘え

それなりにしゃべるようになり、
歩けるようにもなったたっくん。


どんな子かと言われれば、
とにかくおかあやんの後を
ずっとついて回るような子だった。


幼児はまだまだ甘えたい時期なので
そういう子ももちろん少なくはないが、
たっくんの場合は中身があれなので、
ちょっと意味合いが違うかもしれない。


おかあやんが朝早く起きて
おとうやんのお弁当をつくるところからはじまり、
家の掃除、お風呂掃除やトイレ掃除をしている時も、
洗濯して洗濯物を干している時も、
休憩してテレビを見ている時も、
夕飯の買出しや支度をしている時も、
朝から晩までおかあやんの後をついて回って
そばを離れようとはしなかった。


おかあやんも大概たっくんには激甘げきあま
絶賛溺愛中なので、もちろん嬉しかったが、
まぁそれでも家事の邪魔になってしまうことは多々ある。




お風呂場の浴槽を洗っているおかあやん。
たっくんは脱衣所から
じっとおかあやんを見つめている。


「たっくん、そこでじっと
そんなんしてて面白いん?」


「うん、おもろいで」


別に中のおっさんも面白いわけではなかったが、
おかあやんとずっと一緒にいたいから、そう答えていた。


「どこが面白いのぉ?
こんなん掃除してるだけなのに」


おかあやんが不思議がるのも無理はない。


-


「おかあやん、ちょっと忙しいから、
ここでテレビでも見ててくれん?」


おかあやんがそう言って見せようとするのは
某国営放送が毎朝放送している幼児向け長寿番組。
仕方がないので、しばらくは
たっくんも大人しく見ているのだが。




  この番組って
  前世でワイが小さかった頃からやってへんか?
  人生二周目の幼児期でも見ることになるとか
  どんだけ長寿番組やねん
  全国民が小さい頃に必ず見る番組なんやないか?




小さい頃見ていたアニメを大人になってから見て、
それはそれでたまには面白いと思うような感覚のおっさん。


番組中のダンスコーナーで、
お兄さんお姉さんが踊っている姿を見てふと思う。




  ワイも転生してから
  将来のこととか考えたこともなかったけど


  幼児期の取組みが大事らしいしな
  今の内から練習したら
  この人らみたいなダンサーになれたりするんやろか?


  ワイもダンスの才能あるか
  ちょっと踊ってみたろ




テレビのダンスを見ながら、
真似して踊ってみるたっくん。
それを風呂掃除を終えたおかあやんが目撃。


「たっくん、踊ってるわ!」
「やーん、かわいいー!」
「なんだかんだ、やっぱり子供やねー」


この日からしばらく、たっくんは
毎朝たいして見たくもない幼児番組を見させらて、
毎回踊ることをソフトに強要されることになる。


「ほらほら、たっくんの好きなやつやっとるで」




  いやワイ別に好きなわけではないんやで
  おかあやんがそう言うなら踊るけどもや




「上手!上手!」
「ホンマあんたはこの番組好っきやなぁ」


-


おかあやんが掃除に戻ると
おっさんはテレビのチャンネルをワイドショーに合わせる。




  まぁ、やっぱりワイはこっちのほうがええかなぁ……


  世の中、ホンマ世知辛いことばっかりやなぁ……


  あかん、可哀想過ぎてよう見てられんわ……


  なんで、世の中はこんなに絶望が溢れてるんや……


  あかん、ワイ無性に悲しくなって来てしもうた……
  ワイ、寂しいで、せつないで……


  やっぱりワイにはおかあやんの愛が必要や……
  ワイの世界には愛が必要なんや……


  おかあやーーーん!




結局最後はテレビを放り出して、
おかあやんの元にかけて行くたっくん。


「なんや、あんたもうテレビ飽きたんか? はやない?」


いい年をしたおっさんが中の人であるにも関わらず、
思考プロセスが違うだけで、
結果として現れる行動は普通の幼児とまったく大差がない、
とっても残念なことになっていた。


おっさんを擁護するならば、
中のおっさんがたっくんの肉体に影響しているように、
たっくんの肉体もまた
おっさんの精神に影響を及ぼしているのかもしれない。


もっと簡単に言ってしまえば、
幼児の外見を利用して、甘えたいだけ
甘えまくっているということなのだが、
それを言ってしまっては身も蓋もない。


-


こんな調子であるから、たっくんは
幼稚園などには絶対行こうとしなかった。


早い子であれば、三歳ぐらいから
幼稚園なり保育園なりに
通っている子もいると言うのに。


おかあやんの口から
幼稚園の話が出ると、即答でお断り。


「あのなぁ、たっくん、幼稚園なんやけど…」


「いきたくない。
ようちえん なんか ぜったいに いきたくないわ」


一度無理矢理幼稚園に
連れて行こうとしたことがあったが、
その時はたっくん頑として
梃子てこでも動こうとはしなかった。
中のおっさん、意外に頑固だったりもする。


おかあやんはそんなたっくんが心配でならない。


幼稚園で友達をつくったり、人間関係を学んで
共同生活やコミュニティというもの知ったり、
礼儀やルールを学ぶ、そういう経験が出来る場として
幼稚園に行って欲しいと、
おかあやんはそれなりに思っていた。


