非人道的地球防衛軍とゾンビ兵

ウロノロムロ

多次元質量シンクロシステム

一条女史が立てたフラグ通りに、
数か月後、巨大ドラゴンは
別のゲートからこの世界に戻って来た。


前回よりさらに傷ついた姿になっていたが、
まだまだドラゴンは健在であった。


この世界から不法投棄されて以降、
いろんな異世界をたらい回しにされて
再びここに戻って来たらしい。


「ドラゴンの体表から発せられる
異世界反応からみて、
少なくとも五、六か所の異世界を
たらい回しにされて来たようです。」


財前女史は報告すると、一言付け加えた。


「因果応報と言うことですかね。」


「因果応報なら
最初に不法投棄した世界に
戻っていただきたかったですがね。」


進士司令官は冷静に返した。




一条女史はドラゴンとの再会に
目を輝かせて喜んでいた。


「でもすごいよこの子―、
みんなが不法投棄したってことは、
どこの異世界も
倒せなかったってことでしょー」


「本当に無敵なんじゃないかなー、
不死身かもって話だしー」


「さすがに眠れる伝説のドラゴンと
言われるだけありますね」


天野が呆れ気味に言う。




「さてどうしますか?
まさか核兵器というわけにも
いかないでしょうし。」


財前女史が困り顔でそう言うおうとすると、
一条女史が制した。


「薫ちゃん、何を言ってるんだー
今度こそあたしが
ドラゴンちゃんを救ってみせるよー」


「あのドラゴンちゃんは
どこの世界でも受け入れてもらない、
社会不適合ドラゴンちゃんなんだよー
どこに行っても受け入れてもらえない、
この組織に居る人達と一緒なんだよー
そういう人達を受け入れて、
居場所をつくってあげるのが、
この組織じゃないかー
ドラゴンちゃんだけ
ダメってことはないんだよー」


『いやいくらなんでも、
それはこの組織を好意的に取り過ぎだろ』


天野は心の中で突っ込むが、
同時に一条女史が本当に
この組織を気に入っているのだなとも思う。
まぁ本人は最初からそう言っていたのだが。


「とは言ってもだな。
何かいい策はあるのか?」


財前女史は困り顔で一条女史に問う。


「任せておいてよー、
こんなこともあろうかと、
秘策を練っておいたよー」


一条女史は胸をドンと叩いてみせた。


-


『ドラゴン不法投棄作戦』成功の数日後、
一条女史は天野と共に
『チーム邪道』北條のもとを訪れていた。


一条女史のアイデアが
実現可能なものかを確認するために。


「なるほど。


巨大生物一体の質量を、
質量保存の法則に基づいて、
二つの次元に分けて保存するわけですね。


それで小型の質量を
こちらの三次元世界に保存し、
大型の質量を別次元に保存しておくと。


それで必要に応じて、
別次元から大型質量を
三次元世界に移動させることも
出来るようにすると。」


北條の言葉に頷き、
答える一条女史。


「そうなんですー、
出来れば魂に相応するものは、
三次元側にあるといいかなーと。」


天野は横から口を挟む。


「それって、昔の理論だと、
相当に膨大なエネルギーを
必要とするって奴ですよね。
どっかで聞いたことあります。」


天野の問いに北條は苦笑する。


「もうあれなんですよね。
博士が自由に次元移動したり、
自由に物質を出し入れしている時点で、
その辺り、この世界では
何でもありになっちゃってるんですよね。
昔の既知宇宙と、現在の既知宇宙が
全く別物になってしまっているんですよ。
博士の影響なのか、時空混乱の影響なのか、
全く別の原因なのかはよくわかりませんが。」


北條は話を元に戻す。


「確かにそれなら
三次元世界に居る時は小型で、
戦闘時に大型になることが出来ますよね。
現在進めている多次元クラウドシステムでは、
物質の次元移動だけでしたが、
分割保存も出来るように
博士に相談して進めますね。」


北條の回答にまずは安堵する一条女史。


「申し訳ないんですけどー、
出来るだけ急ぎでお願いしますー
今度ドラゴンちゃんが
またこの世界に来た時は、
絶対に助けてあげたいんですー」




博士の協力があれば、防衛軍の技術は
一日で一年分以上の進歩を
果たすことも可能である。


一条女史の願いを叶えるには、
数か月あれば十分であった。


「というわけでー、出来たのがこれですー」


一条女史はゲートにつながる装置を取り出した。


「ちゃらららっちゃらー、
名付けて仮称・多次元質量シンクロシステムー
『仮称・』も付けてみましたー」


『とりあえずここはスルーだな』


天野は敢えて突っ込まなかった。


「これをドラゴンちゃんに付けてもらえば、
もうドラゴンちゃんは
いじめられなくて済むんだよー」


「なるほどな。大したものだな。」


財前女史は感心して頷いた。











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