【胸糞注意】なテロリスト勇者、異世界を蹂躙す

ウロノロムロ

医療行為

「へぇ、これが
この世界で伝説の大神官ねぇ」


勇者は崩れ落ちた廃墟、
そこに奇跡的に残っていた
一枚の肖像画を眺め呟いた。


そこに描かれている一人の女性、
この世界では最早
歴史上の英雄扱いであり、
初代勇者と共に戦い
初代魔王を倒したとされる
伝説の大神官フロリア。


彼女の慈愛溢れる人々への貢献は
後世まで語られ、讃えられており、
『聖女フロリア』とも称されていた。




勇者は今から時空転移強奪で
彼女を召喚しようとしている。


この世界の過去の人物を
現在に召喚する、
それは当然歴史を変える行為であり、
成功した瞬間、この世界が
どうなっているかは全く分からない。


ある意味、
禁忌であろうことも間違いない。


そしてもう一つ、
勇者にとって初めて人間自身を単体で
転移強奪して来るということも
意味してもいた。


-


勇者自身は、
腕一本斬り落とされても
すぐに再生されるぐらいに
再生能力を強化しているため、
それ程必要という訳ではなかったが、
それでも居れば
貴重な戦力となることは間違いない。


イヴァンの時と同様に
神聖魔法の使い手がみな死んでおり、
今この世界でそれが使える者は皆無。


しかも魔王軍は当然
神聖魔法は使わないため、
本当に絶滅種となってしまっている。


やはり子供達が独学で習得はしていたが、
その程度ではこの先人間が死滅してしまう。




この世界には人間の医者がいない。


元からいないのか、
魔王軍との戦いで
死んでいなくなったのかも定かではないが、
医療と言う概念が
そもそもないようにも思われる。


せいぜい薬師はいたようだが、
それすらも死んでしまって
今は誰も後継者がいない。


それでヒーラーすらもいないのであれば、
生存率が著しく低いのは当たり前であり、
最早それは早く死ねと
言っているのに等しい。




かと言って、この勇者が
人命を気にしているとか
そういう訳ではない、


まぁ、どうせ人間、
死ぬ運命の奴は死ぬ、
元居た人間世界で
交通事故に遭って死んだ
自分のように。


しかし人類の死滅が
自分の負けとなる以上、
多少は生存率を高めてもらうしかない。


-


過去改変による現在への影響、
そのリスクを懸念していた勇者だが、
ようやく意を決する。


どうせこのままでは
いくら人間を転移させて増やそうとも、
この劣悪な環境で医療もないようでは
いずれ人間は死滅するだろう。


新しく来た人間がいずれは
人間世界の医療を持ち込むだろうが
長い時間が掛かるであろうし、
それを待っていられる程の時間はない、
その前にみな死に絶える。


どっちみち死ぬのであれば
可能性がある方に賭けるしかない。











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