もし中身がおっさんだとおかあやんが知っていたら、
そんな心配は微塵みじんもしなくて済んだだろう。
なにせ前世のおっさん、
コミュりょくの塊のような人だったのだから。




  見下みくだしてるわけでも
  馬鹿にしてるわけでもないんやけどな


  さすがに、人生二周目のワイがやで
  まだ生まれて数年しか経っとらん
  まだ自我もないような子らと
  一緒になって幼稚園で遊べるわけないやん?


  そんなん行っても、何の為にもならんし
  なんの得にもならんし、時間の無駄やん?
  まったくもって生産性ちゅうもんがないわぁ




毎日毎日一日中、
おかあやんの尻を追い回していることの
一体どこに生産性があるのか、
問い詰めてみたいところではある。




「ワイは おかあやんと 
いつも ずっと ずっと いっしょに いたいんや」


たっくんのこの言葉は
おかあやんへの殺し文句にも等しい。


生まれてから、いや生まれる前から、
ずっと毎日二十四時間一緒にいた
可愛くて可愛くて仕方がない我が子。


それほど溺愛する息子とこれから毎日、
半日ほど離れて暮らさなくてはならなくなる。


そして、幼稚園に行きはじめたら
ずっと毎日二十四時間一緒にいた生活環境に
この先一生戻ることはない。


おかあやんにもその寂しさはもちろんある。


毎回いつもたっくんのこの一言で
幼稚園の話は断ち切れになっていた。




  おかあやん、いやお嫁ちゃん、
  そんな顔せんといてえな


  ワイ、ある日突然死んでしまったやんか


  あんな突然死んでまうなら、
  もっといっぱい
  お嫁ちゃんと一緒にいればよかったって
  ずっと思ってたんやで


  人間なんていつ死んでまうかわからんから
  今はずっとずっと一緒にいたいんやで




さすがに一度死んだことがある人の言葉は重みが違う。


-


それでもどうしても一度でいいから幼稚園に行ってくれと、
涙ながらにおかあやんに頼まれてたっくんの中のおっさん。
さすがに泣かれてしまっては、無下に断れない。




  ワイ、お嫁ちゃんの涙には弱いからなぁ


  まぁ、要するにあれやろ
  ワイが幼稚園なんぞで学ばなくても
  きちんと社会生活が送れるっちゅうところを
  ビシッと見せたればええんやろ?


  あぁ、もうこれは幼稚園児なんかとレベルが違うわぁ
  そう納得してもらえばええんやろ?


  よっしゃ!ワイはやるで




そう意気込んで幼稚園の体験に臨んだ
たっくんの中のおっさん。


颯爽さっそうと幼稚園に乗り込むと
いきなり園児たちを仕切りまくって、
コミュりょくとリーダーシップをアピール。


歌も大声出しまくり、
お遊戯も元気に飛び跳ねまくって、
いいのか悪いのかやたらに目立ちまくる。


調子乗り過ぎて、最後は忘年会の
宴会部長みたいなことになっていた。


「まぁ、元気なお子さんねぇ」
「随分、楽しそうねぇ」


他のお母さんの言葉に、
少し恥ずかしくて顔を赤らめるおかあやん。


おっさんの意気込みが強過ぎたのか、
幼稚園体験はやり過ぎ感が漂いまくってしまった。


「あんた、ホンマに幼稚園 いやなん?」


あまりの豹変ぶりに
おかあやんも疑惑の目を向けずにいられない。


当のおっさんはおそらく
随分文句たらたらであろうと思われたが、
意外なことに、存外楽しかったらしい。




  まぁ、まぁ、たまにやから
  こうやって童心に返って遊ぶのが楽しいであって
  ワイも毎日こんなことやってられへんわ


  これまでストレスとか溜まとったから
  頭空っぽにして遊ぶっていうんが
  ストレス発散にちょうどよかっただけやから(震え  




「あんた、ホンマは幼稚園楽しかったんやろ? 
行ったほうがええで」


むしろおかあやんに
付け入る隙を与えてしまったおっさんであった。


-


そしてもうひとつ、
おかあやんには悩みの種があった。


たっくんは、もうすでに四歳、そしてもうじき五歳。
それなのにまだおっぱいを飲んでおり、
おかあやんはそのことを少し気に病んでいた。









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