非人道的地球防衛軍とゾンビ兵

ウロノロムロ

残された民間人

次の爆撃では、冷凍弾が投下された。


敵が氷ついて固まったところを、
衝撃弾を使い粉砕していく地上部隊。


敵の水分を凍結させるプランであった。


敵航空戦力の掃討に成功し、
敵戦力は地上部隊のみとなったものの、
数万単位で増え続ける敵に、
防衛軍は徐々に押されていく。


防衛ラインも相当下がり、
既に避難命令が出された範囲の
ギリギリまでに至っていた。


この先はまだ民間人が残っている可能性も高く、
被害の拡大が予想される。


一刻も早く敵増援の原因となっている
クジラを殲滅することが
戦局の鍵となっていた。




「やべえな、これは…」


次の防衛ラインまで下がる途中、
その光景を見た天野は愕然とした。


そこにはまだ避難を終えていない
大勢の民間人がいた。


「なんでまだこんなに人が残ってるんだよ」


開戦前日から『ピース9』の過激派は
決起集会を呼びかけ、反戦デモを行っていた。


そのまま開戦から現在まで
反戦デモは継続されていた。


『ピース9』の内部に潜入していた工作員も
これを止めることは出来なかった。


戦場のすぐ横で反戦デモを行うなど
命知らずにも程があるが、
自らの命を投げ打ってまで
信念に準ずるのが『ピース9』の過激派。
もはや殉教者のようでもある。


警官隊がデモを止めさせようとしても、
過激派は徹底的に抗し、
小競り合いとなっていた。


過激派の集団暴行を受けて
負傷した警官も後を絶たなかった。


非戦のための暴力とは、矛盾する話だが、
それが理性を失った人間というものかもしれない。


その数は十万人以上おり、
次に決められた防衛ライン後退の時間までに、
敵と応戦しながら、
避難させることが出来るような規模ではなかった。




天野は司令室に通信回線をつなぐ。


「現在、まだ多くの民間人が残っています」


「民間人の避難が完了するまで、
次の空爆を待ってください」


「このままでは多数の民間人が空爆に巻き込ます」


司令室の進士司令官は眼鏡を指で押しながら、
顔色一つ変えずに答える。


「次の作戦予定時間の変更は認められません」


「時間内で可能な限りの民間人を避難させてください」


「そして必ず次の作戦予定時間までに、
全軍次の防衛ラインまで後退してください」


「こちらも民間人の避難誘導に
可能な限りの人員をまわします」


通信回線は一方的に切られた。


「くそったれが!」


天野は拳を叩きつける。
ハッキリ明言はされていなかったが、
要は時間内に避難、
救出が出来なかった民間人は
見殺しにするということだ。


-


敵軍勢は死屍累々を乗り越え、
ひたすら進み続けて来る。


防衛軍地上部隊は応戦するも、
増え続ける敵数の多さに押され、
敵は既に次の防衛ラインにまで
近づきつつあった。


石動は敵への迎撃準備を指示する。
天野は通信回線を使って総員に通達。


「各班に告ぐ、敵に応戦しつつ、
民間人の避難を誘導しろ」


「負傷した民間人は救護班まで連れて行け。」


石動は通信で応答する。


「救護班?そんなもんねぇよ!
なんせいつも再生医療で
済ませちまうんだからな。」











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