非人道的地球防衛軍とゾンビ兵

ウロノロムロ

『チーム極道』若頭、紅零司

一条女史とは別行動になった天野。


警備のつもりで周辺を歩き回っていると、
VIP招待席に『チーム極道』の大親分の姿を見かける。


大親分は恰幅のいい大柄な年配男性で、
いつも紋付き袴を着ており、
白髪交じりでグレーの長い口髭を
指先でいじる癖があった。


天野は一条女史が思い出を買いに行っている間、
大親分と世間話をすることにする。


「まさかこんなところで
大親分をお見かけするとは思いませんでしたよ。」


「いえね、今回の興業は
あっしらが仕切らせてもらってるんで、
どんな按配あんばいか見ておこうと思いやしてね。


さすがに地球防衛軍日本支部が
大きなロボットの像を山ほどつくって
見世物はじめますって言っても、
世間様からは頭がおかしくなったんじぇねえかと
思われるのが落ちじゃないですか。


そこで、興業の企画から、用地確保、
ロボット像の制作、興業の段取り、宣伝広告、
全部あっしらの関係者でやらせてもらってるんですよ。


どんな業界にもあっしらの息がかかった、
つながりのある人間がおりますからね。
いつも何でも屋みたいに
便利に使っていただいておりますよ。」


事実『チーム極道』は地球防衛軍日本支部の
縁の下の力持ちと言っても過言ではない。


軍事面以外で防衛軍が
表立って出来ない仕事のほとんどを
彼らが代わりに行っていた。


各方面で、表世界の人間と遜色が無い、
むしろ悪知恵が働く分、
それ以上の仕事をこなす
優秀なエキスパートが揃っており、
再生医療や最先端技術の利権関連も
防衛軍の表ルートと『チーム極道』の裏ルートで
扱われる二重の利益構造となっている。
防衛軍を維持するための資金確保には
欠かせない存在となっている。


「今回の警備は『チーム極道』で
担当されているんですか?」


「他チームの下衆も応援に来てますがね。
大半はうちの若い衆じゃないですかね。」


会場の警備員にまじって
黒のスーツを着て
サングラスをかけた男達が混じっているのが、
おそらくは『チーム極道』の下衆げすであろう。


-


その話をしていると、
黒スーツ姿で赤髪の男が天野に近寄って来て、
サングラスを外して挨拶した。


「『チーム極道』若頭の紅零司くれないれいじです。」


本名なのか源氏名なのかわからない
名前は置いておいて。


若頭は十台の頃はビジュアルバンドで
一斉を風靡していたが、
売れなくなりホストに転身。
その後、極道の若頭にまで登り詰めたという
異例の経歴の持主である。


ホスト時代に身に付けた細やかな気配りは
周囲の人間を感心させ、
大親分も随分気に入っていた。


彼はスマート極道を標榜しており、
彼の部下には常にスマートさが求められていた。
粗暴の輩が多い『チーム極道』においては
異色の集団であったが、
こうした会場警備には
打って付けの人材とも言える。


「お客様に心より安心して、
ご満足いただける警備体制を目指してまいります。」


若頭は深々とお辞儀をする。
極道が完璧な接客マナーで
警備をサービスするという
訳の分からない状況に天野は困惑したが、
この組織ではよくあることだ。


若頭はそう言って警備の指揮に戻って行った。











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