史上最凶の通り魔、異世界に転移す

ウロノロムロ

魔神・蝙蝠(1)

人気のない林間、
そこにひっそりと建つ廃墟と化した教会。 


教会の祭壇、
十字架の前に椅子を置き、座る一人の男。 
美しいブロンドの髪、整った顔立ち、
マントを羽織るその男、 
その傍らには全裸で首輪に繋がれた美女
十数人が侍っている。
 

「伯爵様、伯爵様、
どうか、どうか、私にご寵愛をっ、」 


「いいえっ、私にこそご寵愛をっ、」 


女達は潤んだ瞳で体を火照らせ、
伯爵と呼ばれる男に懇願する。 


「私の寵愛が欲しくば、私に尽くすのだ、
精神誠意心を込めてな」 


美女達の奉仕を受ける伯爵と呼ばれる男。 


「私は美しい女しか愛さない、
お前達は私に選ばれし美しい女達なのだ」 


「はいっ……伯爵様のお傍にいれて嬉しゅうございます」 


「ならばその気持ちを私に伝えるのだ、
言葉ではなくその美しい体でな」 


「はいっ……」


全裸の美女達の奉仕はますます熱くなっていく。 
興奮し昂ぶって来た伯爵は、
一人の女を乱暴に自らの膝の上に乗せ、
後ろから羽交い絞めにする。 


「あぁっ!」


伯爵はその口元に牙を光らせ、女の首元に噛み付く。 


「あぁぁぁっ!!」


女の柔肌に深く食い込む伯爵の鋭利な牙。
女は喘ぎ声と共に昇天する。 


「どうか、私にも、私にも、ご寵愛をっ」 


女達はそう口走りながら
次々と伯爵と呼ばれる男を求める。 
彼はヴァンパイア伯爵を自称する男。 


「魔王には感謝せねばなるまいな。
この美しい姿を私に与え、
力を与えてくれたのだからな」 


伯爵はそう呟くと、女達との酒池肉林、
悦楽の宴を楽しむのであった。 


-


父をタケシに殺された緑川ルイ。


敬愛する父を失い悲しみに暮れるルイだが、 
タケシの言葉が心の何処かに引っかかり、
気になっていた。 
まさか父がそんなことをしていた筈がない、
ルイはそう信じたかったが、 父に不審な行動が多く、
父の行動に疑問を抱いていたのもまた事実であった。
 

ルイは思い立って再び父の研究室を訪れることにする。 


父が殺されたあの忌まわしい研究室を
出来れば再び訪れたくはなかったが、 
父の潔白を証明したいという衝動には
ルイ自身勝てなかった。 


研究室で山のような研究資料を
引っくり返して調べるルイ。 
時が立つのを忘れ、夢中に研究資料に目を通す。 


どれぐらいの時間が経ったであろうか、
外はすっかり夜の深い闇に覆われてしまっていた。 
だが父の研究資料の中に
それらしいものは一切見当たらなかった。
ホッと胸を撫で下ろすルイ。 


部屋を出ようとして立ち上がるが、
目眩がして傍らの本棚に寄りかかる。 
すると本棚が動き、奥へと通じる通路が現れた。 
ルイは自分が全く知らなかった
研究所の構造に驚きながらも、
その通路へと入って行く。


その先には父の秘密の隠し部屋が存在していた。
秘密の部屋の研究資料に目を通すルイ。 
そこには父が研究していた
改造魔神の資料が無数に存った。 


「そんなっ!!」


ルイはその研究資料を見て愕然とする。 


タケシの言っていたことは本当だったのか? 
父が改造魔神を生み出し、
タケシを改造魔神にしたというのか? 


ルイは茫然としてその場に座り込む。 


放心状態で元の部屋に戻って来るルイ。 


その時、深く暗い闇の中から現れる一人の男の姿。 
それは魔王の命を受け、
博士の研究資料を探しに来た
ヴァンパイア伯爵であった。
 

最早驚くだけの気力すら失っているルイ。


「ほう、これはまた美しい女だな」 


「任務の途中でいい拾いものをしたものだな」 


ヴァンパイア伯爵は、
自失茫然とするルイを連れ去って行く。
ルイを自分の性の奴隷とする為に。 


ルイを抱きかかえ、ヴァンパイア伯爵は
無限に闇が広がる夜の空へと消えて行く。











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