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史上最凶の通り魔、異世界に転移す

ウロノロムロ

月の勇者と日輪の勇者(2)

その日、太陽の光は
この異世界の地上に届かず、
世界が闇に包まれていた。
日輪の勇者、彼以外は。


七人の中で最強と言われている日輪の勇者は、
それに相応しい実力の持ち主でもあった。
その究極奥義はこの異世界の
太陽の恩恵にまで影響を及ぼす。


そもそもがこの世界の
七つの大自然を司る勇者であるのだから、
日輪の勇者が太陽光を
自在に操れても不思議はないし、
それこそが最強と呼ばれる所以でもある。




地上からは視認出来ないような高度で、
上空に浮遊している日輪の勇者。


その頭上には巨大な魔法陣が光り輝いており、
この世界に降り注ぐ筈だった太陽光を
すべてそこに集め、何万倍にも増幅させる。


それはこの世界の大地を
確実に貫いて大穴を開け、
ここが惑星であったならば
星の形状すら変えてしまうかもしれない。
核の熱をも超えるだろうことが想定される
日輪の勇者究極奥義『光の柱』。


魔法はあくまで装置であり、
正体は集約され何万倍にも増幅された
太陽光エネルギーであるから、
魔力キャンセラーを持つ髑髏を
焼き尽くすことが出来る。


そしてこれだけチャージ時間が長く、
この世界に影響の出る大技であるため、
一度しか使えない技であり、
絶対に外すことは許されない。




地上では、月の勇者と木の勇者が
髑髏と戦っている。


上空からでの視認が難しいため、
意思疎通魔法と千里眼魔法を使い
戦況は把握している。


そして、欲深くもある日輪の勇者は、
髑髏と一緒に残り二人も
ここで亡き者にしようと企んでいた。


彼の願いは覇王になることであり、
しかもこの異世界だけではなく
自分が元いた世界も含め、
両世界の王となることを望んでいる、
傲慢さでまさに天上天下唯我独尊。


日輪の勇者からすれば笑いが止まらない。
ここでまとめて皆を殺し、
自分の願いを叶えるのももう目前なのだから。


-


地上で髑髏と戦う、
木の勇者と月の勇者。


木の勇者である岩槻は、その頑丈さと
過去に髑髏と戦い生き残った実績を買われ、
前線の盾となっていた。


月の勇者が髑髏に
瞬殺されるようなことがあれば、
この作戦はすべて無になってしまう。


月の勇者を守り抜くこと、
それこそが木の勇者の、
地上戦での最優先事項となる。




射程圏内で相手の時を止める能力が
魔法ではないことを確認する月の勇者。


以前魔王軍が健在だったころ、
他の魔神に使い倒してた実績はあったが、
髑髏相手に時を止められるのか
試したことはなかったので
今更ながら確認するしかなかった。


そしてその効力が確認された今
勇者側の勝利は間違いないと確信する。


髑髏は月の勇者に向かい、
その拳を放ったが、
月の勇者は時を止め、
その数秒の間にその場から離れる。


これがあれば
木の勇者を盾代わりにする必要も
なかったとすら思う。


髑髏が木の勇者を掴み、
振り回し放り投げた
隙だらけの瞬間、
意思疎通魔法で
日輪の勇者に合図をを送る。


「今だっ!」











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