非人道的地球防衛軍とゾンビ兵

ウロノロムロ

司令官補佐、財前薫

その後もいろいろな人間に絡まれ、
なかなか目的地まで
たどり着くことは出来なかった天野。


ステテコ姿に腹巻をした禿と
アロハシャツにサングラス、リーゼントという
明らかに昔風の三下チンピラ二人組に
絡まれている時に助けが現れた。


「お前ら、いい加減にしておけ」


「こんなんところにおられたか、
天野殿、探しましたぞ」




一人は黒髪ロングで細身の背が高い女、
白の軍服の背には日本刀を背負っている。


もう一人は小柄な茶髪の童顔の可愛らしい女。


二人の姿を見て
三下チンピラ達は尻尾を巻いて逃げ出した。


「こんなことではないかと思い、
迎えに来てよかった」




「地球防衛軍日本支部、
司令官補佐の財前薫だ」


背の高い女が名乗った。


「同じく司令官補佐の一条遥ですー」


小柄の女は思った以上に声が高かった。


「いやぁ助かりました、
新任特務官の天野正道です」


天野は二人と交互に握手を交わした。


「ここの輩は新入りが来ると、
毎回ああやって絡んでいるんですよー、
困ったもんですー」


一条女史はどうやら
語尾を伸ばして喋る癖があるようだ。


-


道すがら財前は天野に説明をはじめた。


地球防衛軍日本支部は、幹部連の下に
九頭クズ』と呼ばれる組織があり、
九頭クズ』は専門分野に特化した
九つのチームで構成されており、
九頭クズ』に属さない下っ端構成員は
下衆ゲス』と称する。


幹部と各チームの責任者クラスの人間以外には、
階級が存在せずにフラットな組織となっていて、
各チーム内での序列等は
チーム責任者の管理に任されていた。


「階級のないフラットな組織
と言えば聞こえはいいが、
未確認飛行物体の襲撃以降、
急激に増員した組織で、
無法者達の寄せ集めだからな、
下手に階級などつくると
内部抗争の火種になるだけ、
というのも正直なところだ。」


「なので秩序も最低限、
風紀も乱れまくり、
先ほどのような連中が
野放図にされているという訳だ。」


「あれー、それなんか
組織批判ぽく聞こえるけどなー」


「ばっ、馬鹿を言うな、
私は天野殿にありのままの現状を
お伝えしているだけだ!」


財前女史はそれまで丁寧であった語尾を荒げ、
ムキになって反論した。


「それにだ!
私が司令官殿の方針を
批判するようなことがあるわけなかろう!」


「あのお方の崇高な孤高のお志を
理解できるのは私だけなのだぞ!
その私があのお方のやることに
不満を漏らすなど、
あろうはずもないではないかっ!」


高揚する財前女史、
それは必至になって
弁明しているというよりは、
何か別の熱い想いを
特々と語っているようでもあった。




「財前ちゃんはね、
司令官にご執心なんだよねー」


一条女子は小声で天野に語った。


「本人はリスペクトとか言ってるけど、
もうストーカーとか
ヤンデレってやつなんじゃないかと思うぐらい」


「はぁ」


財前女史は司令官への熱い想いを
延々と語り続けた。




そんな財前女史を他所に
天野と一条は会話を続けた。


「なんか、
『クズ』とか『ゲドー』とか『ゲス』って
すごいネーミングですね」」


「そうかなー、私はかっこいいと思うけどー」
「まるで悪の組織的な地球防衛軍って感じ?」


一条女史は目を輝かせてそう言った。


「とにかくね、組織内で
相手に階級をつけて呼ぶ人は誰もいないし、
私達二人のことも
適当に呼んでもらっていいから、ねー」











コメント

コメントを書く

「SF」の人気作品

書籍化作品