非人道的地球防衛軍とゾンビ兵

ウロノロムロ

侵略者の作法

「で今日彩ちゃんに来てもらったのはですね。
故郷のほうの動きが慌しくなっているようでして。」


「あたし達もそんな動きを掴んでましてね、
魚住さんに話を聞かなくちゃならないと
思ってたとこなんですよ。」


「やはり、戦争になりますかね?」


彩姐さんはせつないような、
悲しいような顔をしていた。


だが彼女に限っては
その表情すべてがつくりものである可能性が高いため、
本当はどう思っているかは定かではない。


「昔から儂らのご先祖様を
送り込むぐらいですからね、
この世界に興味はあったと思うんですよ。」


「ただ異世界からこっちの世界に
兵隊送り込むってのも、
移動とかにいろいろ条件があったりして
簡単ではなかったらしく、
とりあえず情報だけは集めてたらしいんですよね。」


「故郷以外の他の異世界の人達も
大勢来ていたみたいでしてね。
昔から異世界人同士の交流も
結構頻繁に行われていたと聞いていますよ。」


「ですが
交流の最盛期だったのが割りと最近の話でしてね。


昔よくテレビでロボットアニメとか特撮とか
やってたじゃないですか。


それが異世界人同士のコミュニティでも流行しましてね。


さらには、それを録画して
故郷に送ったやつがいたんですが、
それが故郷でこっちが驚くらいに大ヒットしましてね。


故郷のみんなはそうれはもう
病みつきになって見まくっていたそうなんですよ。
次回分はいつ届くのか
故郷から催促が来るぐらいだったらしいですよ。


もともとこちらに比べると
娯楽もほとんどないようなところですから、
よっぽど刺激的だったんでしょうね。


他の異世界人達も同じように
故郷に送っていたんですけどね。


ビデオもないような時代でしたから、
海賊版のフィルムつくったりするのが結構大変でしてね、
異世界人同士協力し合って作業してたんですよ。
今から思うと懐かしいですわ。」


「で結局当時の作品が
ほとんど全ての異世界で大ヒットしましてね。
そりゃもう世界的ヒットどころの話じゃないですよ、
全異世界でも大流行だったんですからね。
『全異世界が泣いた』
なんてコピーが出るぐらいすよ。」


「だからその当時のロボットアニメや特撮ってのは、
異世界人にしてみれば
聖典やバイブルみたいなもんなんですよ。


当然我々の立場からすると
感情移入して人気が出たのは、
主役のヒーローじゃなくて悪役でしてね。


『侵略者の作法』なんて本も出版されまして、
これがまた全異世界で大ベストセラーになったんですよ。
『侵略者のすすめ』、『侵略者の掟』なんてシリーズも
続々発売されましたね。」


『これ絶対一条さん読みたがる奴だわ』


『てか、なにか?
著作権無視して違法海賊版を
全異世界にばら撒きまくって、
挙句の果てに、聖地巡礼と称して
異世界中から異世界住人が
日本の侵略にくるってことか?
なにしてくれちゃってんだよ!』




「それ以来、どこの世界の住人も、
最初にこの世界を侵略するのは
自分達だという想いでやってきましたからね。」


「そこにきてあの宇宙人の奴らの襲撃でしょ」


「『侵略者の作法』も知らないような
田舎もんに先を越されたって、
全異世界人みんなが怒ってましたよ。」


「今の司令官さんが、
日本上空の円盤撃墜した時には、
そりゃもうみんなで『よくやった』と
拍手喝采だったらしいですわ。
『あん時は溜飲が下がる思いだった』って話を
儂も何度も聞かされたもんですわ。」


「まぁ異世界人にとっては
日本は聖典の中に出てくる
聖地みたいなもんですからね。


聖地巡礼ってやつですか。
いつかは聖地巡礼で日本に行くんだって、
そう思ってる異世界人は多いですからね。」


「だからどこの世界も
今度こそは聖地日本を最初に占領するんだって
躍起になってるんですわ。」


「ちょうど今あの事件以降、異世界同士が
くっついちゃってるわけじゃないですか。
昔に比べて移動の負担もはるかに少なくて、
まさしく好機なんてもんじゃないですよね。
どこの世界も我先にと今必死なってるんですよ。」


以前突如現れた
未確認飛行物体と地球外生命体は
防衛軍では正体不明であるためそう呼ばれていたが、
一般人は専ら円盤と宇宙人と呼んでいた。
一般人の認識としてはそれぐらいのものであろう。











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