史上最凶の通り魔、異世界に転移す

ウロノロムロ

新たな魔王

お互いの攻撃力、防御力が
高度なレベルで拮抗していた両者の、
行き着いた果てはただ殴り合うだけだった。


そこには技も駆け引きもトリックも何もない。
派手に飛ばされることも、
敵の手その先を読むことも、
もはや何もなくなっていた。


お互いが拳を繰り出し
殴り、殴られる、
両者ともに破壊され、再生する、
ただただそれを根気よく続けるだけ。


両者再生阻止能力も持っているため、
再生速度も徐々に落ちていき、
二人は互いに傷だらけとなり、血塗れ。


こうなればお互いに条件はほぼ互角、
後は執念と生命力の勝負であった。


その場に立ち尽くし、
延々と殴り合いが繰り返される。




どれぐらいの時が経過したのか
もうわからない程になった頃、
ついに髑髏の拳が究極魔神の体を貫いた。


腹に風穴を開け、
その場に崩れ落ちる究極魔神。


その姿は人間、
鳴門なると伸介しんすけに戻っていく。


「しまったな、
せっかく永遠の命を手に入れたってのに、
失敗したな……」


「まぁでも、
不治の病でいつ死ぬか怯えてるよりは、
刺激的でマシだったかな……」


もしかしたら究極魔神である鳴門の肉体は
数日経てば、再生するのかもしれない。


しかし彼が動くことはないだろう。


改造された魔神、究極魔神とは言え、
アンデッドではないのだから、
再び動くということはもうない。


肉体は再生されたとしても
そこに鳴門の魂はない。


タケシが奪った命、数十万の怨念同様に
怨念だけを残して行くのかもしれない。


何も言わずにタケシはその場を去って行く。
このような相手にいつまた巡り会えるのか。




こうして、魔王は死に、魔王軍は壊滅、
タケシ以外の改造魔神も一人残らず皆殺しにし、
タケシの目的は果たされた。


これからタケシはどうしていくのか……。


-


木の勇者である岩槻が魔王城に着いた時、
ドラゴンは負傷しており微動だにせず、
その背にある筈の魔王城は崩落していた。


「もう、終わったのか?」


すでに魔王軍は壊滅しており、
完全にすべては終わっていた。


岩槻が瓦礫をよけて
生存者がいないか確認した時、
魔王は首のない状態で
玉座に座ったままであった。


魔王が死んだということは、
勇者同士の戦いが
これからはじまるということでもあり、
岩槻の心中は複雑でもある。




仲間の下に戻って、
そのことを伝える岩槻だったが。


「まずいな、
魔王は勇者が倒さないと、
民衆が勇者の存在に疑問を抱く」


「それに、
勇者が関係なく魔王が倒されたとなると、
願いを叶えるための前提条件が揃わない」


冷静に状況を判断する水の勇者。


「お前が魔王を倒したことにしろよ」


火の勇者の言葉に慌てふためく岩槻。


「今までの魔王は死んだけど、
新しい魔王が出て来たということで、
いいんじゃないか?」


勘の悪い岩槻は、
日輪の勇者の意味がわからない。


「新しい魔王?」


「タケシに決まってるだろ」


岩槻に呆れている日輪の勇者。


「タケシが、新しい魔王?」


「しかし、あんなの倒せるのか?
一人で魔王を倒すような奴だぞ」


火の勇者が言うことにも一理ある。


「攻略法がない訳ではない、
俺はずっと髑髏のデータを集めていたからな、
既に分析は済んでいる」


水の勇者は指で眼鏡を押す。




七人の勇者によって、タケシは
勝手に新しい魔王ということにされる。
そして、それがこれからの
血で血を洗う戦いの幕開けともなる。











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