少子高齢化なので、異世界からの移民を認めます

ウロノロムロ

天下取ってやろうとか、思っちゃった?

異世界から移民して来た魔王は、
ベンチャー企業の最終社長面接に来ていた。


異世界の魔王と言っても大勢いるので、
その中の一人ぐらいではあるのだが。


応接室で待たされる魔王は、
最終面接を前に緊張している様子。


  前回面接で、
  人手不足で猫の手も借りたいぐらいだって言ってだけど、
  あれどういう意味やろ?
  ウェアキャット優遇とか、
  そういうことやろか?
  ワイ魔王なんやけど、大丈夫なんかな?


ノックがあって、応接室に社長が入って来た。


「どうも、代表の松崎まつざきです、よろしく」


社長は色黒で肌がテカテカ光っており、
いかにもベンチャー企業の社長らしい、
アグレッシブな肉食系の印象を受ける。


  黒っ! めっちゃ黒いやん!
  ワイも大概たいがい黒いけど、
  こんな黒くてテカテカしてたら、
  絶対下の名前シゲルやん!


何故『猫の手も借りたい』という言葉は知らないのに、
松◯しげるは知っているのか聞いてみたいところではある。


そう言うと社長は、
いきなり手を出し握手を求めて来て、
そこそこの握力で魔王の手を握り、固い握手をかわす。


  初対面なのにめっちゃ力入れるやん
  握力のテストとかそういうことなんか?


「本日はお時間いただきありがとうございます
魔王と申します、よろしくお願いいたします」


「魔王さん?」


「はい」


首を捻って感嘆する社長。


「いいね、素晴らしい、
覇気がある、覚えやすい、最高」


「はぁ、ありがとうございます」


椅子の方を手で差す社長。


「どうぞ、お掛けになって」


  なんかめっちゃ個性の強い人なんやけど
  ベンチャー企業の社長さんてこんな感じなんか?


こうして魔王の最終社長面接ははじまる。


-


「前職は何をされてました?」


「そ、そうですね、
魔王軍を率いて、異世界制覇を狙ってました」


「魔王軍?」


「うん、いいねぇ」


「そ、そうですか」


「いいよ、魔王軍」


「代表で?」


「そ、そうなりますね」


「いいねぇ」


「うちはそういう
独立志向の強い人材求めてるから」


社長は魔王軍をベンチャー企業か何かと勘違いしているのか。
それでも魔王に好印象を受けた様子の社長。
それとももう誰でもいいぐらいに人手が足りていないのか。
猫の手も借りたいぐらいであれば、
そりゃもう魔王でもいいやとはなるだろう。


-


「世界制覇を狙ってた?」


「えぇ、まぁ」


「天下取ってやろうとか、思っちゃった?」


「えぇ、まぁ」


「だよね、だよね」


「……」


「天下取ってやろうみたいな感じで?」


「は、はい」


「うん、うん、いいね」


「やっぱ、そういう、
天下取りたい、みたいな気持ちがね」


「どうせなら、天下取ってやろうか、みたいな、
そういう気持ちが大事だよね」


「うちもこの業界で
トップ取ってやろうみたいな、
そういう気持ちでやってるから」


  なんでこの人同じこと二回言うんやろ
  大事なことなので二度言いました
  みたいなことやろか


-


「面接に来られたということは、
魔王軍、なくなっちゃいました?」


「ええ、力及ばずという感じで」


「OK、OK、大丈夫、大丈夫」


「アメリカなんかじゃ、
経営者は一回会社潰してなんぼみたいなとこあるから。
ほら、若い子達がベンチャービジネス立ちあげるでしょ。
でも最初はみんな経験ないからね、潰しちゃうワケ。
でもね、出資家から何度でもチャンス貰えるんだよね。
やっぱそういうとこ日本と違うよね、
アメリカって感じするよね」


  そういうもんなのやろか、
  でもそう簡単に何度もチャンスないやろ、魔王軍の











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