非人道的地球防衛軍とゾンビ兵

ウロノロムロ

ゾンビ兵原案

「『ゾンビ兵士』にしても
結局『魂』の問題があるから
難しいように思いますが。


ゾンビに憑依させるために、
数百数千の幽霊を見つけ出して
捕まえて来るというのも、さすがに。」


「すまんすまん、そこの説明がまだだったね。」


「再起動した肉体を、
『魂』の代わりに、
別の誰かの意志を伝搬することで
動かすことが出来るようにするんだ。
つまり、操ることが出来るようにだ。」


「おぉ!」


一同から驚きの声があがる。


「例えば、
私が他惑星で捕まえて持ってきたウィルスは、
生物の死骸を餌にしているのだが、
死骸に寄生してそれを操って、
自分の巣穴まで移動させるという習性がある。
こうしたウィルスを利用することで
再起動した肉体を動かすことが出来るだろう。」


天野はいつもどおり
突っ込みという自らの役割を果たす。


「それ『バイオハザード』とか
『パンデミック』引き起こすやつじゃないですか?」


「いやいや、生きている人間に
感染したりするようなことはないよ。
あくまで対象は死骸だけだな。
攻撃をしてきた相手には反撃するようだがね。


生きている人間には君達が言うところの
『魂』が存在して邪魔しているからね。
優先順位は先に住んでいた方にあるんだよ。


またウィルスは群体で共通意識を持っているから、
こちら側でコントロールもしやすい。
個別に複雑な命令を実行させるのは難しいだろうが、
大まかな命令で集団を操作することは出来る。」


「つまり再生ゾンビの肉体を操るウィルスを、
さらに我々が操るということですか。」


-


天野は財前女史に小声で尋ねる。


「博士の持って来るものって
ちゃんと検疫とかしてるんですか?


宇宙病原体的なやつとか
大丈夫なんですか?」


「もちろんやってはいるがな」


「博士自身も博士の持ち物も、
約95%が判別不能な未知の物質ばかりだからな、
自己申告に任せるしかないのだ。」


「ものすごいザルってことですね」


-


「試行錯誤は必要だろうが、
この世界の技術でも、
再生ゾンビに脳内チップかなにかを埋め込むかして、
何かしらの信号を送って
操ることが出来るかもしれないね。」


「おぉ!」


一同から再び驚きの声があがる。


「これはいけそうだな!すぐに試してみよう!」


「これなら数千の兵士はすぐに増強出来そうだな!」


長々と議論してきたことが、
よい結末を迎えられそうなことに
一同は興奮していた。


しかし天野は心を鬼にして
突っ込みという自らの使命を
果たさなくてはならなかった。


「みなさん
盛り上がってるとこ悪いんですけど、
日本は火葬ですからね!」


「どこかから
素体大量に集めてくるとか
無理ですからね!」


一同は忘れていた
とてつもなく大事なことに気づき、拍子抜けする。


「あぁ、そうだね…。
まずは動物実験からかな。」


-


天野は嘆く。


「しかしただでさえ変わった人が多いのに、
この先ゾンビ兵とか増えていくんですかね」


「いいよ、いいよー、
ますます悪の組織っぽくなってきてるよねー」


その時一条女史は
何かを思いついて興奮して再び叫ぶ。


「そうだー!
さっきの会議で話があった
『ニート』『引きこもり』のみなさまに、
現実世界のアバターとして
ゾンビ兵をVRで操作してもらえばいいんですよー
自宅警備員に、自宅の中で
自宅以外の警備をしてもらえばいいんですよー
名づけてVRゾンビ兵!」


「そのままの名前ですよね」


一条女史のテンションについていけず、
とりあえず雑に突っ込む天野。
しかし意外なことに
博士は一条女史のアイデアに賛同する。


「いや、
案外いいアイデアかもしれないよ。
電波などで遠隔操作するというよりは、
脳波を同調させるという方向じゃないかと思うけどね。
肉体の労働ではなく、
『魂』の労働で協力してもらうということだね。」


「やったー、誉められたー」











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