史上最凶の通り魔、異世界に転移す

ウロノロムロ

魔神覚醒

次々と現れる魔物の大群を蹴散らして行くタケシは、
自らの拳が血塗られるごとに、
体に異変が起こっていくのを感じる。


魔物の大群の中から、
例のさえない中年サラリーマン風の男が姿を現す。 
その男は黒ぶち眼鏡を指先で弄りながら、 
怪しい笑顔で言う。


「どうぞどうぞ、私にはお構いなく、
続けてください、ですよ」


その直後、その男は口を大きく開き、
その口の中の巨大な蜘蛛が大量の白い糸を吐き出す。 


タケシの体に巻きつく、大量の蜘蛛の糸。 


それは肉体に異変をきたしたタケシの怪力をもってしても
引き千切ることは出来なかった。 


「いかんっ、魔神・蜘蛛スパイダーかっ!?」


白衣の男はその男を魔神と呼んだ。


蜘蛛の糸に締めつけられているタケシは、
更なる体の異変を感じる。
体が燃えるように熱くなり、全身に激痛が走る。


もがき苦しむタケシの体は見る見る内に膨れ上がり、
体内の骨が超硬質化して体外にバキバキと音を立て飛び出し、
そのまま外骨格化していく、まるで鎧のように。
そして筋肉も骨も同様に超硬質化していく。


改造手術を受けたタケシの肉体は
魔物の返り血を大量にその身に浴びたことで、
魔神の遺伝子が目覚め、さらなる進化を遂げる。


人間であったはずのタケシの肉体は、
銀色の髑髏のような異形の姿へと変身を果たす。


「おぉっ、魔神・髑髏スカル……」


白衣の男は異形のタケシを魔神・髑髏スカルと呼んだ。




異形の魔神へと変身したタケシは
体に巻きつく蜘蛛の糸を引き千切る。 


異形のタケシがサラリーマン風の男を殴り倒すと、
男は何回転もしながら彼方へと吹き飛ぶ。


『これが、俺の力か?』


タケシは自らの体内から
無限に湧き出て来るかのような新たな力を感じる。


魔神・蜘蛛が吹き飛んだその隙に、
その場からの脱出を試みる白衣の男。


「こっちだっ!」


タケシはその後に続く。 
いくら殴り合いにしか興味がないタケシと言えど、
今自分が置かれている状況を知るには
この男について行くしかない。


白衣の男が向かった先には、
この世界には不釣り合いなマシンが一台置かれていた。
それはタケシと一緒に持ち込まれたバイクを
白衣の男が改良したタケシ専用のマシン。


バイクに跨る異形の姿のタケシ、
その後ろに白衣の男が飛び乗る。 


バイクを飛ばし、室内を駆け抜ける異形のタケシ。 
襲いかかる魔物達を次々とバイクでなぎ倒し、
外への脱出に成功する。 


-


白衣の男はタケシを私邸の研究室に連れて行く。 
その研究室は山の中の別荘にあり、
到着した頃には辺りはすっかり暗く、夜になっていた。 


そしてタケシは屋敷の入り口にある
鏡に写る自分の姿を見て愕然とする。 


「この姿が俺だというのかっ!?」 


白衣の男の名はアリスガワ・コウ。
彼は表向きはこの世界の貴族であり名医だが、 
裏では魔王に手を貸し、
改造魔神の研究を行っている人物だった。 











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