史上最凶の通り魔、異世界に転移す

ウロノロムロ

憤る女神

生き残った最後の勇者、
その願いを叶えるシステムの根底を覆し、
願い叶える女神を亡き者にした髑髏は、
自分達を脅やかす存在になると
神々からも認識されていた。


案の定、経緯はどうであれ、
神々への信仰を薄れさせ、
新たな神として祭り上げられそうになる、
こんな他の命を吸って
生きながらえて来た不浄の者がだ。




暗雲に包まれた世界に
舞い降りて来た『いきどおる女神』、
その手に持つ杖を振り下ろすと、
天からいかずち『神の裁き』が
何度も地上に降り注ぎ、
雷鳴がとどろき響き渡る。


人間の何十倍以上もある女の巨神は、
天空にとどまり『神の裁き』を撒き散らす。


「神々への信仰を忘れし不届き者よ、
己が愚行を死んで後悔するがいい」


慈悲を忘れし無情の神、
その前に人間はあまりにも無力で
定められた運命に身を委ねるしかない。


-


「はんっ、知ったことか」


天を見上げるタケシ、
目をギラギラと見開き、
口角を上げ薄気味悪い笑いを浮かべる。


身体の骨を硬質な外骨格化させ、
それが体を突き破り外に飛び出す、
そして破けた皮膚や肉は
その周りで硬質化を果たす。


骨は銀、肉は黒の二色である髑髏、
その体全体に薄っすらと
赤い血管が浮かび上がり、
究極魔神の姿となる。




タケシは究極魔神になることを
あまり好ましく思っていなかったが、
今回ばかりはそう言ってもいられない。


敵は天変地異を起こすレベルの神で、
この世界の枠組みを、
システムをつくった者達。


-


蝙蝠の羽根を広げ、
神の雷が降り注ぐ暗雲の空を
髑髏は飛翔する。


「貴様が諸悪の根源か」


髑髏を見つけた憤る女神は
神の雷を髑髏に集中させた。


地面すれすれを
高速の超低空飛行で飛び続ける髑髏。
すべてを神の雷で破壊され、
地上には髑髏を遮る物さえない。


暗雲の隙間から
神の雷が地上に落ちるまでの刹那、
それはまさしく光の速さだが、
地上すれすれを低空飛行することで、
雷の落ちる位置を
髑髏はギリギリで見切った。
おそらく髑髏の超感覚能力では
時間の感じ方が異なるのであろう。


神の雷を右に左に避けかわし、
高速の低空飛行で
女神が位置する真下を目指す髑髏。


女神の真下に雷が落ちることはない。


女神の真下に入ると、
そこからほぼ直角に曲がり
超スピードで急上昇して行く。


左右の羽根を最大限に広げ
両翼およそ十メートル前後、
それを超硬質化させた刃に変えて、
真下から女神の体を左右真っ二つに切り裂く。


「グァァァァァァッ」


巨大な女神に対抗すべく
髑髏は自らの体全身を使って
巨大な刃に見立て
女神を一刀両断に叩き斬ったのだ。


それまで鳴止むことのなかった雷鳴が
ピタリと止んで、一転静寂に包まれる。


裂けた女神の体には
髑髏から発せられる
闇のオーラがまとわりつき蝕んで行く。


「やはり、こういうのは好かん」


その拳でとどめを刺すべく、
髑髏は巨大な女神の顔に
渾身の連打を叩き込む。


悪霊が如き闇のオーラに
汚染された憤る女神は、
穢れ神となり聖なる力を維持出来ない。


その大きな体がどんどん小さくなり、
人間と同じぐらいサイズで止まり、
遥か高空より落下、堕ちて逝く。











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