少子高齢化なので、異世界からの移民を認めます

ウロノロムロ

う~ん、人間よりよっぽど美味しい

  全然話変わるんだけどさ
  『赤ずきんちゃん』に出て来る狼ってさ
  赤ずきんちゃんとおばあちゃん喰って
  その後、漁師が狼のお腹裂いたら
  中から元気に出て来るじゃん


  それっておかしくね?
  丸飲みで一回も噛まないとか
  さすがにどう考えてもおかしくね?




「ですよね、噛み砕かないとか、
狼優しいなとか俺も思いましたもん」




  絵本とか見る限り、
  下手したら身長自分と大して変わらないじゃん?
  それが二人も生きたまま入ってるって
  中で暴れられたらむしろおなか痛くなるやつじゃん




「だから、やっぱり人狼さんの胃は
どこか異次元とかと繋がってるんですって。
やっぱりフードファイターになるしかないですよ」




  やっぱりか、
  やっぱり俺フォードファイターになるしかないか
  それが俺の天職ってやつだな




-


バイト仲間と酒の席で盛り上がって
そんな話をしていた人狼、
しかし話を真に受けたのか
本当にフードファイターになる。


さすがに人間を一人丸飲み出来るだけの
胃袋の持ち主だけあって、
早喰いのテクニックをちょっと練習しただけで
瞬く間に強いフードファイターになっていく。


出場するコンテンストではすべて毎回優勝を飾り、
日本国内だけでは飽き足らず
フードファイトが盛んな海外へ進出し、
その後は海外での活動の方が多くなる。


人間とは比較にならない規格外の胃袋の持ち主に
人間と人狼のコンテストは分けるべきである、
という議論が起こることにもなっていく。


ただこれはフードファイターに限らず、
他のプロスポーツ全般でもすべて同じことが言え、
例えば、大相撲にフランケンシュタインが参加すれば
おそらくは無双するであろうように
異種族と同じ競技で争うことの是非は
こちらの人間世界で議論の尽きないこととなる。




でこの人狼がその後どうなったかと言えば。


大食いコンテストで毎回お腹一杯食べ、
毎回優勝賞金を貰ってすっかりお金持ちになり、
贅沢な暮らしを送っていたので
すっかりまん丸にプクプクにえてしまう。
肉付きが良過ぎて優しい朗らかな人にしか見えず、
誰がどう見ても人狼の恐ろしさは
まったくもって感じさせない。


アイデンティティーという話で言えば、
『飢えた狼』という言葉があるように
飢えて、いつも腹ペコ、ということこそが
彼等のアイデンティティーの根本であり、
だからこそ人を喰らいそう、怖いと感じるのだ。


彼はその根本を見誤ったため、
人狼でありながら、まん丸に太って優しそう、
しかもモフモフという、
ゆるキャラか癒しキャラのような扱いになり、
キャラ崩壊を起こしてしまっていた。


『飢えた狼』ならぬ『えた狼』では、
笑い話にしかならないのである。


それでもそのキャラも、それはそれで受けが良く、
有名フードファイターということもあって、
テレビの食レポなどによく起用されるようになったので、
ある意味ではイメージチェンジに成功したのかもしれない。


テレビの食レポで、美味しい物を食べた時の決めセリフ、
彼はいつもこのフレーズで決めていた。


「う~ん、人間よりよっぽど美味しい!」











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