非人道的地球防衛軍とゾンビ兵

ウロノロムロ

第二次海底王国戦争

このように様々な異世界から
巨大生物もしくはその屍が集められていた。


もっぱら海賊団よりも山賊団のほうが
はるかに大変だったようではある。


多次元質量シンクロシステムを
運搬に使えるようになるまでは、
巨大生物の死骸を運ぶ手段が無く、
基本的には生け捕りにして、
それを手懐けて
移動させなくてはならなかったため、
難易度は格段に高かった。


そのお陰で
ビーストマスターと言っても過言ではない程に
巨大生物の扱いに長けた人材が
結果として育成された。




意外にも一番簡単だったのは
ドラゴンであった。


『ドラゴンちゃん』の協力もあって、
巨大竜族との意思疎通が可能なツールが
既に開発されていたため、
コミュニケーションが取れる
知性ドラゴンに関しては、
ハントというよりはむしろ
スカウトと言ったほうがよかった。


そのため派遣されるスタッフも
『チーム餓鬼道』の
人材リクルートチームなどである。


大概どこのドラゴンも
人々からは忌み嫌われており、
ドラゴンの立場からすると迫害を受けていた。


そのためこちらの世界への移住には、
かなり前向きに話を聞いてもらうことが出来た。


『ドラゴンちゃん』はさすがに
眠れる伝説のドラゴンだけあって、
その存在をみなが知っており、
『ドラゴンちゃん』と一条女史の
友情話を聞かせると、
知性あるドラゴンはみな泣きながら
自分も連れて行ってくれと
逆にお願いまでされたと言う。


-


「生きてる巨大クジラに
艦橋付けて一度乗ったけど、
船酔いどころじゃないよー
速攻吐いたよー、
あれ人乗るとか無理だろー」


「うむ、私もあれには
二度と乗りたくないな。」


一条女史と財前女史は、
巨大クジラに
人が搭乗することを試行錯誤し、
二人で吐きまくって
大惨事になったらしい。


「あんなの動き早過ぎ、揺れ過ぎだよー
人がいるとこ揺れないように工夫しないと
無理なんじゃないかなー」


「うむ。
ゾンビ化された巨大生物は、
幽霊達に憑依して
動かしてもらえないものかな。」


「幽霊さん達の今の霊力で、あの大型サイズを
果たしてどれぐらいの時間動かせるかだよねー
もちろん試してみる価値はあると思うけどさー」


「じゃあ、やはり遠隔操作ですかね。
ゾンビ兵の時みたいに
ゴーグル着けてもらって
動かす感じでしょうか。」


天野も巨大生物兵器運用に関する
ミーティングに参加していた。


「仮想現実ぽいやつも
難しいんじゃないかなー、
水中だし反応早過ぎて
処理しきれないと思うよー」


「一層もっとゲームぽい
インターフェイス処理にしちゃったほうが
いいかもー」


防衛軍では、
集められた巨大生物を使って研究調査、
実験が繰り返されていた。


生け捕りのまま連れて来られた巨大生物は、
ビーストマスタークラスの人材によって
徐々に手懐けられていったが、


屍をゾンビ化した巨大生物は
運用方法に関しても試行錯誤の連続だった。


例えば、ゾンビ化され、
メカニカル改造された巨大ゴリラに
幽霊が憑依して動かし、
巨大生物用の武器を使う実験という、
もう何の実験なのかすらわからない
実験までもが行われた。


こうして集められたデータを基に、
巨大生物兵器の
運用ノウハウが蓄積されていった。




そして今まで
海軍戦力を持たなかった
地球防衛軍日本支部に、
はじめての海軍部隊、艦隊が誕生した。


日本は周囲を海に囲まれた島国であり、
他国からの侵略の際には
海軍力に依存するところが大きいため、
海軍戦力の増強は
国防軍を優先して行われて来た。


『海底王国』との戦争で国防軍の海軍は
すべて壊滅させられていたが、
その後の新造艦も
優先的に国防軍にまわされいた。


そうした状況の中で防衛軍は、
自前で海軍力を揃えることに成功したと
言ってよかった。


もちろんその戦力は
巨大海洋生物である巨大クジラ、巨大サメ、
巨大エイ、巨大カメなどであったが。


-


数年後、防衛軍は『海底王国』との再戦、
第二次『海底王国』戦争に
突入することになる。


奇しくも開戦の口実となってしまったのは、
こちらの人間が『海底王国』の
知性生物を多数拉致したことに対し
報復を行うというものであった。


単なる口実なのか否か、
真偽の程は定かではないが、
防衛軍も後ろめたい組織であるだけに、
何処かでそうしたことが
行われていた可能性もある。




だが再戦は
防衛軍の完膚なきまでの圧勝となった。
初陣での苦戦がまるで嘘のように。


ひたすら戦力を上げることに尽力して来た
防衛軍と『海底王国』の戦力差が
つき過ぎてしまっていたのだ。


まず『海底王国』の海軍戦力と、
防衛軍の海軍戦力がほぼ拮抗していることが
前回からすれば考えられないことであった。


そして『海底王国』も空軍戦力を整えて
戦争に臨んで来てはいたが、
『ドラゴンちゃん』改め『お竜さん』率いる
ドラゴン部隊の前に完封された。


圧巻は巨大鳥類であり、
強行して上陸した半漁人群は、
その巨大な鳥にほぼ食われてしまった。


人型で知能がある以外、
魚とさほど変わらない半漁人を餌と認識し、
鳥類が捕食するのはわからなくはないが、
それでも人間の言語を話す
人型の半漁人が食われてしまう姿は
直視出来ないエグイ光景であった。




しかし同時に防衛軍にとっては、
ここからが本格的な
異世界戦争の幕開けでもあった。


この第二次『海底王国』戦争を皮切りに、
各異世界との激戦が続き、
最終的には生態系バトルロイヤルが
繰り広げられることになる。


大幅に戦力が充実した地球防衛軍であっても、
この連戦続きに苦しい戦いを
強いられることになっていくのだった。











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