おっさんが転生したら、寝取られた元嫁と寝取った間男の息子だった件

ウロノロムロ

やらせはせんっ!やらせはせんぞっ!(直球

その日は朝からおかあやんの機嫌が良かった。
妙に明るくて、声もいつもよりつやっぽく聞こえる。


おとうやんもなぜか機嫌が良い。


「それじゃ、いってくるからな(はあと」


「気をつけて行って来てね(はあと」


そんな夫婦の日常会話ですらも、
何やら睦言むつごとのように聞こえてしまう。




  なんや、お嫁ちゃん
  今日はやけに上機嫌やんけ
  なんかええことでもあったんかな




赤ちゃんの中のおっさんも、
最初はそんな程度にしか思っていなかった。




「フン、フフン~」


おかあやんが機嫌良く、
ベランダで洗濯物を干しながら
鼻歌を歌っているのが、
おっさんの耳にも聴こえて来る。


そのハミングにどこか聞き覚えがあるおっさん。




  その鼻歌、前世でもよくお嫁ちゃん歌っとったなぁ~
  お嫁ちゃんが嬉しそうで、ワイも嬉しいわ
  何があったんかなぁ~


  ……


  その鼻歌って
  もしかして、あれちゃうか?


  ワイと激しく愛し合った次の日の朝
  毎回必ず歌ってたやつちゃうか?


  ……


  やったんかっ!?
  やってもうたんかっ!?


  しもうたっ!
  ワイ、昨夜ゆうべは熟睡してしもうたがなっ!




まぁこうやって赤ちゃんが生まれている以上、
夫婦間における夜の営みは当然あってしかるべきだろう。


それを否定してしまうと、
おっさん赤ちゃんは
コウノトリが運んで来たわけでもないし、
キャベツから生まれたわけでもないし、
そもそもこの転生は精子からはじまっているじゃないかと
ツッコミを入れざるを得ない。


おっさんもそれはわかっていた。


そして、お嫁ちゃんの子供として生まれた以上、
もう二度とお嫁ちゃんと男女の恋愛関係やら
性的な関係やらになることは出来ないということも。
そんなことになろうものなら、昼ドラも真っ青、
それこそアダルトビデオ並みの展開になってしまう。


だが、お嫁ちゃんに対する色欲、
肉欲の未練をまだ完全には断ち切れていないおっさん。


わかってはいてもなんだか
胸がキュンキュンせつなくなる。


嫉妬の炎がメラメラと燃え上がり、
気持ちの暴走を止めることが出来ない。




  ぬ、ぬぉぉぉぉぉおっ!


  ぐっ、ぐぉぉぉぉぉおっ!




ここまでストレスが溜まっていたこともあってか
赤ちゃんの中のおっさん、ついに爆発してしまう。




  やらせはせんっ! やらせはせんぞっ!




なんとも直球な決意表明ではあるが、
その日からおっさん赤ちゃんによる
夫婦性活を阻止すべく妨害活動がはじまった。


-


その日の晩もおっさんが気づくと
何やらおかあやんのなまめかしい声が聞こえて来る。




  ん? まさか……


  もしかして今日もか? 今晩もなんか? 連日なんか?


  自分ら随分と元気やな
  ようそんな毎晩する気になるもんやな


  ……


  よっしゃっ!
  泣いたろっ!!




