非人道的地球防衛軍とゾンビ兵

ウロノロムロ

戦争再び

それは僕等にしてみれば突然の出来事だった。


大人達からすれば
そうではないのかもしれないが。


ロボット兵の軍団が攻撃を開始して、
ムショが襲撃を受けた。


ムショ内のそちらこちらに
ロボット兵が現れて、
大人達は戦っていた。


彩おっかさんは僕等を
シェルターまで連れて来た。


「いいかい。
あたし達がここを開けるまで、
絶対ここから出てきちゃいけないよ。」


「ここはこのムショの中で
一番頑丈なところだからね。」


彩おっかさんはそう言うと
部屋をロックして行ってしまう。




僕等は元の世界居た頃を思い出した。


人々が戦争に明け暮れて、
住むところも食べる物もなくし、
わずかな食料を奪い合って生きていく
あの惨めな生活を。


マトは震えて泣き出した、
みんなも震えて泣き出した。


僕等が行くところに
戦争がないところはないのじゃないのか。


僕等はずっと一生戦争から
逃れることは出来ないんじゃないか、
そんな気さえして来る。




何より心配だったのは
おっかさん達だった。


本当のお母さんお父さんが
死んでしまった時のことは
何も思えていなかったが、
おっかさん達を失うことは
考えたくもなかった。


あんなに優しいおっかさん達が
なぜ死ななくてはならないのか。




戦いが終わってシェルターが開いた時、
みんなはおっかさんに抱き着いて泣いた。


僕も彩おっかさんに抱き着いて泣く。


彩おっかさんも泣きながら
僕の頭を撫でてくれた。


-


それからしばらくは
ムショの機械が全く使えなくなって、
機械を使わない生活を送ることになる。


大人たちがみんなで
水や食料を確保するのに必死だった。
僕等子供も大人を手伝う。


半魚人と人魚は
大人達と魚を捕りに海に行く。


僕とマトも大人達と一緒に
ドラゴンの背中に乗って、
水の調達について行った。


夜寒い日は、
お竜さんが大きなドラゴンになって、
女の人と子供はみんなでくっついて寝る。


お竜さんは火のドラゴンだけあって
とっても暖かかった。


元の世界に居た時は、
戦争が終わった後はこんな感じではなかった。


みんなが売り飛ばせそうな
金目のものを探し回ったし、
食べ物を奪い合った。


それで殺し合いが起こったりしていた。


でもここではみんなが一緒になって、
なんとかしようとしていた。


「すまないね、
また戦争に巻き込んで、
こんな苦労をさせちまって」


そう言うおっかさんも居たが、
元の世界とは全然比べものにならない。


同じように戦争が終わった後なのに、
みんなが居たからなのか、
全然何でもなかった。


-


その後、
ムショが元通りになってしばらくして、
僕等に疎開の話がある。


この先戦争が激しくなるから、
僕等がここにいるのは危ない
ということだった。


僕は夜眠れなくてトイレに行った時、
途中の部屋から声が聞こえて来た。


 「このままここに居たら
あの子達はまた戦争に巻き込まれてしまう」


「そうなれば
あの子達が元居た世界と
何も変わらなくなってしまうんですよ」


その声は天野兄ちゃんだった。


「わかってるんだよ、あたしだって」


「だけどね、
あたしはあの子達に約束したんだよ。
あの子達のおっかさんになるって、
一緒に居るって。」


彩おっかさんの声は泣いている。


その後二人はしばらく話しをしていた。


僕は彩おっかさんを
責める気にはなれなかった。











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