史上最凶の通り魔、異世界に転移す

ウロノロムロ

魔神・蟷螂(1)

その事件は、異世界ではない人間世界からはじまる。


夜の繁華街、暗い裏路地を歩いている一人の女性。 
そこへ一台のバンが猛スピードで突っ込んで来る。


キィキィィィッ!!


バンは女の横で急ブレーキで止まる。
その音に驚く振り返る女。 


バンからは、ドアを開けて
数人の男が勢い良く飛び降りて来る。 
男達は女を抑えつけ、
口を塞ぎ、バンの中へ放り込む。 


バンは再び猛スピードでその場を立ち去る。 
謎の男達に拉致され、連れ去られた女性、
その目撃者は誰ひとりとしていなかった。 


-


とある中華料理店、
中に客はおらずただ一人、
ある男だけが座っている。 
その男は目の前に並べられた
大皿の中華料理を食べ散らかす。 


男の周囲にはボディガードなのか、
お付の男達が数名立っている。 
その店はその男がオーナーであり、
そこはその男の隠れ家でもあった。 


その中華料理店の部屋に
十数人の女達が連れて来られる。 
女達はみな手に手錠をかけられ、
口には猿轡をはめられ、
一体これから自分の身に
何が起ろうとしているのか、
その瞳は不安に怯え、体を震わせるばかり。 


李大人りたいじん、今晩拉致して来た女達です」


女達を連れて来た男が言う。 


「これはこれは、今晩もなかなか上玉アルネ。」 


李大人と呼ばれた男は、
ナプキンで口を拭きながら、
十数人の女達をジロジロ眺めまわす。 


「これでさらって来た女は百人近くになります。
いつでもオークションが開けますよ、李大人」 


李大人なる男は部下の話もそっちのけで、
女達を眺めまわす。 
李大人は十数人の女の中から
一人の女に目をつけた模様。 
その女に密着し、頬を舌で舐め回す。
震えながら嫌がり顔を背ける女。 


「今夜はこの娘にするアルネ。
私のホテルに連れて行くアルネ」 


「はいっ」


李の部下と思しき男は、李に頭を下げ返事をする。 
自らの席に戻り上機嫌で
再びテーブルの上の大皿を食べ散らかす李大人。 




李大人なる怪しいカタコトの日本語を話す男は、
日本に入り込んで来た
中国マフィア、シンジゲートのボスであり、
李のシンジゲートは
人身売買、臓器売買、ドラッグなどをはじめとし、
あらゆる違法行為に手を出していた。


今夜も人身売買目的で
李は部下に少女達をさらわせて来たのだ。
しかもその売り先はこの人間世界ではなく
異世界をターゲットにしたものである。




裏社会の人間である同時に、
李は多数のホテルや飲食店のオーナーでもあり、
表の顔は実業家ということになっている。


その李が所持するホテルに、
先程の女を連れて来る李の部下。 
李の部下は女に手錠と猿轡をしたまま
ホテル最上階のVIPルームに監禁していた。 


手錠と猿轡をされ身動きも取れず、
怯えた瞳で震える美しい女。 
その前に立ってニヤニヤ笑っている李大人。 


「大丈夫アルヨ、
こう見えてもおじさんとっても優しいアルヨ」 


そう言いながら李大人は
女の服を無理矢理引き千切る。
女の美しい裸体が露わにされる。 
抗うことも出来ずに
涙ながらにうめき声を上げる女、
叫ぼうとしても猿轡のせいで言葉にならない。 


「アイヤー、やっぱり綺麗な肌アルネ、
私貴女選んで良かったアルヨ」 


「大丈夫大丈夫、おじさん優しいアルヨ」


そう言う李大人は手に鎌を持っていた。 


鋭く光る鎌の刃を見て、恐怖に顔を歪める女。 


「大丈夫大丈夫、
優しく、貴女を殺してあげるアルヨ」


女の叫びにならないうめき声が部屋の中にこだまする。 


VIPルームの前に立つ李のボディガードが2人。 


「まったく李大人の変態ぶりにも困ったもんだ、、」


その時、VIPルームのドアが開く。 


「後の処理は頼んだアルヨ」


李はそう言い残してホテルのレストランへと向かう。 


ボディガードの二人の男が部屋の中に入ると、
部屋の壁一面が血飛沫で赤く染まり、 床は血の海。
そしてそこには切り刻まれた女の
惨殺死体が転がっていた。 
その惨状を見てボディガードの男達はその場で嘔吐する。 











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