史上最凶の通り魔、異世界に転移す

ウロノロムロ

真紅の髑髏

昼間のビジネス街。
スーツを着た男が駐車場へと向かって行く。


「交渉も上手くいったし、次はっと」 


一人ぶつぶつ言いながら歩くスーツの男の前に、
バイクが猛スピードで突っ込んで来る。 


バイクを避けるスーツの男、
そしてバイクは車体を半回転させ
タイヤを滑らせながら止まる。 


バイクに跨る男は、スーツの男を睨みつける。


鳴門なるとっ、まさか
こんなところで会えるとはな」




バイクに跨る男、
タケシは魔王軍の魔神を追い掛け、
人間世界と異世界をつなぐゲートを通り、
こちらの人間世界に戻って来ていた。


「……タ、タケシ!?」


スーツの男はタケシの顔を見て驚く。 


「お宅、まだ生きてたの?
行方不明になったって言ってたけど」


警察に追われていたタケシは、
山道で消息を絶ち、そのまま行方不明、
こちらの世界ではそう報じられていた。


「お前への恨み、晴らさせてもらうぞ」


慌てるスーツの男。


「ちょ、ちょっと待て、
あれは完全なお宅の逆恨みだろっ」


-


スーツの男、名前を鳴門なると伸介しんすけ
若くして有能な弁護士である。


タケシは人間社会で凶悪犯として暴れていた頃、
一度だけ警察に捕まったことがあり、
その時に弁護を担当したのが鳴門であった。


世間から要らぬ注目を浴びてまで、
有罪確定の凶悪犯を弁護しようとする者は誰もおらず、
これをきっかけに名を売ろうとした鳴門が
タケシの弁護を買って出たのだ。


しかしいくら有能な弁護士であっても
史上稀に見る凶悪犯タケシを無罪にすることは出来ず、
法廷で死刑判決を言い渡される。


その後、タケシは脱獄。
自分を捕まえた警察官がいるⅩ県警をバイクで襲撃、
そして魔王軍の死神導師により異世界に拉致された。


だが、タケシは鳴門のことを逆恨みしており、
いつか殺してやろうとずっと思っていた。


-


問答無用で殴り掛かるタケシ。
鳴門がこれをかわすと、
その拳は駐車場の壁を打ち砕き、
二発目はコンクリの柱を大破させる。


「うっ、嘘だろっ!?」


鳴門は驚くが、驚いた理由はその力にではない。


「ま、まさか、お宅もなのか?」


鳴門の言葉にタケシは興味を示す。


「ほうっ、どういうことだ?」


やれやれという顔をする鳴門。


「もう、相変わらず勘が悪いね、お宅。
俺もお宅と同じ力の持ち主ってワケなのよね」


タケシは鼻で笑う。


「魔神か?」


「まぁ、そういうこと」


「なら、なおさら丁度いい。
俺をイライラさせる、
醜い改造魔神は狩るだけだ」


鳴門は頷く。


「あぁ、なるほど、そういうことか、
お宅が噂の裏切り者なわけね」


「……でもまぁ、
俺もお宅と同じでね、魔王軍の裏切り者なワケよ」


「あまりここで戦ってもいいことないワケ。
おわかりいただけるかな?」 


宿敵に再会し興奮しているタケシ。


「だからどうした?
俺は改造魔神を狩るだけだっ、
お前には恨みもあるしな」 


タケシはその肉体を銀色の魔神へと変化させる。


「相変わらず、問答無用なのねっ」 


鳴門の肉体もまた変化をはじめる。


「俺もせっかく叶えた願いだからね、
このまま黙ってやられるわけにはいかないんだよね」 


鳴門が魔神化したその姿は、
髑髏スカルと全く同じ外見。
ただ色だけは全身が真紅に染まっている。


タケシが銀の髑髏に対し、
鳴門は全身が真っ赤な髑髏。




「よりにもよって同タイプがお宅とはね」


赤い髑髏は銀色の髑髏の姿を見てそう言った。 
タケシもまた驚いていた。
まさか自分と同じ髑髏タイプが
他にも存在するとは思っていなかったのだ。 


「少しは俺を楽しませてくれそうだなっ」


だがタケシの闘争本能、野性は
相手を見て余計に刺激されていたのだった。 











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