非人道的地球防衛軍とゾンビ兵

ウロノロムロ

地上戦

こちらも前回の作戦を踏まえ、
上陸ポイント周辺の海域には
水中機雷が多数撒かれていた。


大型クジラはその巨体で
かわすことが出来ずに、
機雷を爆発させる。


その爆発は、
天野が覗く高性能双眼鏡で
視認出来るところまで迫って来ていた。


「『ピース9』が見たら
ものすごく怒りそうな光景だな」


クジラ達はダメージを追いながらも
陸に向かって突き進んで来る。




クジラ達は浅瀬まで到達すると、
咆哮と共に、その巨体の口を大きく開けた。
その瞬間、千野は叫ぶ。


「しまった!揚陸艇か!」


クジラの大きな口の中から、
半漁人の群れが飛び出して来る。


それは見る見るうちに
浅瀬を黒い影で埋めつくし、
水を滴らせながら、
ぞろぞろと陸に上がって来る。


その数は裕に数万を超えていた。
中には数が少ないながらも人魚もいるようだ。




さらに十体の中で
一際大きなクジラの口からは、
巨大なカニが出てきた。


ぞろぞろと巨大なカニが連なって、
浅瀬から陸地を目指してカニ歩きをはじめる。
数十メートル級が数体、
その後を数メートル級のカニが
ぞろぞろ横歩きで続いていく。


巨大生物運搬の役割を
担っているクジラもいるようだ。


おそらくこれが
『海底王国』軍の地上制圧部隊であろう。


-


砂浜に上陸する敵地上部隊に対し、
爆撃機が空から爆弾を投下する。


爆発で半漁人が砂と共に吹き飛ばされる。


敵が陸に慣れない内に急襲するのは、
今回作戦の第一段階の鍵であった。


そのためにも、
制空権確保は必須だったのだが、
今は戦闘機がエイとトビウオを
引きつけて牽制しており、
地上からも対空ミサイルで
援護射撃が行われている。




今回の作戦は爆撃が主で、
『チーム外道』をはじめとする
地上部隊の任務は、防衛ラインの内側
つまり爆撃圏内に敵を封じ込めることであった。


敵戦力の侵攻を防衛ライン内に押し留め、
次の爆撃タイミングまでには
防衛ラインの内側まで戻る。


爆撃で撃ちもらした敵は地上部隊が倒す。


その間、
支援部隊は防衛ライン外から
遠距離攻撃、援護射撃を行う。


航空機の陸上作戦支援や
近接航空支援というよりはむしろ、
爆撃がメインで地上部隊が支援に近かった。


当然ながら航空部隊と地上部隊、
支援部隊との綿密な調整、
連携が必要となる任務であった。
その現場総指揮を天野は任されていた。




敵への攻撃は
空からの爆撃だけではなかった。
砂浜を進もうとする半魚人の足元で
カチッと音がし、爆発が起こる。


「おいおい、地雷かよ、
あれこそ条約がやばいんじゃねえのか」


詳細を知らなかった下衆達がざわめくと
石動が口を挟んだ。


「今回はそれだけ
なりふり構ってられねえってことだ」


「まぁ、
遠隔操作で全個一斉に機能停止出来る、
回収も安全てタイプだ。
この戦闘が終わったらキッチリ回収するさ。」


通信で天野が兵達のフォローをする。
『ピース9』に見つかったら
やはり怒られるだろうな、
と天野は思った。


-


砂浜は地雷、
空からは爆撃の雨あられという
過酷な状況の中を、
半魚人兵達は脇目もふらず進んで来る。


一回目の爆撃が終了すると、
今度は地上部隊による銃撃戦となる。


爆撃を乗り越えた半漁人を迎え撃つが、
半漁人は手に銃だと思われる武器と、
まるでクラゲのような形状をした
透明でぷよぷよした弾力がありそうな
盾を手に持っていた。


こちらの銃弾はすべて
その盾に取り込まれてしまう。


硬さで防ぐのではなく、
緩衝作用で威力を相殺し
止めてしまうというものだ。


これにより兵士達の実弾兵器は
ほぼ無効化されてしまっていた。


「くそ、
あのぷよぷよしたの、
なんとかならねえのか」


兵達から嘆きの声が上がった。


天野は銃撃部隊に
ある特殊銃弾を使用をするよう指示する。


その特殊銃弾は盾に当たり
取り込まれるところまでは一緒だが、
特殊銃弾は盾が持っている水分をすべて吸収し、
小さく硬質化させてしまう。


「おっ、すごいじゃないかよ」


石動の通信に天野は応える。


「簡単に言うと、
超強力な乾燥剤を弾丸にしたもんだな。
体内で飛び散って、
細胞レベルで水分を奪っていくらしいぜ。
半魚人にも効果があるという話だから、
試してみてくれ。」


こちらの世界の魚類の
体内水分量は約七十五%、
クラゲにいたっては約九十五%が
水分で構成されている。
人間でも約六十%は水分だ。
当然魚類族も体内水分量は多く、
その水分を奪うという兵器が考えられていた。


防衛軍は開戦までの一か月半を、
こうしたとんでも兵器、
いや対『海底王国』兵器の開発に費やしていたのだ。
石動達は特殊銃弾を半魚人達にも使う。


「確かに動きが鈍くなったな」




半魚人達の動きが止まったところで、
今度は巨大カニ達が前に出て来る。
カニの硬い甲羅には弾丸が通用しない。


「硬てえな、こいつら」


「今度はこいつらが盾ってわけかい」


人間サイズ級のカニが
石動達の部隊の面前まで迫り、
その巨大なハサミを振り回す。
石動はそのハサミをかわす。


「ちょっと癪だが、
たまには上官の言うこと聞いておくか」


天野との勝負で
言われたことを思い出した石動は、
カニの腕に飛びつき、
その反動でカニを転がし、関節技を掛ける。


「おぉ!すげえ!
カニにサブミッション決めてる人
はじめて見たぞ!」


「人類初なんじゃねえか?」


「馬鹿言ってねえで、とっととやれ!」


石動はカニと格闘しながら、
部下に指示を出す。


「こいつらカニ型兵器じゃなくて、
単にデカくて硬いカニだ。
前と後ろは進めねえ。
後ろに回って関節狙え!」


「実弾は効きが悪い、
レーザー光線で関節焼き切れ!」


数メートル級のカニを撃退する石動達の前に、
数十メートル級の大型カニが姿を現す。


「こいつはデカいな」


怖気づく部下達に石動は言う。


「デカけりゃ、
関節の的もデカいってこったろ、
狙い放題じゃねぇか。
こりゃ今晩蟹食い放題だな」


「こいつら食う気ですか!」
「寄生虫とかウィルスとかいんじゃないっすか?」


石動の言葉に驚く部下達。


「火、通せば余裕だろ」


あくまで石動は食う気らしい。











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