史上最凶の通り魔、異世界に転移す

ウロノロムロ

憎しみの連鎖(2)

娘の難病、その治療費と引き換えに、
娘の父である男は異世界に渡り、
魔王軍の手先となるべく改造魔神の手術を受ける。


改造魔神となった男は、
配下を率いて街や村を襲い、
人間や亜人の軍勢と戦い、
時には七人の勇者達とも拳を交えた。


そして、改造魔神になっても未だ
娘への深い愛は変わることがない。


洗脳を受けてなお、
魔王軍の非道なやり方に疑問を抱くこともあったが、
自分が命より大切に想っている
娘を助けてくれた大恩人である
魔王と組織を裏切ろうという気にはならなかった。


ただ心残りなのは元気になった
娘の姿を見ることが出来なかったこと。
もし叶うのであれば一目だけでいいから、
もう一度娘の姿を見たい、もう一度だけ。


ずっとそう想い続けていたが、
もし自分が組織を抜けて娘に会いにいったら、
娘は間違いなく組織に消されるであろう。


それが確信出来る程に魔王軍は非情にして非道。


-


そうして何年もの月日が過ぎ去って行き、
組織の裏切り者である魔神・髑髏スカルが、
人間世界に戻り潜伏しているため、
これを捕獲もしくは処分しろという命令を受け、
その任務に就くことになる。


その命令を聞いた時、
魔神となった男は震えた。


人間社会に戻る機会があるのなら、
娘に再会することが出来るのではないか。


『一目だけでいいから、
もう一度娘に会いたい、
もう一度娘に。』




裏切り者への刺客として
人間社会に送り込まれる魔神となった男。


タケシと鳴門なるとの消息を探りつつ、
ついつい娘のことも調べてしまう。


-


そして鳴門の足取りを追跡中、
男はついに街中で成長した娘の姿を見掛ける。


一目見てすぐにそれが娘の成長した姿だとわかった。


人間態であった男は、
街中であるにも関わらず、
涙が溢れて止まらない。


街行く人々はそんな男を不審に思って見ていたが、
むしろそれが幸運な結果へとつながった。


娘も振り返って男の方を見たのだ。


娘もそれがずっと会いたいと思っていた
父だとすぐに気づく。


「おっ、お父さん!」


娘はすぐに父へと向かって駆け出す。


「お父さん! お父さん!」


父との再会を果たし
涙ながらに父に駆け寄る娘。


「おおっ、我が娘よっ……」


男がひたすらに想い続けた
娘との念願の再会。


二人は再会を喜び抱き合う。
二人してその場に膝をつき、
泣きながら抱き合う親子。


娘は父の胸の中に顔を埋める。




目を閉じている娘の耳に、
男の声が聞こえる。


「処刑、完了」


父と抱き合っていた娘が顔を上げると、
父の首から上には何もなかった。
ただ頭が千切れた首から血が噴き出しているだけ。


娘の顔は一瞬で青ざめ、
それも血しぶきですぐに赤く染まる。


目の前が真っ暗になり
何も見えなくなる娘。


『処刑、完了』


遠のいていく意識の中で、
娘の耳にはその言葉だけが残る。


「イヤァァァァァッ!!」


娘の絶叫が街中に響き渡る。













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