史上最凶の通り魔、異世界に転移す

ウロノロムロ

魔神・鳥兜

「この店のみなさんにももれなく
死んでいただかないといけないわね」


席を立ち鳴門を上から見下す女。


「だってそうでしょう?
私の正体を見られたら生かしておく訳にはいかないもの」


女はその身を魔神・鳥兜トリカブトに変え、
無数の硬質触手を伸ばし、
その尖った先端で店内の人間を残らず刺し殺す。


「まだまだ私は人間社会で人間のフリをして生きていきたいのよ。
たまには誰かを殺してしまうかもしれないけどね、うふふ」


身動き出来ずに床を這う鳴門に
にじり寄る魔神・鳥兜トリカブト


「組織もね、裏切り者を始末したら
自由にしていいて言ってくれてるのよ、うふふ」


成す術のない鳴門、万事休す。


-


全面ガラス張りの窓、
その遠くの方に見える飛行物体。


その影は猛スピードでグングンとこちらに近付き、
どんどんと大きく迫って来る。


ガシャァァァァァン!!


窓ガラスを派手にぶち破って入って来たのは、
蝙蝠から吸収した羽根を背中に生やす魔神・髑髏スカル


「こんなところにいたか、探したぞ、鳴門」


タケシは鳴門を殴り倒すため、
執念深くずっと探し回っていたのだ。


身動きが取れず床に転がっている鳴門。


『マズイ、こんな状況で二対一とは』


「あら随分と仲がいいのね、
助けに来るだなんて」


女のその一言にカチンときたタケシ。


「はぁっ? 殺すぞ、お前」


「魔王軍の改造魔神だな、
丁度いい、お前から狩らせてもらおう」




魔神・鳥兜トリカブトは無数の硬質触手を伸ばし、髑髏を貫こうとする。


迫り来る触手を両の腕で払いのけ、
その触手の一本を掴み、
鳥兜トリカブトを本体ごと振り回す。


何回転もスイングした後、
鳥兜トリカブトを大破した窓から外へと放り投げる髑髏。


そして自らもまた窓から飛び降りる。


背中に蝙蝠の羽根を生やし
下へと猛スピードで突進して行くと、
まだ落下途中であった鳥兜トリカブト
胴体をその拳で貫く。


「処刑、完了」


地上に降り立ち、
鳥兜トリカブトの血を吸収する髑髏。


-


髑髏が再び舞い戻って来ると、
鳴門はまだヨロヨロの状態で出口へと向かっていた。


「はんっ、今日のところは見逃してやる」


髑髏はそう言い残すと、蝙蝠の羽根を生やし、
再び超高層ビルが立ち並ぶ夜空の中に消えて行く。


久しぶりに出会った自分と対等に殴り合える存在。
あの貧民街を出てから、
ただそれを探し求めて来たタケシ。


万全ではない鳴門こと赤い髑髏を
今ここで殴り殺すのは本意ではなかった。




『見逃してくれるのは助かったけど、
どうするのよこの惨状』


レストランにいた人間はみな殺し状態。


『ここはまたあいつを利用させてもらうしかないかね』




翌日、新聞の一面見出しにはタケシの文字が躍る。


『生きていたタケシ! 超高層ビルで惨殺!?』













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