おっさんが転生したら、寝取られた元嫁と寝取った間男の息子だった件

ウロノロムロ

お前ら、卵ちゃんの気持ち、考えてあげたことあるんか?!(ヤケクソ

オネエゼウスに転生させてもらったものの、
まさかのおたまじゃくしスタートで、
その生存競争の過酷さに愕然とするおっさん(精子)。




ちょうどその頃、別の人間の体内では、
卵達が次の催しに備えスタンバイ、待機中だった。


まったく喋らないおたまじゃくし達と比べて
こちらはなんだかエラくかしましい。


「あーし、
超優秀なDNAの持ち主じゃないと
興味ないしー」


ギャル系の卵は、他の卵達と上から目線で、
おたまじゃくしの品定めの話をしている。


「あんたそんなこと言ってると、
売れ残って廃棄処分にされちゃうわよ?」


「はぁ?あーしは
売れ残ったりなんかしねーし、
こっちから却下してるだけだしー
廃棄処分とか超ウケるんですけどー」


ギャル系卵は超強気だ、
若気の至りだろうか。
人間基準の若さでいけば
当然、生まれる前ぐらいに若い。




そんな卵達が
ガールズトークを繰り広げる中、
気合十分の卵ちゃんがひとりいた、
いや一個と呼ぶべきなのだろうか。


「あたし、このままだと
次こそ追い出されちゃいますわ……
廃棄処分になる前になんとか
立派な受精卵にならないと……」


他の卵達が余裕をかましている中、
この卵ちゃんだけはいたく真剣。


「なんとしてでも
一人前の受精卵になりたいのですわ」


受精卵の段階で一人前とは
相当気が早いと言わざるを得ない。


おたまじゃくし達も大変だったが、
こちらはこちらで
売れ残り卵になってしまうと
すぐにでもここを追い出され
廃棄されてしまうという
過酷な環境で日々を送っている。


この卵ちゃん、
自分が廃棄されないように
次の機会にすべてを賭けていた。


-


この現状をどうしたものかと
おっさんが思案していると
どこぞのニュータイプよろしく
おでこあたりに閃光が走る。
顔を体もまだないのだが。




 次が、いよいよ実戦なんか……?




これはおっさんへの天啓なのか、
オネエゼウスによる転生補正なのか、
もしくは人間になるべく選ばれた
スーパーエリートだけに与えられた
運命を司る能力なのかはわからないが、
ついにその時が来たということらしい。


一世一代の大勝負、その時に備えて、
ウォーミングアップをはじめるおっさん。




前回同様、体内の電気信号が
信号の名の通り赤から青に変わると、
おたまじゃくし達は猛然と
スタートラインを飛び出して行く。


おっさんも負けじと
がむしゃらに突っ込んで行く。


考え得る限りもっとも最悪な
おたまじゃくしからの
転生スタートなのだから、
せめて泳ぐスピードぐらいは
チート性能であってくれよと
願うおっさんだったが、
しかし残念なことに、
本当に残念なスピードでしか泳げない。


あっという間に
他のおたまじゃくし達に追い抜かれ、
すぐにどんどん順位を落して行く。


もはや優勝どころか
完走が出来るかもあやしい。


いやそもそもこのレース、
優勝者以外は全員死あるのみという
十五歳未満閲覧注意の表示を
出さなくてはならないぐらいの
デスゲームなのだが。




 クソ!
 あのクソボケオカマジジイ
 転生いうたら、チート性能があたり前やろ!
 なにをこんな並以下の性能にしてくれてんねん!
 こんなんでどうやって生き残れっちゅうねん!




もはやオネエゼウスを
ディスるというよりは恨み言に近い。


とはいえ、おたまじゃくしの泳ぐ能力が
チート性能などという転生オプションも
いかがなものであろうか。


-


もはやこれまでかとおっさんが思った時、
ゴール付近で飛び跳ねて
ひたすらアピールしている
気合十分な卵ちゃんの姿が見えた。


おっさんのおでこあたりに再び
どこぞのニュータイプよろしく閃光が走る。
しかし、おたまじゃくしのおでこというのは
一体どの辺りなのであろうか。




 あぁ、あれや!
 あれがワイとひとつになってくれる卵ちゃんや!
 間違いあらへん、
 絶対そうに違いないわ!




卵ちゃんの姿を見て
おっさんは運命を感じたのだろうか、
再び必死になって泳ぎ続ける。




しかし、他のおたまじゃくしは
もう卵ちゃんに辿り着く寸前、
どうも見てももう間に合わない。


もはや破れかぶれのおっさん、
やけくそになって大声で叫ぶ。


「ちょっと、待ったぁぁぁぁぁっ!」


おっさんの叫びが
肉壁の洞窟内にこだまする。


すると、
数億のおたまじゃくしが
一斉に立ち止まり、
おっさんを振り返り見た。




 と、止まったやん!
 勢いで止めたんはいいけど
 どうしたもんやろ……




勢いで叫んでみたのはいいものの、
おっさんに何か策があるわけではない。
はてさて、ここからどうしたらよいものか。




 あぁ、じっとこっち見てるわ……


 ……ん?


