非人道的地球防衛軍とゾンビ兵

ウロノロムロ

天の真っ直ぐな道

民間人の避難誘導を優先したため、
敵への抗戦が手薄になって、
結果として敵の侵攻速度が速まり、
敵に追いつかれることとなった
防衛軍地上部隊。


追いついた敵は容赦無く
民間人をも攻撃していく。
敵の銃弾に次々と倒れていく人々。


そのような状況の中、
天野をはじめとする地上部隊の一部、
『チーム色道』の女衆は
民間人の避難活動を続けていた。


しかし次の爆撃までには
もうわずかな時間しか残されていない。


「もう時間だ、これ以上は待てないぞ!」


天野の下に合流していた石動が叫ぶ。


「しかしまだいる」
「ギリギリまで待ってくれ!」


せめて自分達の周囲にいる人達だけでも
無事避難させたいと思っている天野。


「このまま俺達まで空爆に巻き込まれたら、
こっちが全滅するんだぞ!」


-


女衆も同様に時間一杯
救援活動を続けていた。


「こっちはこの爺さんで終了だね」


年寄りを保護する彩姐さん。


「姐さんもう時間ギリギリだよ!早く!」


しかし年寄りの足は遅く
思うようには進まなかった。
すぐ背後には多数の敵の姿が迫って来ている。


敵に向け銃を乱射して、
援護する女衆達。


「姐さんもう時間ないよー!」
「もうそんな爺さん置いてきなよ!」


お年寄りも諦めて姐さんに言う。


「お姉さん、
もう私はいいから置いていってください」


「放っておけってのは無理ってもんさね!」


「これでもあたしは
お爺ちゃん子だったんだよ!」


彩姐さんは爺さんを背負って走り出す。


「お爺ちゃん、
いくらあたしのナイスバディに
触り放題だからって、
ショック死したりしないでおくれよ」


「ショック死なんかで
冥途に行かれた日にゃ、
あたしが体張った甲斐が
なくなっちまうよ」




他の避難民の誘導を終えた天野が駆け付けた。


「いいタイミングで来てくれたよ、
坊や、惚れちまいそうだよ」


爺さんを背負って、
姐さんと一緒に走る天野。


逃げ遅れた年寄りを
次の防衛ラインギリギリまで連れていき、
他の兵に引き渡す。


後を少し遅れて走っていた姐さんに
敵の攻撃が迫っていた。


「姐さん!危ない!」


天野は姐さんを庇い、
敵の流れ弾に当たる。


「坊や!」


その直後、
開始された空爆の爆風で敵が吹き飛ぶ。
しかし天野と彩も爆風に巻き込まれる。


天野は彩を守るかのように、
彩の頭を自らの胸に抱きかかえる。
二人はそのまま数メートル吹き飛ばされる。




天野のヘルメットは脱げ、
頭からは血が流れている。


「坊や!大丈夫かい!?」


「まぁ、なんとか、大丈夫です…」


幸い流れ弾は脇腹を貫通しだけではあった。


「立てるかい?」


彩姐さんと天野は立ち上がり、
安全な場所まで移動する。


彩姐さんは女衆が持っていた救護パックで
天野に応急処置を施す。


「止血はしておいたよ」


天野の頭に包帯を巻き終える。


「しかし頭を強く打っただろうからね。
後で検査しないとだね」


「あんたには大きな借りをつくっちまったね」


「いえ、もとはと言えばギリギリまで
救助活動を優先させて俺の責任です」


「怪我をしたのが、
彩さんじゃなくて俺でよかった」


「あんたそりゃまるで
口説き文句みたいじゃないか」


「いやそんなつもりじゃ…ははは、痛って」


「坊や、ありがとうよ」


-


合流していた石動が天野の様子を見に来た。


「あんちゃんよ、
さすがにあれはギリギリ過ぎだわ」


「下手すりゃ、
全員巻き添えくらって全滅だったぞ」


「実際、あんちゃん爆風に巻き込まれて、
そんな怪我しちまってるじゃねぇか」


「指揮官の判断ミスで死なされるのは御免だぜ」


彩姐さんも天野を心配するあまりに
苦言を呈した。


「あたしもね、助けてもらっておいて、
こんなこと言うのもおこがましいけどね」


「あの司令官はいけ好かない野郎だけど、
あいつの言っていることは間違ってないよ。
民間人の避難優先しちまって、
あたし達が全滅しちまったら
元も子もないんだよ。
あたし達がやられちまったら、 
結局もっと多くの人達が
殺されちまうんだよ。」


「坊やだって
ちょっと間違えてたら死んでたんだ、
あんた指揮官なんだから、
あんたが真っ先に死んじまっちゃ
しょうがないじゃないかい」


二人の言葉に対し、
天野は自らの信じる道を示す。


「わかってるんですよ!
俺だってわかってるんです!
でもね、兵士ってのは
覚悟して来てるんだから、
仕方ない部分がありますけど、
民間人はね、
今日死ぬかもしれないなんて
覚悟で生きてないんですよ!」


「明日は何しようか、
明後日はどうしよか、
将来はどうしようか、
そんなこと考えながら、
毎日生きてるんですよ…」


こんな時に、
ただひたすら真っ直ぐな
王道を説こうとする天野に、
二人は面食らった。


「あんた本当に坊やだったんだね、
ちょっとびっくりしちっまったよ。」


呆れ顔の彩姐さんは
口許に笑みを浮かべた。


「全く、なんでこんなのが
ここに来ちまったのかね。」


呆れ顔の石動も笑った。


「やれやれ、全くだな」











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