非人道的地球防衛軍とゾンビ兵

ウロノロムロ

異世界間交易

月明りが照らす海。
凪いだ海に停泊する船団。
船団の前にはゲートが開いている。


やがてゲートから徐々に姿を現すクジラ船。
ゲートから出現したクジラ船は
船団に接弦する。


「旦那、
今日は随分と早いお着きで。」


ゲートから出て来た
クジラ船の半魚人が声を掛ける。


「ああ、ちょっとばっかし
早く着き過ぎちまったよ」


船団側から人間がそう答えた。


「今日は何かいい大物はあったかい?
父つぁん」


「いや、今日はクジラの死骸が二体だけで」


「なんだい、またクジラかい。
たまにはサメでも獲って来てくれよ」


「旦那、そうは言っても
サメはなかなか獲れないんですよ、
死骸でも」


「いつもの三倍は出すぜ」


「わかりました、
その代わりもっとはずんでくだせえよ」


-


「いやでも
死骸でも引き取ってもらえるんで、
こちらは助かってますよ」


半魚人の父つぁんは
積荷の確認作業をしながらそう言った。


「生け捕りで
ここまで引っ張って来るのは
なかなか大変でしてね」


「むしろゾンビ化したほうが
操作は楽だって話だからな」


人間の男は笑いながら答えた。




男の名は、潮崎。
大型生物の密漁、密売を生業とする
異世界海賊団の団長である。


もともと腕のいい漁師であったが、
ギャンブルに嵌り、
私財をすべてギャンブルに費やし、
多額の借金を抱えた。


それでもギャンブルを
やめることが出来ずに、
家を売り、船も売った。


それでもまだ足りずに、
嫁をだまして売り飛ばし、
幼い娘まで売り飛ばそうとした、
屑中の屑である。


娘が売り飛ばされる寸前に、
金を貸していた
大親分系列の闇金から連絡があり、
防衛軍が保護。


当時は典型的なギャンブル中毒であり、
依存症候群であったが、
防衛軍の洗脳、人格矯正で、
依存症を脱し、
内通者魚住さんと漁師仲間で
顔見知りであったこともあって
『海底王国』で潜入工作などを
行うようになった。


潮崎は某海賊映画の海賊を意識して、
ウェーブのかかった長髪に
口髭と顎髭を生やし
外見を真似している。


-


「そっちじゃクジラも
数が少なくなってるそうですが、
こっちはまだまだいっぱいいますからね。


クジラの墓場がありますから、
死んで間もないクジラ引っ張ってくるのは
わけないでさあ。


あの小型化する装置も貸してもらえてるんで、
運ぶのも以前に比べりゃ楽になりましたよ。」


「ありゃ、極秘で頼むよ父つぁん。
機密扱いなんだから。
そのうち回収させてもらうぜ。」


「分かってますって旦那。
商売は信用第一ですから。」




「いや、こっちも
父つぁんのところが
物々交換に応じてくれて助かってるよ。


そっちが貨幣の代わりに使ってる真珠ってのが、
こっちの世界では高価なもんでね。


そんなもん大量に集めるのも
無理だからな。」


「しかしあんな玩具みたいなもんと
交換でいいのかね。」


彼らが捕まえてきた大型生物の対価として、
彼らが熱狂している
ロボットアニメ・特撮の玩具やフィギュアが
相当量渡されることになっている。


潮崎の船団には、
ロボットの超合金やプラモデル、
フィギュア、ガチャポン、食玩、
関連グッズなどが大量に積まれていた。


潮崎の言葉に父つぁんは
作業の手を止めて振り返る。


「いや旦那、うちらからしたら
喉から手が出る程のお宝ですよ。


報酬なんていくらでも出すってやつが
大勢いるんですよ。


政府の偉いさんや軍人さんなんかも
いつ回ってくるんだって、
裏ルートで問合せが殺到してるんですよ。」


立場上は敵対勢力ではあるが、
隠れた民間交流は
かなり盛んになってきており、
異世界交易も行われるようになってきていた。


そこでどこの異世界住人も
真っ先に欲しがるのが、
ロボットアニメ・特撮の
玩具・グッズ等であった。


防衛軍も大親分系列の会社に
玩具会社を買収させ、
ロボットアニメ・特撮商品専用の
工場を用意させた。


それが異世界住人に飛ぶように売れ、
異世界の外貨稼ぎや
こうした物々交換に一役買っていた。


また異世界上層部に
工作員が根回しするのにも賄賂が必要だった。


その際に、
ロボットの超合金やプラモデルなどは
とても重宝された。


貴金属が価値あるものとして
通用する異世界もあったが、
それでも異世界の外貨も準備されてはいた。


「あぁ父つぁん、こっちの物には
いつものように防水加工しておいたから、
サービスでいいぞ」


「そりゃ助かりますよ旦那。
こっちはどうしても水の中が多いもんで。」











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