おっさんが転生したら、寝取られた元嫁と寝取った間男の息子だった件

ウロノロムロ

控えめに言っても、これ、ただの地獄やろ(白目

「おぎゃぁぁぁぁぁ! おぎゃぁぁぁぁぁ!」


病院を退院する際、
おとうやんに抱っこされ、
あやされていたおっさん赤ちゃん。
しかし赤ちゃんは逆に泣き出してしまう。


今のおとうやんの正体が、
お嫁ちゃんを寝取った
間男だと知ったおっさんが
錯乱気味に興奮していたためだ。




  あかんっ!あかんっ!
  ありえへんっ!


  ワイは認めんぞっ!
  絶対認めんぞっ!
  お前がおとうやんなんて!




赤ちゃんの泣き声を聞いて飛んで走って来る
元お嫁ちゃんである現在のおかあやん。




「もうっ、何やってるの?
赤ちゃんが泣かないように
見といてって言ったのに……」


おかあやんはおとうやんから
赤ちゃんを受け取り、体を揺らしながらあやす。




  えーん、お嫁ちゃ~ん
  コイツがワイのこといじめよるんや
  幼児虐待やでぇ、幼児虐待ぃ〜




いやいや、そんなことはない。
父親が自分の子供を抱っこしただけで幼児虐待なら、
この世は幼児虐待の逮捕者で溢れかえってしまう。




  べーだっ!
  誰がお前なんぞに
  なついてやるもんかっ!


  ばーか! ばーか!
  うんこたれー




おっさん、おとうやんに
敵意をむき出しにはしているが、
ショックで錯乱して
幼児退行でも起こしているのか、
語彙力ゼロの子供のような悪口を
心の中でひたすら連呼している。
まぁ、体は新生児なので、
中身が幼児でも問題はないのだが。




  ばーか! ばーか!
  お前の母さんデベソー!
  お前の嫁ちゃんヘッポコピー!


  あかんがなっ!


  いつの間にか、お嫁ちゃんの悪口になっとるやんけっ!




  なんや、関係が複雑過ぎて
  ワイ、目まいがしてきそうやわ




おっさんの立場からすれば、
確かに複雑なことこの上ない。


前世の嫁が今の母親で、
前世でおっさんから嫁を奪った間男が今の父親、
そして自分はその二人の息子、
そんな立場に置かれた人もそうそういないだろう。


-


おかあやんに抱っこされて、
病院まで迎えに来たおとうやんの
車に乗るおっさん赤ちゃん。


何も知らないおとうやんからすれば
可愛い我が子でしかないのだが、
おっさんからすれば憎っき仇敵であるため、
すっかり警戒モードに入ってしまっている。


おかあやんに抱っこされているとは言え、
赤ちゃんの体では何が起こっても
抵抗することすら出来ないため、
まったく落ち着かない赤ちゃんの中のおっさん。
若干びびっているとも言える。




  クッソ、
  ワイを一体どこへ連れて行く気やっ?


  ワイを連れ去ってどうする気や?
  まさかワイに変なことする気ちゃうやろな?




いや、単に家に帰るだけなのだが。


ただその家というのが、
おっさんのまったく知らない家なのだから、
どこか新しい環境に連れて行かれてしまうと
感じてしまうのも仕方ない。




  あれか? あれなんか?
  腹いせにワイに報復とかする気なんか?


  なんでやねんっ!


  どっちかと言うたら、
  ワイのほうが被害者やないかいっ!
  なんでワイが報復されなあかんねんっ!
  ワイのほうが報復したいぐらいやわっ!


  しかしホンマ
  ワイ、拉致されてる感が半端ないんやけど


  普通の子供だったら、
  お父さんお母さん助けてーっ!
  と叫んでるとこやで




そのお父さんお母さんが
今一緒にいる二人なのだが。
その認識もすぐに受入れられるようなものでもない。


生まれた赤ちゃんを両親が
病院から家に連れて帰るのを
拉致と呼ぶのは斬新にも程があると思うのだが、
いかがなものであろうか。


こうなると前世の記憶やら自我やらは、
この段階では単なる邪魔にしかならない。


-


「ほら、おうちに着いたわよ」


おかあやんはそう呼びかけるが、
はじめて来るような場所を家だと言われても
おっさん的にはちょっと納得がいかない。


おかあやんのお腹にいた時も、
この家に住んでいたのだろうが
外界に出てからは、はじめてなので
家と言われてもまったくピンと来ない。




「ベビーベット、
置くとこなかったから
仏壇の横に置いておいたぞ」


家の中に入っておとうやんが言った言葉に
おっさんはまたムッとする。




  こいつアホなんかなとずっと思っとったけど、
  ホンマにアホなんか?


