非人道的地球防衛軍とゾンビ兵

ウロノロムロ

『チーム魔道』主任、本田秀次

逃走を続ける犯人の前に、
次に現れたのは白衣を着た集団であった。


「私は、
この時を待っていた!
待っていたのだよ!」


「天才科学者である私
『チーム魔道』主任の本田秀次が、
『ドクターX』から技術供与を受けて
つくりあげた試作品の数々を
実戦で試すこの時を!」


先頭の主任を名乗る男以外は、
おそらく助手であろうか、
荷物を高く積んだ台車を手で押している。


「まずはどれからいくか」


主任は台車から適当に
武器や装置を漁って引っ張り出す。


「これはどうだ、
分子破壊砲!デザインテグレーター!」


「主任、
施設内の構造からしまして、
今使うと確実に施設全体が瓦解・崩落して、
我々も全員死にますので、
絶対にお止めください。絶対に。」


「ぐぬぬっ!」




「ではこれではどうだ、
大出力音響兵器!スクリーマー!」


「主任、
通路のこの狭さですと反響して、
我々も全員死にますので、
絶対にお止めください。絶対に。」


「ぐぬぬっ!」




「ではこれではどうだ、
細菌兵器!アンノウンウィルス!」


助手達は一斉に防護マスクを着用した。


「主任、
施設内での細菌兵器の使用はどうかと思いますが、
主任がどうしてもおっしゃるのなら
引き止めはしません。
後、些細なことですが、
主任の分の防護マスクはありませんので、
主任は確実に死にます。
そこは主任のご判断にお任せします。」


「ぐぬぬっ!」




「ではこれではどうだ、
重力制御装置!グラビティコントローラー!」


「これで加重力環境を構築して
奴を地に這いつくばらせて、
動けなくなったところを捕らえるのだ!」


助手達は集まって相談する。


「主任、オッケーでーす。」


主任は、手にした
重力制御装置のスイッチを入れる。


逃亡者の体は宙にふわりと浮いた。
そして主任と助手達、
その他そこにあった大量の荷物が宙に浮いていた。


「いかん!これは一体どうしたことだ!」


予想外の不測の事態に主任は狼狽した。


「主任、
それ加重力モードではなく、
無重力モードでーす」


助手は普通に考えればわかることを
そのまま叫んだ。


主任は宙を漂いながら
手にしている重力制御装置の
コントロールスイッチを見直す。


「馬鹿者!
『加重力』と『無重力』の表記が
ないではないか!」


確かにコントロールスイッチの部分は
赤と青の二色に色分けされているだけであり、
どちらが『加重力』で『無重力』か
わからない仕様になっていた。


「誰だ!
このユーザーに不親切な
コントロールスイッチを付けた奴は!」


「それ、主任でーす!」


「ぐぬぬっ!」




逃亡者は宙に浮いた体を器用に動かし、
宙に漂う物体を足場にして前へと進んだ。


「お前さん達が間抜けで助かったぜ」


「やっぱ、
あんた達には体使った実践は向いてねえな」


「机にかじりついているのがお似合いだぜ」


逃亡者は主任のもとまでたどり着くと、
主任の手にある重力制御装置を奪い、
その辺りにある武器と思われるものを
いくつか奪って、その場を逃げた。


「ぐぬぬっ!」




逃亡者の後を追っていた『チーム色道』の女衆が
無重力エリアを目掛けて猛然と突っ込んでくる。


女衆はそのまま宙に浮いている
物体や助手達に正面衝突。


女衆の非常に露出が高い
豊満な胸の谷間や張りのあるヒップに、
助手達は激突し、
その顔を埋める顛末となる。


「てめぇなに触ってんだ!
コメンチクショめー!」


「金払えってんだ!馬鹿野郎テメェ!」


「お前らに触らせてやるほど、
こちとら安くねぇんだよ!」


「ふざけんじゃねえよ!
このオタンコナスが!」


女衆からは怒号が飛び交い、
助手達は散々の罵声を浴びせられる。


「主任、これはもしかしてご褒美でしょうか?」
「主任、ぷるんぷるんです!」
「主任、こちらはたゆんたゆんです!」
「こちらはばいんばいんです!」


普段まず有り得ないような
ラッキースケベに助手達は昇天しかかっている。


「てめえら、
それ以上言ったらぶっ殺すからな!」
「覚えてろよ!このすっとこどっこい!」


主任の目の前で、
身動きを取ろうと体をくねらせていた
女衆のハイヒールのブーツが見事な勢いで
主任の顔にヒットする。


「馬鹿者!真のご褒美とはこういうものだ!」


M属性の主任に助手からも
女衆からも罵声が浴びせられる。


「うわぁ、引くわぁ」
「ないわぁ」
「俺ありかも」
「おぉ!カミングアウト」


重力制御装置の効果が切れ、
すべてが地面に落下すると、
そこには彩姐さんが怒りの表情で
立ち尽くしていた。
彩姐さんは効果が切れるまで、
適用範囲外で待機していたのだ。


「あんた達、
このままあたしに恥をかかす気かい?」


彩姐さんから放たれる怒りのオーラに、
女衆だけではなく、
なぜか一緒になって主任も助手達も身震いする。


後で主任と助手達が
女衆にボコボコにされたのは言うまでもないが、
主任にとっては真のご褒美だったかもしれない。


 -


巨大モニターを見ていた財前女史は
大きなため息をついた。


「実践投入はまだまだ遠い先になりそうだな。」


「『ドクターX』の技術供与により、
技術力は大きな飛躍が見込まれると
聞いていましたが。」


「実情はまだまだこれから
というところなんだよねー」


「博士がこの世界に持ち込んだ物の約95%が
この世界にはない未知の物質で構成されている。
博士の技術理論のほとんどが
我々にはまだまだ理解困難なものだしな。」


「それ言うと『この世界は物質文明に執着し、
依存し過ぎているから理解出来ないのだ』って
怒られるんだよねー」


「なので現時点では、
既存の兵器や既に開発や研究が進められていた兵器の、
出力と精度の向上など、
パワーアップ・性能アップに使われているに過ぎんよ。」


「それぐらいで異世界住人達に
通用するといいんだけどねー」


「さっき一条が言ったように
再生医療だけは飛躍的に進歩しているから、
我々としてはそれだけでも
大変助かってはいるがね。」


「再生医療を突き詰めると、
改造人間も夢じゃないんだよねー」


「それはもういいですってば」











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