非人道的地球防衛軍とゾンビ兵

ウロノロムロ

ドラゴン不法投棄作戦

確かに巨大生物を
戦力とするのには問題が多過ぎた。


あれだけの巨体を飼育するというのは
相当な敷地が必要となるだろう。
その巨体を維持するためには
相応の食料も必要となる。
そのコストはどうするのかという問題も伴う。


また当然ながら周辺住民は
不安を感じるであろう。
どれだけ安全を訴えたところで、
その巨体を目にすれば
畏怖を抱くというのが人間の心理であろう。
となると世論の支持も得ずらい。


この世界の本来の生態系に存在しない
生物が入って来ることで、
生態系にどのような影響を及ぼすかも
考慮しなくてはならない。


-


みなが論議している中、作戦立案担当の
『チーム非道』リーダー・千野が
別作戦を提案する。


「日本の傍にまだ異世界とつながっていない
ゲートがあります。
おそらくは異空間につながってはいますが、
そこに送り込んでみてはどうでしょう?
おそらくはそこからまた
どこか別の異世界に
出現することになるのでしょうが、
少なくとも我々から
異世界に送り込んだということには
ならないでしょう。」


「そういう配慮は外交的にも助かりますね。」


真田が相槌を打つ。


「その場合、どうやって放り込むんですか?」


一同が思っている当然の疑問を、
天野が代表して千野に質問した。


「ゲート付近まで戦闘機で誘導して、
ゲート付近でドラゴンの動きを止め、
巨大な質量をぶつけることで、
ゲートにドラゴンを押し込みます。」


「すごい力技な作戦だなー」


「要は元の世界がやったことと
同じことをやるわけですね。」


財前女史が頷いた。


「あのドラゴンの巨体を
押し込むだけの質量って、
何使う気ですか?」


天野は質問を続けた。


「巨大ゾンビクジラを使うのはどうでしょう。
あれだけの質量で体当たりすれば、
巨大ドラゴンを押し込むことも可能でしょう。」


『海底王国』が揚陸艇として使った巨大クジラ。
この世界で機能停止に追い込み、
その死骸は当然調査研究のために、
防衛軍が保管していた。


ただ、腐敗しないよう
ゾンビ化措置が施されており、
魂は存在しないが、
生命活動自体は維持されている、
ゾンビ素体と同じ状態で保管されていた。


「おおー、
やっとあいつらにも使い道が出来たかー」


「そのうち巨大メカゾンビクジラにして
空飛ばそうと思ってたんだけどなー」


「その名前、もうわけわかんないっすから」


久しぶりに天野のツッコミの出番であった。




「で、ゾンビ・クジラを打ち上げる方法は?」


天野の質問もどんどん佳境に入る。


「マスドライバーを改修して使います。
当然軌道修正は必要となりますが。
目的ゲートの位置とマスドライバーの位置、
距離、その他条件等々を考えて
可能であるという結論が出ています。」


どうやら千野をはじめとする
『チーム非道』のメンバーは、
この数日をかけて検証をしてきていた。
そうであれば話は早い。


確かに未確認飛行物体の襲撃以降、
対宇宙戦を想定し、宇宙に戦力を送れるよう
『チーム邪道』により
マスドライバーが開発され、
完成はしていた。


「マスドライバーでも
あの質量を打ち上げるのは
さすがに無理なんじゃないですか?」


「重力制御装置を使って
重力を極限まで軽減し、
動力炉や推進剤には
高次元エネルギーを応用します。
幸い前回の防衛作戦の時に、
炉の原型となるものは出来ておりますので。」


彼らの伝家の宝刀・高次元エネルギー。
今のところ使える量は微々たるものだが、
何にでも応用可能で、
異次元レベルでエネルギー効率が良い
魔法のようなエネルギー。
最近は防衛軍でも
高次元エネルギー使えば
何とかなるだろうという風潮すらある。




その後、
千野から作戦の詳細に関する説明が行われた。


核兵器を使えれば早いのは間違いなかったが、
核兵器でドラゴンが
確実に絶命するとは限らなかったし、
さすがにそれは世論が黙ってはいないだろう。


また彼らがいかに非人道的な組織であろうとも、
ドラゴン一匹を退治するのに
核兵器を使うわけにはいかなかった。


となるとここまで回りくどい作戦を取るしか
道はないのだ。


防衛軍の技術は確実に日々進歩していた。


通常であれば一年かかることが
一日で出来るようになるぐらいには。
しかし分野に偏りもあった。
これは博士が技術供与してくれる内容と
相性がいい分野は急激に伸びるが、
それほど発展していない分野もある
ということだった。


とにもかくにも、
こうして『ドラゴン不法投棄作戦』は承認され、
実行されることとなった。











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