少子高齢化なので、異世界からの移民を認めます

ウロノロムロ

なんで勝てると思ってたんやろなぁ

「で潰れちゃった原因は?
そういうとこちゃんと分析したりするの大事だから。
やっぱり失敗から学ばないと、次に活かさないと、
そういう姿勢が大事だから」


「勇者軍に敗れまして……」


「勇者軍?
ああ、競合他社に負けちゃった感じか」


「敗因は?
なんだと思ってる?」




「やっぱり、
そもそもの戦力差があったかなと」


「やっぱり中小とかだと、
大きいとこ相手にはなかなかねえ
そう簡単には勝てないよね」




「総勢もこっちの方が少なかったですかね」


「相手に人海戦術でローラー営業とかされるとね、
中小は厳しいよね、やっぱり」




「向こうには新しい武器もありましたね」


「ああ、競合の新しいサービスが強かった感じかぁ」




「神も向こうの味方してましたし」


「バックに強いとこついてたか、
スポンサーもいいのついてたかな」




「団結力も向こうの方がありましたかね」


「小さいとここそ、一致団結しないと
そういう団結力とか大事だから」


  こうやって話してみると、
  そもそも勝てる要素一つもないなぁ
  なんで勝てるとか思ってたんやろな、ワイ


話が噛み合っているのかいないのか、
ちょっとよくわからない状況だが、
それでも組織のトップ同士ということで
それなりに話は上手く進んでいるのだろうか。


-


「ほら、今少子高齢化で
どこも人手足りてないじゃない」


「そうらしいですね」


「景気悪いなんて言われてるけど、
うちは飛ぶ鳥を落とす勢いだから、
もう、いい人いたらどんどん採用したい」


面接も終盤に差し掛かり、
不安に思っていたことを聞いてみる魔王。


「あの自分、異世界出身なんですが、
大丈夫でしょうか?」


「大丈夫、大丈夫、
うちは差別とか一切ないから、
中国の人とかインドの人とかも大勢いるから」


  人種じゃなくて種族が違うんやけど……


「やっぱりね、
これからは世界狙っていかないと、
もっと、世界で戦っていかないと」


-


「いやでも、魔王軍、いいよ、いいと思うよ」


「やっぱり、そういう
人が狙わないようなとこ攻めていかないと」


「うちで勉強して、また魔王軍やり直してよ」


「レッドオーシャンより
ブルーオーシャン狙っていきましょう」


最後は励ますように話をまとめると、
黒光りの社長は最後にまた握手を求めて来たが、
やはりそこそこの握力があった。


魔王の最終面接はこうして無事に終わる。


  なんかようわからんけど、
  エラいアグレッシブな人やったなぁ
  やっぱり組織のトップちゅうんは
  ああいう感じやないとあかんのやろか


  ずっと玉座に座りぱなしで、命令してばかりで
  そういうとこがあかんかったんかなぁ


めちゃめちゃ前のめりでアグレッシブな魔王というのも
そうそうはいないと思うのだが、
それはそれで見てみたい気がしなくもない。


-


翌日、魔王には面接合格の連絡があり、
魔王はベンチャー企業で働くことになる。


そしてこれから
組織経営の在り方を学んでいくのだが、
もちろん移民して来た魔王に
魔王軍再興の機会などはもう二度とない。


そして魔王はまだ気がついていない。
社長はアグレッシブな人で
いかにもやり手風な感じだったが、
そんなに有名でも話題にもなっていないので、
別に華々しく成功している訳でもないということに。











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