史上最凶の通り魔、異世界に転移す

ウロノロムロ

数十万の贄

異変を感じた究極魔神は一旦攻撃を止める。
とてつもなく危険な何かを本能的に察知したのだ。


「ふっ、はははっ」


倒れていた髑髏スカル
薄気味悪い笑い声を上げて立ち上がる。


立ち上がった髑髏は、
あまりにまがまが々し過ぎる
負のオーラを身に纏い、
この異世界でも見たことがないような、
異様な闇のオーラを放っている。


まるで数え切れない程の怨霊が、
その身に纏わり付いているかのようにも見える。


これまでに数十万の命を葬って来た髑髏、
いやタケシ。
魔神や魔物、魔獣をはじめ、
その中には普通の人間も多数いる。
ましてここは
アンデッドや悪魔がいる異世界、
死霊や悪霊が取り憑いていたとしても
不思議なことではない。


髑髏とは敵の血を、
命を吸い続けて来た者であり、
その強さは、
そうした数十万の命をにえにして
つくられた強さでもある。


敵の血と能力を吸収する際に、
その怨念も共に取り込んでいたのかもしれない。




タケシの闘争本能、野生が
極限まで研ぎ澄まされ、
生命エネルギーに満ち溢れ、
数十万の怨念すらも吸収し尽くそうとする執念、
そうした条件が
すべて揃ってはじめて誕生した、何か。


魔王や有栖川博士が考えていた
究極魔神とは明らかに違うが、
それに匹敵する何か、
今の髑髏はそんな者になっていた。


強いて言うならば、
数十万の命を吸って誕生した
数十万の怨霊を背負った
怨霊魔神とでも言うべきか。


-


究極魔神である鳴門なると
その姿を見て思わず畏怖の念を抱く。


究極魔神と言っても、
その素体は鳴門なると伸介しんすけと言う
人間である以上、
そうした感情を持つこともあり、
それが限界なのかもしれない。


何故、タケシは究極魔神の最有力候補だったのか?


顔色一つ変えずに
ただただ殺戮を繰り返し続けるタケシ、
それに比べ人間世界で
平穏に面白おかしく暮らすことを願う鳴門。
そこには比べ物にならないぐらいの
歴然とした差がある、素体としての。


究極魔神という最強のドーピングをした鳴門、
髑髏というドーピングをしているタケシ、
どちらが最後まで生き残るのか。


-


髑髏と究極魔神の拳が再び衝突する。
衝突した瞬間に、両者の拳と腕の骨は砕け、
激しい痛みを伴いながら、それを瞬時に再生し、
また殴り合う、まるで無限地獄のような戦い。


「ふっ、はははっ」


相手の拳を腕でブロックして、
ブロックした方の腕も破壊され
殴った方の拳や腕も砕け壊れる
というもはやただの衝突事故。


タケシは敢えて敵の攻撃に合わせ
自らも同じ攻撃を繰り出していく。


それはカウンターと呼べるような代物ではなく、
拳が来れば拳を衝突させ、
足が出れば足をぶつけに行く、
自傷行為にも等しい、
捨て身の作戦のようなもの。
だがタケシにとってはそれこそが望むものだった。


「ふっ、はははははははっ」


タケシは何度も狂気の笑い声を上げる。











コメント

コメントを書く

「現代アクション」の人気作品

書籍化作品