非人道的地球防衛軍とゾンビ兵

ウロノロムロ

マスドライバー

当のドラゴンは山の上に降り立ち
休憩中であった。


ドラゴンの上空を
戦闘機が数機旋回して飛び回ると、
ドラゴンは気を取られはじめる。


戦闘機がそこから飛び去ると、
ドラゴンも羽根を広げて飛び上がり、
戦闘機の後を追いかけはじめる。


「やー、猫じゃらしに追いて行く
猫みたいで可愛いー」


本当にこういう時の
一条女史のメンタルはすごい。
確かにこのドラゴンは
本当は大人しいのかもしれなかった。


ただ反撃した時の攻撃力が凄まじく、
現時点で不死身に近い
鉄壁の防御力というだけで。


そして人間からすると
存在自体が脅威そのものであり、
共存が難しい相手であった。




戦闘機は空中にある目的のゲート直前まで
ドラゴンを引き付けると、そこで離脱する。


ドラゴンがそのまま
ゲートに突っ込んでくれれば
一番よかったのだが、
ドラゴンはゲートの直前で止まり、
そのまま宙に浮く。


「やっぱりこの子知能が高いんじゃないかなー」


一条女史はこのドラゴンの知能が
高いのではないかとずっと思っていた。




ゲートの前に立ち止まったドラゴンを、
宙に浮く重力制御装置によって形成された
無重力フィールドが包み込む。


いきなり無重力空間に放り込まれたドラゴンは、
とっさに身動きが取れなくなり足掻く。


重力制御装置も
相手の動きを一時的に封じるための
防衛軍の常套手段になりつつあった。




山を左右に分け、その中央を
天に向かい真っ直ぐに伸びるマスドライバー。


そのレールは地下にまで繋がっている。


マスドライバーには
約二百メートルの巨大ゾンビ・クジラが
セッティングされていた。


これでも今回の作戦に合わせ
尻尾を切るなどして
サイズが調整されている。


腐敗しない程度に
生命活動が維持されていた
巨大ゾンビ・クジラはほぼ肉の塊であった。


その巨大な肉の塊が、
高次元エネルギーを推進剤として打ち出される。


この巨大な肉の塊は、
無重力フィールドを形成しながら進むため、
空気抵抗がほとんどなく、
ほぼ初速のままの勢いで目的まで到達する。


巨大な肉塊が空を突き進み、
宙に浮く巨大ドラゴンに激突する。


百メートル級のドラゴンと
二百メートルの肉塊が衝突するため、
その衝撃波は凄まじいものであった。


衝突でミンチにならないよう
肉塊の硬度は計算され調整されていたが、
ドラゴンはそのまま
死んでしまう可能性もあった。
防衛軍としてはそれでも問題はなかった。


しかしドラゴンはミンチになることなく、
その巨大な生体ミサイルに
そのまま押されて行った。


この頑丈さでは確かに
バンカーバスターで倒せたか疑問である。


巨大ドラゴンはそのまま押し切られ、
再びゲートの中に呑み込まれて行った。
巨大ゾンビクジラも一緒に
そのまま呑み込まれた。




これで不法投棄ドラゴン騒動は
ひとまずの終息を見た。
関係者は一様に安堵して
ホッと胸をなで下ろしていた。




「ドラゴンちゃん、
今度また会ったら私が必ず
助けてあげるからねー」


しかし一条女史は
壮大なフラグを立ててしまっていた。











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