「おぎゃぁぁぁぁぁ! おぎゃぁぁぁぁぁ!」


おっさん、赤ちゃんの姿を借りて力の限り泣き叫ぶと、
泣き声を聞きつけたおかあやんが、
愛しい我が子の様子を見に全裸で素っ飛んで来る。


そこはさすがにおかあやんも赤ちゃんが最優先。
欲しくて欲しくて仕方なくて、
ようやく授かった大事な赤ちゃんだけに、
他の何をさておいてもまずは赤ちゃん。


いくら家の中で他に誰も見ていないとは言え、
服ぐらいはすぐに着て欲しいところではあるが、
そういう部分がおかあやんの
ゆるくて大雑把なところなのかもしれない。


もしかしたらこの後、夫婦の夜の営み、
その継戦を見据えているのであろうか。




「おぉ~よちよち、どないしたんや?
お腹空いたんか? それともオムツ替えて欲しいんか?」


おかあやんは赤ちゃんを抱っこして小刻みに体を揺らしてあやす。




  え~ん、お嫁ちゃん
  ワイせつないんじゃ、寂しいんじゃ
  胸がキュンキュン痛いんじゃぁ




赤ちゃんがすぐに泣き止みそうもないので、
ようやくパジャマを着て、オムツを替えるおかあやん。




「どんな様子だ? 大丈夫か?」


赤ちゃんをあやすおかあやんの元に
全裸のおとうやんがやって来る。
こちらはその姿からして完全に継戦を望んでいる模様。


おかあやんは授乳したり、あやしたりするが
赤ちゃんは一向に泣き止む気配がない。


-


そんな状況で、もう小一時間が経とうというのに、
おっさん赤ちゃんはまだ泣き続けている。


夜戦の続きを期待していたおとうやんは
ここまでずっと全裸で待機。
これぞまさしく真の全裸待機と言えるだろう。
性的な意味で。




しかし夜も更ける一方、
おとうやんもついに生あくびなどが出はじめる。


「俺、もう寝るかな、
明日も仕事で朝早いしな……」


ついにおとうやんは継戦を諦めて一時撤退を示唆。


「そうしたほうがええわ、
この子まだしばらく寝そうにないわ」


おかあやんはもうとっくにそれどころではない、
赤ちゃんの夜泣きの対処でいっぱいいっぱい。




寝ると言いつつも何やらムズムズがおさまらないおとうやん、
まだワンチャンあるのではないかと思って未練タラタラ。


「寝るよ?」


布団に戻るフリをしながら、
おかあやんをチラチラ見ているおとうやん。


「本当に寝るよ??」


さもひとり言を言っているかのようだが、
おかあやんに聞こえるぐらいの声量である。


「寝ちゃおうかなぁ……」


「もうっ!今日は無理やから、
あんたもはよう寝なさいっ!
明日もまた仕事なんやろっ!?」


おかあやんに怒られてしゅんとして
がっくりうな垂れるおとうやん、
仕方がないので布団を被って寝ることに。




おっさんが気がついた時には
おとうやんは既にガーガーいびきをかいて寝ており、
おかあやんもベビーベッドの横で
つっぷして眠ってしまっている。




  や、やったでっ!
  勝ったでっ! ワイは勝利したんやっ!
  ワイは勝利をこの手に掴んだんやっ!!




まるで甲子園出場が決まった高校球児のように
さわやかに勝利に感動して酔いしれているおっさんだが、
やっていることはゲスいことこの上ない。
とは言えおっさん、ついにおとうやんに一矢報いる初勝利をあげた。


-


そして次の晩もおとうやんとおかあやんは不穏な動きを見せる。




  ま、まさか


  今晩も開戦ムードなんか?
  合体チャレンジする気なんか?  


  自分ら若いなっ、若過ぎへんかっ?
  我慢とか出来んのか?


  自分ら十代か!?


  いや、十代がこんなやりまくったら
  道義的にあかんがなっ


  自分ら二十代か!?




そこを言い直す必要があったのかわからないが、
意外に古い考え方の持ち主であるおっさん。


生まれたばかりの息子に
若いと言われる親もいかがなものであろうか。




おっさんが知らないのも無理のないことだが、
おっさんが前世で急死した後、
二人は一応喪に服してそれなりに自粛してはいた。


喪が明けてからすぐに結婚したが、
それもその後おかあやんがすぐに妊娠してしまったため、
夫婦の夜の営みもほとんどなく、
男盛りのおとうやんとしては
これからがまさにこの世の春になるはずだったのだが。


「おぎゃぁぁぁぁぁ! おぎゃぁぁぁぁぁ!」


しかしながらおっさんの無慈悲な泣き声により
おとうやんの春の訪れはまた先送りにされることになる。


おっさんからすればまさかの連勝。


-


しかしおとうやんの飽くなき合体へのチャレンジは終わらない。
連日連夜、おかあやんに開戦を迫り、
その都度無慈悲な赤ちゃんの泣き声を聞くことに。




  自分らホンマ好っきやなぁ?
  ちょっと好き過ぎなんと違うんかいっ?
  自分ら、ケモノか? スキモノか?




そんな男同士の熱い攻防戦が毎日繰り返されていたが、
その戦いに完全に巻き込まれているおかあやんは、
赤ちゃんの夜泣きがひどいと思い込んでいた。


「この子、なんでこんなに夜泣きがひどいんやろか……
どこか体調でも悪いと違うんかしら……」


「そうだな、一度健診の時に
相談したほうがいいんじゃないかな?」




  ワイが毎晩夜泣きするんわ


  自分らが毎晩やろうとするからやろっ!













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