  普通そんなとこにベビーベット置くやつおらんやろ?
  むしろ他のもんどかしてでも一番避けるとこやろそこは


  もしかして、ワイのこと知っとって、
  いやがらせにワザとやってるんちゃうか?




  そもそもこの仏壇も
  どうせお前の親族かなんかのなんやろ?




「そういや、これ誰の仏壇なんだっけ?」




  お前も知らんのかい!


  そしたらお嫁ちゃんの親族やろか
  もしかしてお義父とうさんかお義母かあさん亡くなったんやろか?


  そらあかんがな
  お悔やみ言いに行かなあかんな
  お香典も必要やんけ
  こんなことしてる場合ちゃうわ




むしろお悔やみを言われたのはおっさんのほうなのだが。
どうもおっさん自分が一度死んでいるという自覚が足りない。




「それ、前の旦那の仏壇やで」




  これ、ワイの仏壇なんかいっ!




おかあやんの言葉に耳を疑うおっさん。




  なんでここにワイの仏壇あんねん……




  もしかしてあれか?
  ワイ、これから毎日
  ワイの仏壇を眺めて暮らさんとあかんのか?


  罰ゲームにしてもレベル高過ぎやろ


  確かにツライ転生になるとは言われたけど、
  いくらなんでもハードモード過ぎへんか?


  こんなんメンタルやられてまうわ




  そもそもやで
  供養してくれるんわ、ホンマにありがたいんやけどな……


  ようお前らワイの仏壇を新居に置く気になるなあ?
  そんなん毎日眺めて後ろめたさとかないんか?


  お前らあれか? メンタル鋼鉄製なんか?
  どんだけタフなメンタルしとんねん!




  それにやで、未亡人が再婚して、
  前の旦那の仏壇持ってとついだりするもんなんか?


  逆にあれか? いい話風のやつか?
  そういうのも全部ひっくるめて受入れてやるっちゅう、
  男の器のデカさ見せてやるわ的な




「あぁ、そういや、そうだったか」


おかあやんの言葉にも
まったく動じる様子がないおとうやん。
どちらかと言うと深くは考えていないっぽい。


前世でおっさんが倒れた時の対応から
既にお察しではあるが、
おかあやんとおとうやん、この二人、
二人揃って相当なド天然。


揃いも揃って、
大雑把というか雑というか、
細かいことは気にしない適当人間。


決して悪い人間ではないのだが、
どこかネジが外れているところがある。
そういう部分が不貞行為につながったというのもあるだろう。


-


おっさんが呆然としていると、
今度は何やら二人のひそひそ声が聞こえて来る。




  な、なんやっ!
  ワイのことどうするか相談してのか?
  ワイをどうする気なんやっ!




ここまでの流れで、
すっかりびびってしまっているおっさん。
被害妄想はとどまるところをしらない。


おっさんは必死になって
二人のひそひそ話に聞き耳を立てる。




「ダメよ、こんな昼間から……」


「いいじゃないか、仕事休み取ったんだし、
久しぶりに…… ご無沙汰だったし……」


「赤ちゃんがいるじゃないの……」


「大丈夫だって、
どうせ、まだわかりゃしないよ」


「まだ体調もイマイチなのよ……」




  ふぅ、びっくりしたわ……
  なんや、ただの夫婦性活の交渉やないか……
  なんか変なことされるんやないかと冷や冷やしたわ……


  ……


  こんなん、生き地獄やんけっ!!


  これ、転生だなんだと上手いこと言われて
  ワイ、単に生き地獄に落とされただけやろ!


  クソ!
  あのクソボケオカマジジイが!


  ……


  あかんわ、
  こんなんメンタルやられてまうわ


  控えめに言っても、これ、ただの地獄やろ




転生した新生活がメンタル的にハードモード過ぎて
白目をむいている茫然自失のおっさん。


「まぁ、赤ちゃん、よう寝てるわ、
ホンマに可愛らしいわねぇ」


天然なおかあやんは、おっさんの気持ちを知るはずもない。


こうしておっさんの前途多難の
新しい家での新生活が幕を開けるのだった。











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