 こいつら止まったちゅうことは
 ワイの言葉わかるんか?


 そやな……


 よっしゃ!
 ハッタリかましたろ!




「お前ら、それでええんか?
そんなんで本当にええんか?」


この先はもう
ハッタリでもなんでもかまして、
とにかくなんとかするしかない。


転生成功か失敗か、生か死か、
運命の分かれ道。




「卵ちゃんを
誰が一番にモノに出来るか、
早い者勝ちやなんて、
そんなんまるで野蛮人みたいやないか!」


一番原初的な存在に向かって
何を言っているのだろうか、
このおっさんは。


むしろその原初的な性能を
現段階では試されているわけなのだが。




「お前ら、卵ちゃんの気持ち、
ちゃんと考えてあげたことあるんか?!」


数億のおたまじゃくしは
さすが生まれる前の純真無垢な
おたまじゃくしだけあって、
おっさんの叱責を真に受け、自分達が
何かいけないことをしているのではないか、
そんな顔をしてお互いの顔を見つめる。
顔に表情があるわけでもなし、
ただの黒い丸ではあるが。


そもそも、液体的には白いのに、
おたまじゃくしの外見的には黒いので
白い奴なのか黒い奴なのかよくわからない。




いずれにしても
前世で酸いも甘いも噛み締めてきた
おっさんのこすっ辛い戯言を
真に受けるぐらいには無垢ではある。


おっさん的には
前世の経験に基づく処世術こそが
最大のアドバテーシであり、
そのおっさんスキルで
ここはなんとかするしかない。


-


当の本人である卵ちゃんは、
おっさんの言葉に
頬を赤らめて照れていた。


こちらも顔がどこだかわからないし、
どこが頬かもよくわからないが。


「こんな紳士的な殿方には
はじめてお会いしましたわ……」


世知辛い生存競争に
戦々恐々としている卵ちゃんが、
おっさんの優しい言葉に胸を打たれて、
ついその気にさせられてしまった
としても仕方ない。


まぁそれ以前に一体いつ
殿方に会う機会があったのか
聞いてみたいところだが。




調子に乗ったおっさんは
卵ちゃんを口説こうと
必死にアピールを続ける。


「そやで!卵ちゃん!
卵ちゃんにかて、選ぶ権利があるんやで!
好きな人と一緒になってもええんやで!」


そうは言っても、
初対面の数億の男子が
群がっているようなこの状況、
好きな人もクソもあるわけがない。


「決めました……わたし、
わたし、あなたを選びます!」


そうなれば、卵ちゃんに
強烈な印象を残している
おっさんが選ばれても不思議はない。


「卵ちゃん!
おっ、おおきにやでぇっ!」


卵ちゃんのもとに駆け寄る
おたまじゃくの姿をしたおっさん。


「でも、
ちょっとまってや、
ワイに人格があって、
卵ちゃんにも人格があって、
ひとつになったらどないなるんや?


二つの人格がひとつになったら
ワイはワイでなくなるんちゃうんか?
卵ちゃんは卵ちゃんで
なくなってしまうんとちゃうんか?」


しかしもはやそんなことを
言っている場合でもない。
ここで受精に失敗したら
転生そのものがなかったことになり
バッドエンドなのだから、
多少のフュージョンぐらいは
気にするなよ、我慢しとけよという話だ。




「大丈夫です、わたしは、
わたしは、あなたと一緒に、
あなたの中にずっといますから……」


頑張り屋さんで健気な卵ちゃんの
その言葉に涙ぐむおっさん(精子)。


「卵ちゃん!」


なんだか少し
いい話ぽくなっているが、
そんなことは全然ない。
卵子と精子の受精が成功した
というだけの話である。




こうしておっさんは
精子界初、詭弁を弄して
受精を成功させた精子となった。


精子界というのが
どの辺りの界隈なのかは
相変わらずよくわからないが。




本当の意味でようやく
新しい生命いのちとして誕生して、
転生を無事に果たすことになったおっさん。


別人格と融合して転生を果たすという
ちょっとしたアクシデントはあったが。


転生自体はこれで成功したことにはなる。
しかしながら、
このまま流産になる可能性もあるし、
死産になる可能性も、
生まれてすぐに死んでしまうこともあり得る。
このまま無事に外に出られるとは
誰も一言も言ってはいない。


人間にはこの頃の記憶が
まったく残っていないのが普通だが、
実は無事に外の世界に出るのも
なかなか大変なようである。











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