史上最凶の通り魔、異世界に転移す

ウロノロムロ

月の勇者と日輪の勇者(1)

あっという間に、
四人の勇者を倒され、
残り三人となった勇者達。


だが日輪の勇者も月の勇者も、
こうなることはと最初から予想していたし、
他の勇者を倒す
その手間が省けたぐらいに思っている。


日輪の勇者も月の勇者も
髑髏を倒すための秘策を持っていたが、
しかしそれを実現するには、
大きく欠けている部分があった。


-


月の勇者は目立ちこそしないが、
七人の勇者の中で
最後の一人になる可能性が
最も高い存在であった。
能力をひた隠しにしていたため
他の勇者が気づいていなかっただけで。


それは攻撃力や防御力と言った話ではない。


月の勇者は月の流れを読む、
つまり時を操る特殊能力を持っていた。


自分の射程圏内にいる相手の時間を
数秒の間だけ止める特殊能力。


これは魔法ではなく、
この異世界に転移する時に
女神から貰ったチート能力であり、
特殊能力の扱いになるから
おそらくは髑髏にも効く筈、
月の勇者はそう確信していた。


なんだったらここで時を止めて、
剣でこの場にいる勇者二人の
喉を搔き切って殺し
今すぐ最後の一人の勇者に
なることも出来る、とも思っている。


しかしそれではダメなのだ。
月の勇者には髑髏を倒すだけの攻撃力がない。
月の勇者が持つ攻撃では、
いくら数秒時を止めたところで
とどめを刺すまでには至らない。


それ故、髑髏を倒すには
日輪の勇者が持つ攻撃力、
破壊力が必要だった。


一瞬で髑髏を消し去るだけの高出力、
それはおそらく既に倒された
他の勇者でも無理なことで
日輪の勇者しかいないだろうとも理解している。


そして問題は
自分の能力を日輪の勇者に気づかれないように、
如何に日輪の勇者を利用するかということだった。


-


一方、日輪の勇者も、
核を上回る高出力で
髑髏を焼き尽くす自信がある
究極奥義を持っている。


条件や制約が厳しいため
一体どこで使う機会があるのか
疑問に思っていたが、
まさか使う日が来るとは
本人も思っていなかった。


こちらもやはり魔法ではないため、
髑髏には効く筈という自信もある。


しかしエネルギーチャージに
時間がかかりが過ぎ、
しかも一回しか使えないという代物でもあり、
こちらもやはり月の勇者との共闘を
考えざるを得ない状況であった。


命中補正を掛けたとしても、
もし外せば二度目はないため、
そこで手詰まり、終了となってしまう。
確実に直撃させるために、
出来れば髑髏の動きを止めたい、
とも思っている。


つまり二人が協力しお互いを補い合えば、
確実に髑髏を倒せる方法がある
ということなのだが、
能力を隠し合っている本人達は
そのことに全く気づいていない、
という状況でもあった。


-


日輪の勇者も月の勇者も
岩槻が共闘をしようと言い出すのを
ずっと待っていたが、
こういう時に限って岩槻は言わない。


日輪の勇者も月の勇者も
プライドが高いので
岩槻も気を遣っていたのか。


二人をヤキモキさせた岩槻だが、
それでも結局最後には
共闘を言い出して、
両者もそれに賛成する。


「俺には
髑髏を確実に倒せる究極奥義がある、
時間稼ぎをして、
動きを止めてくれさえすれば、必ず勝てる」


「俺には
髑髏の動きを確実に止める方法がある、
瞬間最大高火力さえあれば、必ず勝てる」











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