【胸糞注意】なテロリスト勇者、異世界を蹂躙す

ウロノロムロ

陽動作戦

海上もまた荒れに荒れていた。


地上軍の残党と
空からの軍勢にも備え、
部隊を二つに分けていた勇者達だったが、
向こうの指揮はフロリア本体に任せ、
勇者とイヴァン本体は
海洋戦に臨んだ。


敵との交戦が激しい最前線、
その空は曇り、嵐が猛威を振るい
轟雷が降り注いでいる。


大半がイヴァンの雷魔法
ライトニングストリームのせい
ではあったが。


浮遊術で宙を舞い、高笑いを上げ
天候すらも操るイヴァンは
やはり魔女そのものにしか見えず、
『麗しき魔女』の異名に相応しい。


激しい大波が次々と押し寄せ
大荒れの海には
メイルシュトロームによる
大渦潮がいくつも発生し、
竜巻の柱が水棲生物を
空へと舞い上げる。


宙に浮く巨大水棲生物を
レールガンとレーザービームが貫く。


陸地が全く無い海洋で
兵器を利用するために
この世界に住む
巨大亀の背中にある甲羅や
水竜の背中に兵器が設置されており、
それはそれで斉藤さんをはじめとする
人間男性のマニアが見たら随縁もの、
大喜びしそうでもある。


『こいつらいつも
やる事が派手なんだよな』


-


打って変わって十キロ離れた海上では
太陽の光が眩しいくらいに
晴れ渡り澄み切った空で
某超大国の大艦隊が
艦砲射撃やミサイルによる
援護射撃を行っている。


晴れたところから戦局を伺う勇者。


このまま海洋ルートを制圧すれば
敵の上陸部隊を乗せた船団は
現れないと考えていいのか、
そのことが気掛かりではあった。


そこにまるで戦闘を
楽しんでいたかのようなイヴァンが
突然勇者の元へ飛んで来る。


「深海に多数動く物がありますな、
相当大きなクジラか何かでしょうが、
数が尋常ではありませぬ」


勇者は昔子供の頃に見た
クジラが戦艦になって戦う
アニメを思い出す。


「それか」


勇者も全く気づかなかったが、
深海を進む多数の超大型クジラ、
それがおそらく敵の船代わり
つまり揚陸艇。


魔法かそれとも
改造されているのかはわからないが、
おそらくその体内に
上陸部隊が潜んでいる筈。


数は多くはないだろうが、
例え僅かでも上陸された時点で
一気に東側大陸は崩壊する可能性がある。




水深を活用した敵の陽動作戦、
巨大水棲生物が海上付近で
派手に暴れ、敵を引き付け
その隙に深度が深いところを
上陸部隊の揚陸艇が潜行して進む。


ソナーも魚群探知機もないこの世界では
余程のことがなければ気づかない、
勇者は潜水艦の使い方を間違えた、
索敵にこそ利用すべきだったのだ。




深海を移動する超巨大クジラの群れに
クローン特攻部隊を送り込む勇者だが、
他の巨大水棲生物に行く手を遮られ
クジラ達がいる深さまで到達出来ない。


このまま深海から浅瀬まで
移動したところを狙い撃つか?
しかしそれだとそのまま
上陸されてしまう可能性がある。


敵に一人でも上陸されれば、
それこそ人間エリアを巻き込んで
自爆魔法を使われる危険性もあるだろう。


出来れば何としてでも
今ここで超巨大クジラは叩いておきたい。











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