史上最凶の通り魔、異世界に転移す

ウロノロムロ

人造人間八号

子供達が行方不明になった
その怒りの矛先をハチローに向ける村人だったが、
ハチローを私刑リンチしようとしている
その真っ最中に、村の男の子が一人だけ帰って来た。


両親は泣いて喜び、
村人達は他の子がどこにいるのか問い詰めるが、
その子は涙を流しながらガタガタ震えるだけ。
ハチローのことはひとまず放っておかれる。


子供は話が出来る状態ではないので、
一旦家へ連れ帰る両親であったが。


家の前で子供は立ち止まる。


「……父ちゃん、母ちゃん、ごめんよ……
俺村に帰ったらいけないって思ってたんだけど……
俺の帰るところって言ったら、この家しかなくて……」


泣いている子供、
その体内に埋め込まれていた位置式爆弾が
家に着いたと同時に起爆し、大爆発を引きを起こす。


村は光の中に呑み込まれ、
爆炎と共に一瞬で消滅する。


-


ルルの捜索はじめていたハチローは、
山の坂道からその爆発を見ることになる。


ハチローはそれが何かを知っていた。


魔王軍幹部・金狼きんろう導師の部下が、
開発中であった位置式爆弾。
目的地に着いた時に爆発する、
人間社会で言えばGPS機能付の小型爆弾で、
時限式より正確に目的地を破壊することが出来る。


子供達は魔王軍に拉致されて、
その実験に利用されていた。
今回は子供の家が目的地に設定されており、
起爆に際し、位置の誤差が
どれぐらい生じるかを測定するために
爆弾を埋め込まれ、一人だけ村に帰されたのだった。




ハチローには一目で
それが魔王軍の爆弾だと分かった。
何故なら自分もまた
魔王軍幹部・金狼きんろう導師が開発していた
人造人間八号に他ならなかったからだ。


魔王と死神導師が進めていた究極魔神計画は
裏切り者を二人出したため一旦凍結となり、
その代替として金狼きんろう導師が
構想していた人造人間計画が推し進められた。
ハチローはその八番目の試作機ということになる。


この計画は、
異世界の魔術的な人造人間技術と
人間世界の最先端ロボット工学を取り入れた
ハイブリッドな人造人間がコンセプトになっており、
ハチローの体もまた
大半が機械によって構成されている。


八号機は人間の感情を持つ
試験機として設計されたが、
それ故に魔王軍の残虐さに
心を痛めたハチローは逃亡を図り、
村の近くにある森で隠れて過ごしていた。




『ルルが魔王軍に拉致された! ルルが危ない!』


ハチローは怒りと悲しみで咆哮する。


「オオオオオオォォォォォォッ!!」


それに反応するかのように着ていた服は裂け、
継ぎはぎだらけの体表の皮膚を突き破り
クリアボディに覆われた機械の体があらわになる。


普段は臆病で心優しいハチローだが、
怒りの感情に支配され、我を忘れて猛り、
ルル救出へと向かう。











コメント

コメントを書く

「現代アクション」の人気作品

書籍化作品