非人道的地球防衛軍とゾンビ兵

ウロノロムロ

クジラからの増援

戦場から少し離れたビルの屋上から、
大親分と内通者の魚住さんが
戦況を見つめていた。


「凄惨な現場なはずなんですがね」


大親分が低い声でそう言うと
魚住さんは相槌を打つ。


「えぇ」


「お腹がすいてきますね」


「えぇ」


「絵面があれなんですかね」


「蟹ですかね」


「焼き魚の匂いもしますしね」


確かに戦場からは焼き魚と
焼き蟹の匂いが漂ってきている。


「人類の存亡がかかっているこんな時でも
お腹がすくとは、人間は浅ましいですね」


大親分はしみじみそう語ると、
魚住さんは頷いた。


「さもしいですね。
私なんてもともとは同族のはずなんですがね。」


-


爆撃機が一機トビウオの特攻で撃墜されたが、
限定的焦土作戦は成功した。


だが敵の数は減らず、
むしろ増えて来てさえいる。


半魚人は燃え盛る同胞の
屍の山を乗り越えて前に進み続ける。


『やばいな、こういう敵はやばい。
徹底的に殺し合うしかなくなる。』


天野は敵のその姿を見て
そう思わざるを得なかった。




敵の気迫に押され、こちらも防衛ラインを
後退させざるを得なかった。


ここまで沿岸部ギリギリの
狭い防衛ラインでなんとか凌いで来たが、
それもどうやらここまでのようだ。


敵も増援があったのか、
数がいよいよ増えて来ていた。


こちらもそれなりの死傷者が出はじめている。


次はいよいよ敵の目的地である
ロボット像群がある侵略スポットが圏内。


敵の目的地で迎撃するしかない、
天野はそう考えていた。


実際に防衛ラインは何重にも設定されており、
最終防衛ラインは東京全てが圏内に入る。


当然その最悪のシナリオは
避けなければならなかった。


-


天野からの防衛ライン後退の
連絡を受けた司令室。


進士司令官は次のプランへの
移行を了承し、通信を切った。


敵兵力が増えてきていることについては、
司令室にいる者達も疑問を抱いていた。


「なぜ敵の数が増え続けてきているのか。」


進士司令官は眼鏡を指で押しながら呟いた。


「定期的にクジラが口を開け、
中から兵が出てきているのは確認されています。」


財前女史が兵からの報告を伝えた。


分析担当の千野はその言葉に反応する。


「いくらあの巨大サイズのクジラでも、
その内部構造を考えると、
これだけの兵力が積まれていたとは思えません。
このままいくと敵兵総数は十万を越します。」


「中ですごい
ぎゅうぎゅう詰めになってたんじゃないかなー、
満員電車のすし詰め状態みたいにー」


「それにだ、潜んでいたとしても、
最初に一気に吐き出さないで、
定期的に出してくるのはなぜだ。」


千野の話に財前が応じる。


「兵力を小出しにしているのでしょうか。
最初にすべて出していた場合、
これまでのこちらの攻撃で
兵力が激減していた可能性があります。」


「それは結果論じゃないかなー、
一気に突破出来た可能性だってあるわけだしー」


「クジラの体内で
敵が増産されているということもありますね。
あまり考えたくないことですが、
クジラの体内にゲートが存在する
ということもありますかね。」


進士司令官の発言に千野は自問自答する。


「まさか、そんな、
人口的にゲートをつくり出すことが、
出来るのか?」


進士司令官は眼鏡を押しながら言う。


「もしそうであるなら、
今後のゲートに関する秘密解明のために
捕獲したいところですね。」


「が今は何としても
この戦いを乗り切らなければなりません。
現状、クジラからの増援を前提にして
考えなくてはなりませんね。
財前さん、対クジラ特殊任務の
実行メンバーを至急選抜してもらえますか。」


財前女史は敬礼して、司令室を駆け出して行く。













コメント

コメントを書く

「SF」の人気作品

書籍化作品